第34話 リレー大勝負!!

「ふぅ……」

コースを見つめながら、息を吐いた。リレーは中学の2年の時以来であるため、結構緊張していた。

多くの人から歓声が響き、学園全体が盛り上がっていた。

「さぁ!そろそろ!お待ちかね!リレー対抗戦の始まりだー!!!!!」

「わぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

司会者の声に多くの人が大声を上げた。

「一体どのクラスが1位を手にするのか!!」

スタート位置に1走目が並んだ。

「よーい……」


パンッ!!


1走目が一斉にスタートした。俺はトンットンッと飛び跳ねながら走っているチームの人を見ていた。俺のチームは現在3位、そのままキープしてくれればいいのだが……

「はーい!」

2走目にバトンが渡った。ぐんぐんスピードが上がっていて前を走る走者を追い抜いた。

「よし!」

俺も走ることに集中することにした。

だが、その時だった。

「あっ……」

2走目が3走目にバトンを渡そうとした時、バトンが僅かにずれて、手から離れてしまった。バトンが地面に落ちて転がっていったのだ。

「やばっ……!!」

3走目が急いで取りに行ったが、その間に他のチームが次々と走っていってしまった。

「あーっはっはっはっ……!!!俺様の勝ちだな!!」

「……アマーティ」

アマーティが俺にそう言ってきた。

「お前に勝ち目はないな!諦めろ!」

「…………」

俺はアマーティを無視して、3走目を見ていた。バトンを手にした彼は急いで走り出したが、当然最下位だ。勝ち目なんかない、みんなそう思った。

「ご、ごめん!如月!」

3走目が俺にそう言ってきた。焦っているようで手がブルブル震えていた。俺はそいつの目を見て、

「大丈夫だ!任せろ!」

そう言った。彼の目が大きく見開いていた。俺の手にバトンが渡された。前を向き、走り出した。


(まだ足が速くなっていない……どうにか追いつかないとな……)

アンカーだけ2周走ることが決まっているため、ペース配分を考えた。ただ、最初にかなり飛ばすと追いつけるけれど後でしんどくなる。だから、どうにかして追いつかないといけない。

(ふぅー……昔のように走れるか分かんないけれど、頑張らないと……)

前を走っている人を1人また1人と抜いて行った。

(まだ、まだだ!!もう少し!)

2位の人に追いついた俺は、抜くまでスピードを上げないようにした。

そして、

「おおーっと!!最下位が2位にまで上がったー!!」

「すげー!!!」

俺は前を走るアマーティを捉えた。

(やるか!今ここで!)

俺は足に力を込める。地面がバキバキと音を鳴らし、ヒビが入った。

『雷走』

俺は能力の名を口にした。電気が足に宿り、足の回転が速くなった。

ぐんぐんスピードが上がっていく。アマーティとは150mぐらい離れていたが、今は30mになった。

「な、なんと!!脅威のスピードだー!!!すごい追い上げです!!」

さらにスピードが上がった俺は……

アマーティに並んだ。

「なっ……!!」

突然、自分の横に並ぶものがいれば驚くだろう。アマーティは驚愕した表情で俺を見てきた。

「あまり自分を過信するなよ?」

「……っ!!」

俺は前を向き、さらにスピードを上げて、アマーティを追い抜いた。

「なんということでしょう!!!とんでもないスピードです!1位を追い抜き、先頭を走っています!!」

「すごー!!!」

「わぁぁぁああああ!!!」

歓声が響いた。

「れいちゃーーん!!いっけーーー!!!」

「れい兄ーー!!負けんなー!!!」

「いけ!!零!!」

「やっちゃえーー!!れいーーー!!」

龍牙や日向、蓮斗、魁斗の声が聞こえる。俺はニヤッと笑ってしまった。

(あいつら……あんな大声で呼ばなくていいっつーの!!)

その時だった、

「俺は!!まだ……負けてなーーーい!!」

「!!!!」

アマーティがスピードを上げて、俺に追いついてきたのだ。

(こいつ!スピードを上げる能力持ってるのかよ!!)

アマーティの足に魔法が発動しているのが見えた。

「負けん!!俺様は最強だー!!!」

「……っ負けるわけにはいかねーんだよ!!」

俺は自分の足を見た。まだ、動けることを確認した俺は……

(ふぅ……久々に使うか!!)

さらに足に力を込めた。それは、黒夜叉の時に使っていた能力……

『黒迅颯(こくじんそう)』

足にあった電気が今度は黒く染まり、黒い竜巻のようなものが足の周りに現れた。その竜巻がまとまり、足裏にピッタリとくっついた。その次の瞬間、

ブワッ!!!

