死屍累々
「させるつもりも、ありませんが」
「ぎゃっ!?」
久しぶりに会う遠崎さんを僕は寝技で組み伏せ、そのまま腕を固める。
「このまま暴れないでくださいよ。僕、相手を気絶させるの得意じゃないので」
いい感じに手加減するのは苦手。
故に、気絶させるのも苦手だ。
異世界に居た頃は魔法でうまく気絶させていたが、今は魔法を使えない。うまく相手を気絶させる手段は今の僕にはなかった。
「……くっ」
「暴れないで欲しいんですけどねぇ」
相手が気絶するいい塩梅の拳って結構難しんだよ!
『……』
「まぁ、このまま適当に抑えこんでおきますか。他の構成員の制圧も終わりそうですし」
絶対に生け捕りにしなきゃいけないと厳命されているのは遠崎さんだけ。
他の人間も出来れば生け捕りが良いが、最悪生死は問わないとのこと。というわけで、早見さんも真紀さんも結構好き放題暴れていた。
早見さんはいつもの銃で手足を何本も飛ばし、死なないギリギリのところまで追いつめて戦闘不能にさせ、真紀さんは……何だろう?見たことのない攻撃手段で相手を制圧して行っている。
体の内部から肉が溢れ出て異形の姿になって……うーん、相手にも自身の再生魔法をかけ、その上で暴走させているのかな?
中々エグイ様相だ。
「うっ……ぁ、うぅ」
「痛い……痛い……痛い……」
「ぁ……う、ぁう」
もうほんと、地獄みたいなことになっている。
血生臭い匂いが立ち込め、誰も彼もが呻き声だけをあげる。
「……み、みんなっ」
遠崎さんが、そんな様子になっている魔法少女たちのトップなのだろう。
死屍累々の部下の様子を見て遠崎さんは涙目になりながら絶望の表情を浮かべて絶望の表情を浮かべていた。
「……」
うーん、ちょっと知り合いのその表情は来るなぁ。
『……ッ……ッ』
「……ごめん、なさいっ……私がっ……」
嫌な気持ちを抱えながら僕は遠崎さんの後悔の言葉を聞き流す。
『……ザー、……ザー』
「……あいつらの、手を……借りようなんて」
「あん?」
だが、その次の瞬間に決して聞き逃すことのできない言葉を漏らした遠崎さんに反応する。
「あいつら?……協力者か」
資金の流れを見て感じた二つの組織。
僕が早々にここを落とすことに決めたのは協力関係にある二つのうち一つを電撃的に潰すことでもう一つも焦らせ、片方も動くように仕向ける為だった。
「……向こうの方が、力関係として上だったのか?ねぇ」
寝技をかけている僕は強引に遠崎さんの顔をこちらの方に向けさせる。
「協力者いますよね?詳しく、ここで話してくれますか?」
「……ッ!い、言えません」
「既に自由の女神は陥落しました。これ以上、足掻いても仕方ないでしょう。情報を吐いてくれるのであれば、情状酌量の余地ありとして、上に話しておきます。貴方もこれ以上、無為に部下を失いたくはないでしょう?」
「……ッ。い、言えたらっ……こんな、ことにはっ!?」
「ちっ、そういう類の?」
あーらら、やっぱり自由の女神の背後に大人がいたのか。
それも、最悪の形で。
もう一つの組織に脅されているような形だったのか……。
『……ザー、ザー、ザー』
「……ん?」
ありゃ、今……何か、聞こえたような気がっ。
『ごめんッ!みんな!私がハッキングされちゃった!ここの様子、全部配信されているわ!」
「……えっ?」
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