第22話 奥様とメイドは女性同士で愛し合う

「イリス突然どうして?」


シモンは振り返ってみると妹が不安そうな表情を浮かべていた。どんな理由で口にしたのだろうか?


「見ていましたらこの人が何だか可哀想に思えて……」


道徳的な感覚を強く持っているイリスは胸が苦しくなる思いで見守っていた。逃げようとしたエレナが転んで、顔面から床に着地した時には同情せずにいられなかった。


「この女に私はまだ何の罰も与えていないけど?」


後ろにいたイリスに声をかけられて、シモンは最初は少し驚いた顔をしたが直ぐに冷静さをもって言葉を返した。


エレナは自分の命よりも大切な妹の心を傷つけた憎き相手。それなのに被害者の妹が庇うような事を言う意味がわからなかった。


「ですが、見たところ転んで膝も腕のほうも擦りむいてますし……お兄様の回復魔法で治した方がよろしいのでは? それにもっと女性には優しく接してほしいです」


イリスは正義感の強いまじめな女性。夫のレオナルドとエレナは幼馴染で長年にわたって不倫関係を続けていた。二人は妻を家から追い出そうと密かに結託していた人の道を外れた悪い人間。


決して許せない相手ですが人間の屑みたいに扱うのはどうか? と意見する。エレナはこけた拍子に顎をぶつけていますし、手首のところの皮膚が怪我している。


だからまずはエレナに魔法で治療して傷を治してあげて、彼女の体調を良好にしてから丁寧に扱うべきだと主張した。


「この女が勝手に逃げたから私は魔法で阻止したのだが?」


非の打ちどころのない完璧な化粧が取れて、化けの皮がはがれたエレナは顔から火がでる思いで恥ずかしくなる。みんなに自分の醜い容姿を見られて、いたたまれない気持ちで尻尾を巻いて逃げようとした。


シモンは逃亡を図ったエレナを抑制しただけで、足をとられてバランスを崩して転倒したのは無我夢中に全力で走っていたエレナの自業自得。不可抗力によるもので避けられなかったと異をとなえる。


「ですがお兄様! 私はどんなに人を殺した凶悪犯罪者でも話せばわかってもらえて、絶対に清く正しい心を取り戻せると信じて……」


高い倫理観を持っているイリスは、倒れた時に膝小僧を擦りむいて床の上で糸のような細い声で静かに泣いているエレナを見ながら、悲哀感がわくのをおぼえた。


どんなに恐ろしい思考の持ち主や邪悪な心を持っている悪い人間でも、絶対に人の心を取り戻すことができる。真面目に説得すれば改心して心を入れ替えてくれるとイリスは自分の考えを明らかにした。



「――イリス奥様の考えは何から何まで全て間違っています!」



罪人で事件の張本人に対しても人道的な扱いを心がけてほしいと、兄に視線を向けて真剣な瞳で文句を言った直後だった。


イリスを尊い最高の女性で神様みたいに信仰し、心から慕って日々寵愛を嵐のように降り注ぐメイドがイリスの意見はおかしい! と反論しその後は相次いでメイドたちが口を挟んでくる。


「え……!? あなた達どうして?」


兄にも夫にも誰にも言えない秘密だが、いつもベッドの上で真心を尽くしてイリスを愛してくれるメイドたち。最初は週に一度くらいでしたが数日に一度という感じになって、今では朝昼夜を問わずほとんど毎日。


イリスはメイドたちと一緒に女性同士のプレイを楽しんでいる。夫とは体の関係はなかった。一番下の子を産んでから触れられていない。メイドと遊ぶようになってから、夫のことが臭くてたまらなくて汚い存在に思えてきたのが本音でした。


メイドたちは本当に可愛い子たちで、中には男らしい子もいてそういう子にはボーイッシュな服を着せている。イリスも様々なコスプレ衣装を自作したりテンションMAX状態。


発動中は無敵になった気分で心が開放し、天国に上ったみたいな顔で限りない幸福感に浸っていた。


それなのにメイドたちが初めて怒った顔で口答えをしてきて、イリスは美しく整った顔立ちが衝撃で歪んだ。

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