第38話 侵入
「そろそろ頃合いかの」
マルコが支配している第三督戦隊をプロテウスの西側から近づける。
第三督戦隊が門をくぐったのを見届けてから、ヴェパルに連絡する。
『同時に仕掛ける。準備は出来ておるな?』
『はい、万端整っております』
『よし、ではいけ。こちらも仕掛けた』
ヴェパルたちが出撃し、ゴブリンとサハギンが操る筏で、プロテウスにある河川港に乗り込む。
ヴェパルの疫病で、河川港も西側の門も警戒が緩んでいたようだ。
河川港からなんなくゴブリンやサハギン、オーガが乗り込む。レイクウィッチの見た目は人魚のため、河川港で待機だ。グリフォンも三頭、侵入に成功する。モンスターたちを操るテイマーのニコラも護衛のヘオヅォルと数名の隊員、マリウスとともにプロテウスに入った。
西側の門も開け放たれた。
「よし、突撃じゃ! 抵抗するものは吹きとばせ。しないもの、町人は無視しろ!」
こちらも陣地から突撃し、プロテウスの強固であったろう門をくぐる。いかに強固であっても開いておっては役に立たんな。
門の近くでは小競り合いが起きておったが、すぐに抵抗はなくなった。抵抗するものを全員拘束したからだな。
わずかな時間差のせいか、第四督戦隊がヴェパルの方へいったようだ。
西側、我らには第一が来たようだ。
どちらも懲罰部隊を全面に出しておるが、最初から戦意喪失しておるな。
それもそうだ。
懲罰部隊のやつらは武装も貧弱な上にすでにヴェパルの疫病にやられているものも混じっておる。
ヴェパルの方はヴェパル自らが出て、懲罰部隊に直接疫病をばら撒き、ほぼ戦わずに懲罰部隊の壁を抜けたようだ。
こちらも西門から伸びる大通りにみっちり懲罰部隊が壁を作っておる。しかし向こうからは来ないようだ。戦意などほぼないようだが、後ろから第一督戦隊が脅して、なんなら後ろから弩で懲罰部隊の背中を撃ったりしておるな。
第二督戦隊は隊長の性格か、懲罰部隊を味方として扱っていたが、本来の督戦隊などこんなものだからな。
だがマルコは気に入らなかったようだ。
「兵士ども! 戦意がないなら伏せよ、道を開けよ。後ろから味方を撃つ卑怯者は俺が平らげくれる!」
凄まじい大声でマルコがいう。
ヴェパルのいるところまでその声は響いたようで、河川港でも督戦隊の掃討に役立ったらしい。伏せた者は無視され、ゴブリンやサハギンは督戦隊に殺到したようだ。
こちらも敵前衛のほとんどが伏せ、道を開けた。マルコが一人で突撃し、後ろで弩を持っていた督戦隊を斬り捨てる。
マルコに付き従っていた第三督戦隊と我と行動を共にしていた第二督戦隊の隊員がマルコに続き、半分は懲罰部隊の武装解除、もう半分は同じ督戦隊に襲いかかっておる。
我の主力となっていた鉱夫たちやガラテア懲罰部隊など何もしないうちに粗方終わってしまった。互いの兵士たちの声を聞いておると、散々第一のやつらは第二や第三の連中をばかにしておったようだな。馬鹿にされるだけではなく明確に酷い扱いを受けていたようだ。
それは、自業自得であるな。やり返されるという可能性を考えておらんかった者たちの末路よ。
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