連絡先
「さぁ!キリキリ吐きなさい!前に会った時も結局今、貴方が何処で何をしているか教えてくれなかったじゃない!今日こそは吐いてもらうわよ!」
「えぇ!そうです!今、別のところで働いているってどういうことですか!貴方は」
いつの間にか出来ていた横のつながりはその勢いのまま僕の方に迫ってくる。
「一年間、僕がいなくとも順調に企業を運営し、業績を拡大させていっているんだ。もう僕がここにいる価値もさほどないでしょ。それよりも僕の価値を最大限に活用できる場が他にある」
「そ、そんなの何処にあるんですか……!まだ、私たちは世界一の企業になっていません」
「いや、うちらの業態で世界一は厳しいでしょ。生産AIとか、最先端技術関連のにもちょっと手を出しているけど、それはあくまで国内で頑張っていた中小企業を買収してこちらの資金を注入して強引に押し進めていっただけ。ゼロからの構築じゃない。今更ゼロからの構築を目指す難易度は高いし、今のやり方のまま続けようにもこれ以上買収できそうなところもない。現実的じゃないと思うな」
「私は貴方からそんなことを聞きたいのではありません!夢を聞きたいのです!」
「えぇ……?」
一体何時から静江はそんな厄介オタクみたいなノリに……?これまで僕がやろう!っていきなり言い始めたものにストップしてきていたというのに、何でそんなノリになっているんだ。
「……次、何かをやるとするなら魔法少女関連だ」
「っ!」
「今はただ魔物を倒す存在として活躍しているけど、いずれそれだけじゃなくなると思う。魔法少女たちが特別な力を持っていながら、魔物と命がけの戦いをするだけの生を送ることを良しとはしないだろう。何時まで、あのヒラヒラの衣装を着るのかという話もあるしね」
実際、組織的に国家の敵に回った魔法少女たちもいる。
魔法少女たちがずっと国家の犬を続けるのは中々現実的じゃないだろうね。
「……それもそうですね」
「今の状況は徐々に変わって行くと思う。その時代の変化の手綱を握ること。それくらいじゃない?可能性があるとすれば。あと、あれだ。魔物とかも商売利用できるかもしれない」
「魔物を……?」
「灰になって消えるのが厄介だけどね?再生持ちの魔物を生け捕りにして肉をずっと剥ぎ取ったり、可能性はなくないでしょ。まぁ、そんな悠長なことをやっている暇はまだないだろうけど」
「じゃあ、何?貴方がそんな語るってことは今、蓮夜は魔法少女関連の仕事でもやっているの?」
「まぁ、そうなるかな?事務の方でちょっとね」
「……じむぅ?貴方がそんな暇そうな仕事をするとは思わないのだけど」
「世の中の仕事に上も下もないさ。それで静江。やって欲しいことがあるんだけど……ここら辺の情報を洗って欲しくて」
業務内容について詳しく話すわけにはいかない。
二人に自分が女装していることを知られたくはない……!サラッと話を流しながら僕は一枚の書類を取り出し、別の話題を切り出していく。
「……社長でもないのに頼み事ですが?」
「僕と静江の仲じゃん?お願い」
「……し、仕方ないですね。私と蓮夜様の仲ですから」
「ありがと」
よし、静江に任せておけば話は勝手に進んでいくでしょ。
「僕がやりたかったことはこれだけかな。何かわかれば、また連絡して……新しいアカウント教えるから、そこに。前のアカウントはちょっと連絡が多すぎてパンクしているから」
「……はい?」
「はぁぁぁあああああああ?!」
前のアカウントは見れていない、と話す僕に対し、二人は不服そうな声をあげる。
「ちょっと!勝手に一年いなくなっていたのは貴方なのよ!それを……それを!心配して送っていた私たちの連絡をなかったことにするとか!いくら何でも酷いわ!」
「そ、そうですよ!」
「十万を超えているんだぞ、見れるわけあるか」
「「……えっ?そんなに?」」
「僕が一番ビビったわ。案外僕ってば人望あったのな」
「……人望あったと自覚しているのに、放置とかずいぶん酷い人なのね?」
「全員に時間を割けないし。重要な仕事を僕が抱えていたわけじゃないし、良いでしょ」
「……ドライが過ぎる。貴方、自分の父のこと言えないわよ?」
「えぇ!?それは不服!」
お父さんと一緒は流石に困る。
「……うぅん、とりあえず、連絡先交換しよ」
「わかりました」
「私もするわよ」
「うん、もちろん」
これで連絡先二つ追加。
早見さん、土御門さん、お父さん。この三人に続いて二人。いやはや、前と比べるとずいぶん少なくなったものだ。
「それじゃあ、僕はここら辺で」
やることは終えた。
「あっ!ちょっ」
すべてのやることを終えた僕はすたこらさっさとこの場を後にするのだった。
■■■■■
非常用階段を駆け下りてビルを後にした僕は人通りの多い東京の街を進んでいく。
「さて、ここから……」
「蓮夜。楽しそうでしたね?」
「おわっ!?」
ここからどうするか。
そう悩みだした僕のすぐ横にいた早見さんよりいきなり声をかけられた僕は思わず驚きの声をあげるのだった。
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