第十三章 新たな理解

二人はカフェで話し続けた。今度は、お互いを変えようとするのではなく、理解しようとしていた。


「翔太さんって、なんでそんなに見た目にこだわってたんですか?」美咲が率直に尋ねた。


翔太は少し考えてから答えた。


「多分...認められたかったんだと思います」


「認められたい?」


「昔から、あまり目立たない性格で。でも、見た目を磨いてSNSを始めたら、急に注目されるようになって」


「それで依存してしまった?」


「そうかもしれません。でも、美咲さんと付き合って気づいたんです。表面的な評価って、空虚だなって」


美咲は頷いた。


「私も最初、翔太さんを軽く見てました。見た目ばかり気にして、中身がないんじゃないかって」


「実際そうだったかもしれません」翔太が苦笑いした。


「でも、仕事に対する情熱とか、人を喜ばせたいという気持ちとか、素敵な部分もたくさんありました」


翔太は照れた。


「美咲さんも、最初は取っつきにくい人だと思ってました。でも、本当は誰よりも誠実で、真面目で...」


「それで変えようとしたんですか?」美咲が茶化すように言った。


「そこは...すみません」翔太が頭を下げた。


「もういいですよ」美咲が笑った。


「でも、あの経験も無駄じゃなかったかもしれません」


「え?」


「お洒落を覚えたおかげで、仕事でのプレゼンテーションが上手くなりました。見た目も大事だってことが分かって」


翔太は意外そうだった。


「それに、翔太さんみたいな人の価値観も理解できるようになりました」


「僕の価値観?」


「見た目を整えることで自信を持つとか、SNSでコミュニケーションを取るとか。前は理解できなかったけど、今は分かります」


翔太は感動していた。美咲は相変わらず自分らしさを保ちながら、新しい価値観も受け入れていた。


「美咲さんって、本当にすごいですね」


「そんなことないですよ。翔太さんだって、内面を磨くことの大切さを学んだじゃないですか」


二人は互いの成長を認め合っていた。

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