買い物

「えーっと、とりあえずこれから食べていけるだけの食料品を買うことは出来たかな」


 早見さんと共にショッピングモールへとやってきた僕はパンパンに詰まったレジ袋を手に抱えながら買ったものを確かめる。

 また、仕事で家に帰れない日々が続くかもしれないことを考慮し、長期保存出来るものや量の少ないものを中心に購入していった。

 元々の家にはスイーツとか、生魚とか、おおよそ長期保存に向いていないものばかりだったからね。ちゃんと色々考えての購入だ。


「荷物、重いでしょう?お姉ちゃんが持ってあげるわよ」


「いや、大丈夫。魔法でサクッと閉まっちゃうから」


 周りに自分が魔法を使えると思われるのことのないよう幻惑を見せた上で、僕は荷物を異空間へと仕舞う。


「えっ?……荷物が、消えた?」


「魔法を使ってしまっただけだよ」


「……ずっと思っているんだけど、蓮夜くんの魔法って何なの?身体強化?だとしたら、その魔法での収納は一体?収納が魔法だとするなら、あの身体能力は素なの?一体何の固有魔法を与えられたの?私の目からは蓮夜が幾つもの魔法を使っているようにしか見えないんだけど」


「えっ……?何、その疑問」


「ん?」


「普通、色んな魔法使えるでしょ」


「いや?使えないわよ。魔法は人それぞれに与えられたひとつの種類だけでしょう?」


「なにそれ知らない」

 

 僕の知っている魔法じゃないんですけど。

 もしかして、僕が無属性の魔法しか使えないのはそのシステムに引っ張られているから?これ、これからも僕は他属性の魔法使えない感じ?

 勇者時代に愛用していた聖属性の魔法くらいはまた使えるようになりたいんだけど。


「……複数の魔法を使える感じ?」


「まぁ」


 これでも自分の感覚では信じられないくらい減っているという感想なのだが。


「信じられな……いや、でも、今更と言えば、今更よね」


「いやぁ、自分は何者何でしょうね?自分の空白の一年で一体何があったのやら……」


「永遠に謎ね。それでも、蓮夜くんが味方ならいいわ」


「そればかりはご安心を」


 敵に回るようなメリットはないだろうしね。

 早見さんが体制側にいるなら。

 個人的にも戦いたくはない。


「さっ、これからどうする?何か買い物するかしら?」


「うーん……ちょっと服とか欲しいかもなぁ」


 僕は基本的にワンシーズンが終わると共に服を売ってしまい、来年新シーズンになるために買い換えていく人間だった。

 そろそろ時期は秋。秋服が欲しい頃だった……まぁ、僕がいなかった一年の間にますます夏の勢力が強くなり、秋が短くなって行っている気もするが。


「それじゃあ、行きましょうか」


「はい」


 僕は早見さんの言葉に頷き、ショッピングモール内を進んでいった。

 

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