表参道にて

辛島ノアール

第1話 プロローグ

 かつて私と同じ展覧会に出品していらした、同期の方のお話です。




 私は例年通り出品している絵画展にペン画を描いて出品していた。 その年も会期中に自分の作品を観る機会があり、丁度展覧会の催し物で『交流会』があったのでそれにも出ようと朝早く土曜日に出掛けて行った。 新国立美術館に着いて会場で作品を観て廻っているとうまい具合に聖美(きよみ)にばったり出会った。 聖美(きよみ)は私の絵描き仲間兼友人で、この日も一年ぶりに再会を果たしたことを喜び、お互いの作品を観て色々と絵の前で語り合った。 すると聖美(きよみ)が、来週の合評会(現代では『作品交流会』と呼ぶ)は参加するのかと尋ねてきたので、私は勿論参加する旨を伝えた。


「聖美(きよみ)さんは?」


 私が彼女に尋ねると、私も行きますという事だった。 その後私達は交流会に出て、色々な方々との交流をお酒を交えて深めていった。 そしてもう一度会場を廻り、ゆっくりと絵を観てから、ではまた来週という事で互いに手を振って取り敢えずその日は一旦お別れしました。

 この時今回の展覧会が私達にとって最後のお付き合いになるなど、一体誰が予想することができたであろうか。 まさかこの出会いが私達にとって今生(こんじょう)の別れになるなんて私は思いもよらなかった……。

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