「くっ……!!……何だと?!」

前へとんでもない速さで進んだ。

一気にアマーティとの距離が離れた。

そして……


俺の体がゴールテープに触れた。


「な、な、なんとー!!最下位からの速すぎるスピードで1位を勝ち取ったー!!!」

「わぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

大歓声が響いた。俺は空を見上げて、そして、拳を天に掲げた。

「ナイスー!!!」

「流石だぜー!!零!」

「やるじゃん!!!如月!!」

チームのみんなが走ってきて、喜んでくれた。

「れいちゃん!」

「!!龍牙!」

走ってきた龍牙に俺はニヤリと笑った。龍牙が驚いた顔をした。その後、納得したように笑うと…その顔で何をするのか分かったかのように

「「よっしゃぁぁぁぁぁぁあああああ!!」」

雄叫びを上げまくった。


「あー……いってー」

俺の足がズキズキと痛みを伴った。

「あそこで『黒迅颯』を使うからだろーほらー代償が怒ってるじゃんかー」

俺の足が黒く染まった。『黒迅颯』はとんでもないスピードを出すことができるが、その代償に足が真っ暗に染まり、激痛がくるのだ。だから、普段はあまり使わない。ただ、勝ちたくて仕方がなかった俺は、なりふり構わず使った。

「いいだろー勝ったんだからー」

「全く……あ」

「ん?」

龍牙が見ている方向を見ると…

「あれは……アマーティ?」

「アマーティだな」

アマーティが立っていた。すごくイラついているようだった。

「貴様……何故だ!!何故貴様が勝つ?!」

「さあなーお前が弱いからじゃね?」

「ふ、ふざけるなー!!下民のくせに!!」

怒りに染まった顔をして、俺を睨んできた。

「はぁーとにかく…俺が勝ったんだから、くだらねえことはすんな!あと、人の勝ちを決めつけんな!」

「くっ……」

悔しそうに俺を睨んでくる。すると……

「まーた、何してんのさー」

「日向!」

日向がひょっこり姿を現した。

「全くー事あるごとになんか起こすよねー」

呆れたような表情で俺たちにそんなことを言ってきた。

「いやいや、何言ってんの?俺らが起こしてんじゃなくて、こいつが起こしてんだから」

アマーティのことを言うと……

「お、俺様は何もしていない!!」

「……はぁ?!」

突然、自分は何もしてない宣言をしてきやがった。

「いや、お前が婚約者にひでーことしてるからだろ?」

「していない!!断じてな!!」

「こいつ……」

「れいちゃん…落ち着いてードウドウ」

アマーティを一回ぶん殴ってやろうかと思ったが、龍牙に止められてしまった。

(日向の目の前だから、自分は無実だって言いやがる……こいつ…完全に狙ってやがる)

俺はさらにイライラした。自分の妹に良い人だと思われようとしてるのが気持ち悪くて仕方がなかった。

「はぁ……何でもいいけれど、みんなも待ってるから戻るよー」

日向が俺たちに戻るようにそう言うと帰って行った。

「俺らも行くか…」

「ああ」

日向の後を追おうとした。その時、俺はアマーティに近づくとこう言った。


「あんまり日向の前でいい格好しようとしない方がいいぜ?お前の思惑全部バレてるから」


「!!!!」

アマーティがびっくりした顔をしていた。

(バレてないって思ってたのかよ……バカじゃね?)

俺は心の中でそう思いながら、歩いて行った。

アマーティは呆然としたままだった。


「お疲れ、零」

「おーっす」

「いやーさすがだなー」

みんなが口々に俺を褒めてくれた。ちょっとだけ頑張って良かったと思った。

「まあ、結局優勝できなかったけれどなー」

龍牙が残念そうに言った。

「他のチームが強かったからなーまあ、しゃあないしゃあない」

「そうだよなー……はぁ……」

ちょっとしょんぼりしているようだった。

「ま、来年に賭けよう」

「来年はみんな同じクラスだったらいいなー」

蓮斗が嬉しそうにそう言った。

「そうだねーみんな同じだったら、めっちゃ楽しいだろうなー」

「そう願おうぜー!!」

「ああ!よし!帰ろー」

みんなで楽しく帰宅した。


◾️???? 視点

「もうすぐ、あの時期か……」

空を見上げてそう呟いた。

「そうですわね…私たちの力を世の中、そして、カルムたちに見せつけることが出来ますわ!」

「ふん!油断はできないが……我らが勝つことは確定だろう」

「のんびりやろーよー」

とある部屋に4人の人物が集まっていた。

「で、私たちを集めた理由は?」

「ああ、今回の大会…あの草薙学園が強いカルムを入学させたと聞いてな、皆はどうするのか聞こうと思って、集まってもらった。」

「へぇー強いカルムねー……ふふふ…いじめがいがあって面白そうじゃなーい?」

「ふん!どうでもいいな!強かろうと弱かろうと我らよりも強いものなどいないのだからな!」

「………どうでもいーい」

「そうか……まあ、勝つのは我らだろう…」

「そうよ!……ってそれだけ?なら、帰らせてもらうわ」

「ふん!我は筋トレがあるのでな!失礼する!」

「………じゃーねー」

その部屋から3人が出て行った。


1人残った男は、また、空を見上げた。

「草薙学園……一体どんな強い奴がきたのやら……クックック……楽しみだ!!」


「草薙学園!!どれほどの人間が殺されるのか………クックックッ…あーっはっはっはっはっはっ……!!」


※あとがき

日向です!!

リレーが白熱してたなー

全く…れい兄は相変わらず勝負ごとに必死なんだから!!


え?勝負に勝つことだけじゃなかった?えっと……じゃあ、何が目的だったの?


次回、俺、学園対抗戦出場!!恐ろしい敵たち!

お楽しみに!!


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