第21話 ブスな女性も化粧で美人になる
「いやああぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁあぁあ!」
エレナは顔の化粧が落ちたのを手で触って確かめると、手鏡を取り出して自分の顔を改めて確認してみた。次の瞬間すさまじい絶叫を響かせる。
周りにいたメイドたちは呆気にとられて、とても信じられないといった気持ちになった。まさかエレナの顔があんなに顔の作りに問題があるとは思わなかった。
どれだけ化粧で誤魔化していたのか? メイクの技術レベルが高すぎる! とメイドたち一人残らず全身に雷が走ったほどの衝撃でした。
部屋の中にいる数十人のメイドたちは全員が飛びぬけた美人ではないが、顔の造形が平均以上で点数をつけるなら全員が100点満点中80点はある顔なので、一般的に充分に美人の部類といえる女性たちだった。
「不細工! 静かにしろ!」
耳が痛くなるような高周波に似た悲鳴に、シモンは手で耳を押さえて不満そうな顔で苦言を呈した。
「ブスな私の顔を見ないでええええええええええええええぇぇーーーー!」
まともに人と話ができない化け物顔が表面化して、身の置きどころがないエレナは立ち上がると顔を両手で隠して、甲高い悲鳴を撒き散らしながら部屋の外に逃げ出そうとした。
「醜い悲鳴を上げるなと今言ったばかりだろう。顔も汚くて頭まで悪い女は救いようがないな」
シモンは立ち上がって逃げようとするエレナを見ながら、言いようのない不快感を覚えて胸くその悪くなる思いになる。
つい今しがた叫ぶなと注意をしたのに、どうしてまた気違いみたいな声を上げるのか? 理解ができなかった。
「きゃあああああっ」
エレナは何かにつまずいて滑って転んだ。短い悲鳴をあげて前のめりに落下して顔から床に倒れた。
「逃げるな不細工!」
シモンは後ろから魔法を放ってエレナの足を容易に止める。逃げようとして転んだエレナに当然の言葉を吐いた。
「た、助けてぇぇえええええ! 許してええええええええええええええええーーっ!!」
これから私は何をされるのか? エレナは恐怖めいたものを感じて救済を願って悲鳴を上げた。続けて断末魔の苦しみに抵抗の姿勢を示すように、許してくださいと声の限りに叫んだ。
「だから騒ぐな。次に私の許可なく声を出せば足や腕でも体の一部がどこか無くなってると思え。これで忠告は最後だからな?」
どうしてこんなに頭が悪いのか? シモンは呆れたような顔を見せた後、容赦ない言葉で事前に念押しする。
醜い顔で生まれてきた女に同情して、いきなりエレナの体を負傷させることなく、シモンは前もって注意する優しさを見せた。
「はぁー、やっと大人しくなったな。阿保でゴミ同然の女でも自分の体が傷つくと分かれば黙ったか」
エレナは真っ青な顔で黙りこんだまま怖さで震えてうつむいていた。シモンは小さくため息をついて、ようやく控え目な態度をとって床で横になっているエレナを見ながら言った。
「――お兄様、少しやり過ぎではないですか?」
後ろで見ていたイリスが気の毒そうな顔で兄に声をかける。エレナの痛々しい姿を見かねて黙って見過ごすことはできなかった。
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