第2話
お買い物🧅🥕デート❤️❓
お買い物デートと言ったら、どんな連想をするだろう。男女がデートしながらそれぞれのお買い物をする、或いは若い夫婦が仲良くお買い物をするというようなことかな。デートがてらお買い物をする。逆に、お買い物がてら、デートをするというとお買い物が優先して、そこにデートが負荷するイメージかな。
お買い物デートといっても、こと食材のお買い物に関しては、買い物をしているカップルというのはほとんど見ない。おもに主婦がひとりで、また年配の親父さんがひとりで,若いシングルがひとりで、というような食材買いの風景になっていると思う。主婦の食材買いというのは、たいしたもので、というのは長年培った食材買いの年季というものがある。美味しいもの探し、値段と品質、食の栄養バランスという点で非常に長けている。ところが、食材買いを始めた当初、男ってのは、バンバン欲しいものをカゴに入れていって、支払うときは小銭は使わず、札を出すというような買い方をしてしまう。誰かが言ってたな。小銭をちゃんと出すとお金が減らないって。そして、買っているうちに、まてよと思うようになって、食材の品質を見るようになる。なぜかというとよく見ないで知らずに傷んだような野菜や果物を買ってしまったときのそれは、嫌悪感というか、罪悪感というか、本当に嫌なものなのだ。また、併せて、値段も見るようになる。細かくなると、どこの何が品がよくてしかも安いとかね。そういうことは、主婦を見習っていれば間違いないと思う。
お買い物デートの話にもどそう。実は、僕と真理子は、お買い物がきっかけで出会った。お買い物は、ひとりでしている人が多い。がそのひとりひとりが買い物中に、コミュニケーションをして、人と人が知り合うというようなことは、ほとんどない。何故かというと、そこには暗黙の了解のようなものが互いにあると思う。他人様のお買い物の邪魔をしない、他人様のお買い物の領域に踏み込まない、だから買い物をしている他の人にむやみに話しかけたりしないというようなお買い物の常識みたいなものがある。互いに忙しい時間帯だし。話しかけたり、物を聞いたりするようなことがあるとするなら、それは店員に対してだけだ。。
そうして、僕はその日も、買い物客層としては、一応、年配のシングルの層で。珈琲好きなので、珈琲は専門店で豆を購入して、自分で轢いてドリップで入れて飲んでいる。でも、水分摂取するのに、好きだと言っても珈琲ばかり飲んでるのは、どうかなと思ったのである。そうだ、紅茶を買おう、アールグレイがいいと思い、お茶のコーナーに入ってみると、そこに既に女の子がいて、やはり紅茶を探して選んでいるらしい。僕は、変に思われないように近づいて、さっさとアールグレイのティーバッグの箱をとっていこうと思い、ちょっと失礼だったかもしれないが、彼女の見ている横から、手を伸ばす形になった。あった、あった。トワイニングのアールグレイのティーバッグ小箱。それはティーバッグで、ティーバックではない。そこは、間違えてはいけない。横から手を伸ばして、さっと取ると、彼女が、
「あっ!」
と言ったのだ。僕は、慌てて
「これ?」
と言う。彼女は、僕を見てこっくりと頷く。
「ごめんなさい。一個しかないのに、横から手を出して、取ったりして。触っちゃったけど、どうぞ。」
と彼女にその小箱を差し出すと、
「いいんですか?」
と言って、受け取った。
「いいんです。俺は今日は、リプトンにするから。」
と言って、リプトンのティーバッグの箱を食品棚から取った。そうすると、彼女は、
「アールグレイ。飲みたかったんでしょ?」
と言う。
「うん。そうだけど。もともと俺は珈琲党だから、紅茶にはそんなに拘りはないからいいんですよ。しかも、失礼にも傍から入って取ったんだから。気にしないで。ごめんなさい。」
彼女の「あっ!」は、私が今、それを取ろうと思ってたのにっ!あらまぁ!の「あっ!」だったに違いない。僕としたことが、本当に失礼で悪いことをしたと思う。
「じゃあ。分けるってのはどう?」
とそのアールグレイの小箱を自分の顔の前に出して、ニッと微笑みながら言った。えっ?!そういう展開?あらぬ展開に僕は少し戸惑った。しかし、彼女の平和の象徴のようなスマイルマークはあまりにも可愛くて美しかった。
「いいの?」
と思わず答える。そうすると彼女は、また微笑んで、頷いた。
僕たちは、スーパーと同じ敷地内にあるカフェで、お茶を飲みながらそれを分けることにしたんだ。これが、僕の、いや僕たちの初めてのお買い物デート。買い物が先で、お茶が後だった。僕は、エスプレッソ、彼女は、キャラメルラテを持ってゆったりとしたソファー席を僕が選んで、二人は座った。カップをテーブルに置くと、彼女は、早速、アールグレイの小箱の中から半数のティーバッグを取り出して、広げたナプキンの上に置いて言う。
「これで、半分よ。」
「うん。」
僕も同じように、リプトンの小箱から、半分を取ってナプキンの上に置く。二人はそれをそれぞれの小箱に相手の出したティーバッグを収めた。コロナウィルス感染警戒のさなか、こんなことをやっている人ってのは、いないだろうと僕は思う。彼女もまたそう思っていたに違いない。
「ありがとう。アールグレイは香りが立っていて、いかにも紅茶って感じがするよね。だから、アイスティーにしても美味しいし。」
と僕が言うと、彼女は、なんだ、わかってるんじゃないとうんうんと感心するような顔をしてから、
「ウェルカム!」
と答えて、キラリ!とさっきの金の微笑をする。ショートカットが似合っていて、眼が大きく端正で綺麗な顔だちの女の子だ。だから、その微笑はたまらない。僕たちは互いのごく簡単な自己紹介をして、メルアド交換までして,また、お買い物を合わせて、お茶か食事をするという約束をして別れた。僕にとっては、非常にラッキー&ハピー♡な出来事だった。彼女は、私のことは、真理子と呼んでねと言っていた。
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