第16話 幼馴染が告白した夫の秘密に妻は衝撃

イリスは離婚する事は決めている。昨日の夜に寝室で夫から真実を打ち明けられて、数十分前にも二人から皮肉を言われ軽んじる態度を取られた。


その時は悔しさと怒りがこみ上げて泣いてしまった。夫への愛はなくなって影も形もないので、この望まない結婚生活を続ける必要はない。


「ひいいいいいいいぃごめんなさあああい! あっ、奥様レオナルドにはとんでもないがあるんですよ!」


私は明日は生きてないかも……? イリスの言葉に命の危険を感じたエレナは、窮地に追い詰められた顔で甲高い悲鳴をあげると何か思い出して、レオナルドは隠し事を持っていると主張した。


「――何を知ってるの?」


しばらく考えに沈んでいたイリスが冷静さを保って口を開く。最初は苦しまぎれの言葉に過ぎないだろうと思ったが、ものすごく真剣な態度で両手を胸に組んで祈るようにじっと見つめている。


その様子に嘘ではない事を直感的に感じとり尋ねた。


「レオナルドは昔から怖がりで、よくおねしょをしていました」


エレナは眉をひそめ顔を近づけて喋り始める。レオナルドは寝小便をやらかしてエレナは度々驚きに打たれたという。


「それは知っています。レオナルドから何度か聞いたことがありますし子供の時の話でしょ?」


だが特別に驚くことではないと思う。小さい頃は誰でも経験するもので恥ずかしい事ではない。イリスは秘密ってそんな事なの? と思いながら呆れた顔をした。


「イリス様ここからが大事です!」

「そうなの?」


やれやれというように首を振り、ため息をもらすイリスを見てエレナは俄然やる気を出したようだった。イリスはそれなら話してみなさいよという感じで応じる。


「あの男は成人になっても三日に一回はお漏らししてたんですよ」

「はぁ?」

「ちなみに今もしてます! 大人なのに信じられませんよね?」


イリスは体に稲妻が走ったような感覚を味わう。成人した男が三日に一度も失禁をしているなんて信じられなかった。


呆れ声を出して嘘だろうと思いますが、どうやら本当らしくイリスは体が震えるほど驚いた。幼馴染同士なのでエレナは妻のイリスが知らない恐るべき秘密を知っていた。


実は以前から寝室で夫婦で寝ているとベッドが三日に一度くらいに、いやな臭いがしていた事がありました。原因は夫が漏らしていたのかとやっと納得できた。イリスは迷宮入りの謎が解けたような気がした。


とは言え、成人になって高齢者でもないのに自分の意志とは別に、排尿してしまうなんて絶対におかしいと思いました。我慢のできない尿臭い男なんてお断りです。


「我慢してる事はまだあります」


エレナはレオナルドの事で悩み苦しんでいることがまだあると悲しそうな声で言う。


「――イリス無事かあああああ! 兄が来たぞぉぉおおおおおおお!!」


次の瞬間、イリスの兄のシモンの声が部屋中に響き渡る。元気な声だが顔はすっかり血の気をなくして青白く、やつれた顔をして疲れ果てているように見えた。

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