第7話 魅了
アークデビル召喚によってカロリーを消費したので食事を取る。
また保存食だが、準備はモリーがしてくれた。
ゴモリーは我とは別系統の、根源世界の魔王であるので、この召喚に応じたこのゴモリーの分御魂は区別のためにモリーで通すつもりだ。
「で、アルデリウス様、わたくしはただの駒として呼ばれたのですか? それとも何か役目が?」
「基本駒だ。しかし直近で解決したいことがあってな、だからモリーを呼んだ」
「なんでございましょう?」
「汝の姿は素でその姿なのだよな。だから人間の女としての動き方、振る舞い方や常識、知っておくべきことなどを理解していると思ったのでな」
「なるほど、確かにゴーティアの中でこのような姿の者は少ないですね。了解りましたわ。人前では念話でお教えすることをお許しください」
「人前でなくても念話で構わんし、ずっとアリスでいいぞ」
『少々、栄養的に保存食では足りませんね。短期間でしたらこれでもかまわないのですが、長期これでは。特にアリス様の現在のお姿でしたら、もっと良いものを食べていただきたいですね』
『先程人間の男を三人捕らえたのだ。そやつらはなにか持っているのではないか。ただの旅人ではなさそうだったが、人間のことはよく分からんのでな。モリーに任せてよいか?』
『わたくしの最初の仕事になりそうですね。了解りました。アリス様の都合の良いようにしましょう』
『そうか、では任せる。見れば分かるだろうが、周辺のコボルドゾンビなどのゾンビどもは我の支配下にあるから気にせんで良いし、モリーにも支配権を与える』
『ありがとうございます。アリス様はゾンビがお好みで?』
『状況がそうさせただけで別にゾンビが好きなわけでもない』
『ならば我が眷属を使うことも?』
『好きにするが良い』
我に礼を言って、さっそくモリーは三人の男を閉じ込めている建物に向かったようだ。
我はこのまま休ませてもらおう。カロリーは得たがそこから体力を回復するには休息がいる体だからな。
食事のために起こした火は消えかかっていたがまだ暖かい。
座ったままうとうとしてしまったようだ。火の残り火がパチパチと音を立て、部屋の影を揺らす中、瞼が重くなる。
……
時間はそれなりにたったようだ。
もう腹が減っておる。本当に効率の悪い体じゃのう。
今は、もう夕方のようじゃな。暗くなりかけておる。
我の護衛として付近にいたゾンビラットが男三人を閉じ込めておいた建物へ走った。キーキーと小さな爪音が、床を駆け抜ける。
『アリス様、こちらへ』
モリーから念話があった。
さっそくゾンビラットも使役しているようだ。
付近にいたコボルドゾンビが扉を開けると、モリーと三人の男が控えておった。
『この三人は魅了いたしました。こちらが三人の生存を脅かすようなことをしない限り、解けることはないはずです。直接はわたくしですが、アリス様はわたくしの上位存在であるのでアリス様にも従います』
『すなわち捨て駒には使えんということだな。あいわかった』
三人の男たちは頭を下げて控えたままなので、自己紹介を促す。
戦士風の男から名乗った。
「私はアロンと申します。見ての通りの戦士です」
「俺も戦士、サムソンだ。モリー様の上司ということらしいですね」
「わ、私はただの行商人のハノンと申します」
『ただの、とはどういうことじゃ?』
『こやつめはただの、とか言っていますが、かなり有能ですから。アイテムボックス持ちです』
ハノンの目が、遠くの森を不安げに振り返る……。
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