第十一章 それぞれの成長
三か月後——
美咲は新しいプロジェクトのリーダーに抜擢されていた。
「桜井さんの分析力と実行力を買って、今回は任せることにしました」部長が説明した。
「ありがとうございます」
美咲は自信に満ち溢れていた。翔太との関係を通して、自分の価値観を再確認できたからだ。
「でも、チーム内のコミュニケーションも大切ですからね。たまには飲み会にも参加してくださいよ」
「はい...頑張ります」
美咲は苦笑いした。コミュニケーションは今でも面倒だったが、仕事のためなら頑張れそうだった。
その夜、美咲は久しぶりにお洒落をして、同僚との飲み会に参加した。薄化粧に、シンプルだが上品なワンピース。翔太との関係で覚えたことを、自分なりにアレンジしていた。
「美咲ちゃん、素敵!」
「たまにはお洒落もいいもんですね」美咲が笑った。
一方、翔太はマーケティングの仕事で新しい企画を任されていた。
「今度の企画、ターゲット層の心理分析がポイントになります」
翔太は美咲から学んだ論理的思考を活かして、データを分析していた。見た目だけではなく、中身の充実を重視するようになった彼は、仕事でも新しい視点を得られるようになった。
「森川くん、最近仕事への取り組み方が変わったね。深みが出てきた」上司に褒められることも増えた。
SNSの更新は週一回程度に減らし、その代わり読書や映画鑑賞に時間を使うようになった。フォロワー数は少し減ったが、心は軽やかだった。
「見た目を磨くのも大事だけど、バランスが必要だったんだな...」
翔太は美咲への感謝の気持ちを抱いていた。彼女との関係は終わったが、得たものは大きかった。
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