第2話 平和ボケした兵士は想像の100倍情けない

ギルドから飛び出し広場へ向かうと、そこはすでに混乱の渦だった。



「モンスターだって!? ここ数十年は町の近くに現れた事なんて無かったじゃないか!」

「そんなこと知るか! 来てるもんは来てるんだ! 迎撃の準備をしろ!」



兵士たちが悲鳴にも似た怒号を上げている。彼らは皆、腰に剣を差してはいるものの、顔は青ざめ、手は震えていた。


「死にたくない! こんなことなら兵士になるんじゃなかった!」


いや、兵士ってそういう仕事だろ!

と心の中でツッコミを入れずにはいられなかった



「ママ~!助けて~」


やけに野太い声に思わず目を向けると、いい年したおっさんが泣き崩れていた。

恰好からして兵士だ。

いい年してマザコンか!?親離れしろよ!というかお前は兵士だろ!お前が助ける側だろ!情けないにもほどがあるだろ!


目の前の兵士にあきれていると、広場の一角で隊長らしき男とギルド長が声を張り上げていた。


「ゴブリンの群れが迫っているのを確認した。単体では弱いが、集団になると厄介なのは知っての通りだ。冒険者たちは各パーティーごとに迎撃に向かってくれ。街にたどり着く前になるべく数を減らしてくれ!」


「わが隊も迎撃へ向かう。訓練通り連携して対応すれば問題ない。直ちに向かい、隊列を組め! 住民を守るぞ!」


ギルド長の言葉に、冒険者たちは冷静な表情で頷き、次々と走り去っていく。

一方、隊長の号令を聞いた兵士たちは、いくらか冷静さを取り戻したようだった。彼らは震える手を握りしめ、冒険者の後を追うように、走り出した。


「いや、大丈夫か? あいつら……」

僕は思わずつぶやいた。


訓練だけは積んでいるのだろうが、実戦経験のない彼らがゴブリンの群れを相手にできるとは思えなかった。

そんな僕の不安をよそに、兵士たちは「住民を守るぞ!」という意気込みだけは一人前で、意気揚々と走り去っていった。


このままでは、被害が拡大するだけだ。


「少しでもゴブリンを減らさなきゃ……」


タロウは気持ちを切り替え、彼らの後を追うことにした。


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