第七話……いきなり戦闘決着⁉️

「なっ……!」

「ぐぁっ……!」


 部下二人は、直撃は避けたものの、左腕や脇腹に傷を負ったようだ。

 しかし、それも束の間。その影に隠れて、姫の化物が両手に短剣を持ち、素早く突っ込んで来ていた。


「お前、やっぱり剣術もできるのか!」

「当たり前でしょう!」


 化物の怒涛の剣撃を、いとも簡単に躱しているたすく。その身のこなしは、まるで相手の動きを完全に読んでいるか、止まって見えるレベルじゃないと、為し得ないものだった。


「どうして当たらないのよ! このっ! このぉぉ!」

「無駄だ! もう勝負はついた! これ以上続けるなら、流石に痛い目を見ることになるぞ!」

「だったら……!」


 すると化物は、たすくの後ろで少し離れている私に標的を変えた。

 突然のことに、私は声を上げる間もなかったが、どうやらたすくにはお見通しだったらしい。

 たすくは、化物の右腕を掴んで強く引っ張り、地面に投げ倒した。


「それも読んでるよ。王族なのに邪道すぎやしないか? 王道にしてくれよ、王道に」

「くっ……この私が……! 何を呑気に回復なんてしてるの! あなた達がまともなら、こんなことにはなっていないのよ!」


 傷を負って回復魔法を自分にかけている部下に対して怒鳴る化物。

 そうは言っても、回復しないと、これ以上役に立たないほどの傷だったと思う。


「もういいだろ。二人の回復が終わったら、まずは勇者管理組合に向かおう。そのあと、城で冤罪を晴らすための説明会だ」

「くっ…………。分かりましたわ……。私も疲れたので休ませてもらいます……」


 化物はうなだれて、両手に持っていた短剣をカランと音を立てて地面に放ったようだ。

 しかし、とても諦めたようには思えない。なぜなら私の目には、まだしっかり刃を持ち、臨戦態勢を解いていない化物の姿が映し出されているからだ。


「たすく、まだ油断しちゃダメだからね」

「大丈夫だ。全部分かってる」


 小声でやり取りをしていた私達に、ラピスと剣士が近づいてきた。


「たすくお姉ちゃん、本当にすごかったね! 何でもできちゃうんだ!」

「驚きという他ありません。今のあなたなら、確実に勇者になれますよ。まぁ、今更ですけど……」

「決定を覆すことがどんなに難しいかは分かっているつもりだよ。でも、言うべき時に言わないで、みんなが損をするのは、絶対に間違っている」

「でもこの場合、城からすれば、ちゃぶ台返しになるんじゃないの?」


「ちゃぶ台って何?」

「確かに、言うべき時が遅すぎると思います……」

「食事が並んだテーブルのことだ。ちゃぶ台返しは、そのテーブルをひっくり返す、つまり物事が全部決まって、これで行きましょうとなった時に、『そもそも、これ必要か? やっぱり、やめよう!』って言うこと」

「たすくが会議の時にやりそうなことだよ」

「失礼な。俺は議論を進めるリーダー側ばかりやってたから、意外かもしれないけど、そんなことは一切なかったんだぞ。

 それに、この場合はちゃぶ台返しにならない。なぜなら、本来のちゃぶ台返しは、強権を振るって一方的にご破算にすることだから」

「まさに、これから実現しそう……」


 私達がそうこう話していると、姫の化物が近づいてきた。どうやら、回復と休憩が終わったらしい。

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