第28話 クラム活発化2 暴走

「はぁー、長いなーこの戦闘訓練」

「仕方ないでしょ…みんなで総当たり戦やってるんだし…」

「はぁー」

俺と日向は日陰で座っていた。

「なぁ、2戦目は誰だっけ?」

「あー確か、委員長だったようなー気がする」

「あーあのメガネくんか」

俺たちのクラスには、メガネくん別名委員長がいるんだが、1人で何やらぶつぶつ言っているちょっと変わった子で、ぶつぶつ言っているのが怖すぎて、みんな近寄り難い存在となっている。

「あの、メガネくんは強いんかな?」

「どうだろう…戦ったことないから分かんない」

「だよなー、まあ、負けることになると思うが…」

「負ける気満々じゃん…はぁ、まあ、いいけれど…」

俺は楽して生きたいため、この2戦目は負けようと思っていた。


「………れい兄?」

「………何だ?」

「うん……あのさ……」

「おう…」

「負けるの意味知ってる?」

日向が怪訝そうに俺を見てきた。

「いやー、負けるつもりだったんだよ、さっきまで…そう、さっきまで……でもよ……」

「また、煽られたことにムカついて、最初に煽ってきた瞬間にフルボッコにしてたよね?ね?」

「…………はい、すみませんでした…」

そう、俺たちの対戦相手だったメガネくんは、今、地面に寝そべっている。

俺が瞬殺してしまったため、抵抗する暇もなかったはずだ。

まあ、煽ってきたことにムカついたので、速攻で終わらしてしまった。

「ちくしょー!!次こそは負ける!絶対!」

「「はぁー……ダメだこりゃ」」

日向と龍牙がやれやれみたいな感じで、俺を見ていた。


「…………」

「…………」

「…………」

「なぁ、れいちゃん」

「……れい兄」

「……な、何だ?」

すーっと大きく息を吸った2人。そして…


「「負けるって意味知ってるーーー???」」

「お、おう……し、知ってるぞ!」


「「なら!な・ん・で!決勝まで!来てるのさー!!!!!」」

そう、俺たちは今決勝を行おうとしていた。


「いやー、負けようと思ったのよ、でも、気づいたらなんか倒れてて」

「なんか倒れててじゃないでしょ、トラップとかで相手をこかすし、本気の技で瞬殺するし、マジで負ける気あるの?って感じなんだけれど…」

日向にジト目で見られた。

「ううう…こんなつもりじゃなかったんだよー!!!」

俺はガクッとなって、地面に膝をつけた。

「はぁ、こうなったら、勝つしかないねー」

「日向っち、こいつ後で締めよう」

「ひどくない?!龍牙!」

「「ひどくないひどくない」」

2人が揃って否定してきた。


決勝の相手は、何やら怪しそうな男子や女子だった。

普通の男子や女子なんだが、さっきから雰囲気が変だった。

「なんか、あいつらおかしくね?」

「確かに、雰囲気が怪しい感じがする、何だろう、いやーな予感がするんだけれど…」

「………」

「どうした?龍牙」

ずっと黙っている龍牙を不思議に思って俺は聞いた。

「いや……何でもない」

「……そうか」

気になったが、本人が何も言わないようなので、これ以上聞かないことにした。

「それでは、決勝戦!開始!」

その合図で、俺たちは戦闘を開始した。


「うーん…何だろう…やっぱりおかしいなこいつ」

対戦してみて、さらにおかしいことに気づいた。こいつら、さっきからカルムの能力を解放しているのに、攻撃をしてこないし、かわすのかと思ったら、かわさずにそのまま喰らっているし、喰らったら普通痛みで叫ぶ奴が多いのに、こいつらは叫ばないし、変な奴らだった。

それに、何だか目の焦点が合っていないような……?

その時だった。

「………あ…がぎ…ぐぐぐ…」

「は?」

相手の様子がさらにおかしくなった。3人ともピタリと動かなくなって、そして…

「アアアアアアアアアア!!!!!!!」

「ガアアアアアアアアアアア!!!!」

「グキャァァァァァァァアアアアア!!」

「なっ………!!嘘だろ!!」

「これは………」

「おいおい、待て待て…そんな……マジか…」

3人が姿を変えたのだ…それも、クラムの姿に…


突然のクラム出現にみんなが慌てた。

泣き出す者や、混乱して叫ぶ者、怯えて動けなくなっている者など、まだ、グラウンドにいる生徒が多かった。

「ねぇ、れい兄…これって……」

「ああ…間違いないだろう……間違いであって欲しかったが…」

「れいちゃん……」

「ふぅー先生方では対応出来ないだろう…クラムとはいえ、元生徒だからな…」

3人は最早、人の姿などしていなかった。

「どうする?倒す?でも、それをしたら…」

「ああ、確定で…死ぬだろうな…あいつらは…」

「ちっ…何でこんなことに…」

「ある意味、龍牙の感覚は当たってたのかもな……」

「……いや、それがよ、消えねえんだ感覚が」

「「え?」」

「俺の嫌な感覚は、だいたい起こったら消えるんだが…消えてない」

「それってつまり……」

「まだ、なんかあるってことだな…多分」

「おいおい…これ以上はいいってー!!」

「何が起こるかまでは分かんねえから断言出来ないが……」

「……とりあえず、そのことは後回しだ……先にこいつらを何とかする」

「「了解!!」」

俺たちは武器を構えた。


「くっそ!こいつらなんか強いぞ!!」

「今までのクラムとは違うって感じだね」

「感想言ってないで、止めなさいよー!!」

クラムの攻撃を避けまくって、何とか攻撃しているのだが、全くダメージが入っている気がしなかった。

「あー、ゲームみたいにHPとか分かんねぇーかなー」

「アホなこと言ってるわ……それより、なかなか傷つけられないね……元は人だと分かってるから倒しずらい…」

「……それな、こいつらのことあんまり知らねぇが、それでも元は人間だ、攻撃しずれぇ」

俺たちは武器で攻撃することに躊躇っていた。

「グガァァァァァァァァ!!!!」

叫び続けるクラム…元は人間…残酷すぎる

「でも…苦しいのは多分……」

「ああ…クラムになった人間の方だ…激痛と苦痛で死にそうになっているんだろう…」

「…楽にしてあげよ…倒したくないけれど…」

「ああ…」

俺たちは武器を構え直し、一瞬で消し去るため、大技の準備をした。


「ガァァァァァァァァァァァアアアア!!」

「悪いな…」


  「蒼刃絶光(そうじんぜっこう)!!!」

「幻紫飛焔(げんしひえん)!!!」

  「翠嵐天衝(すいらんてんしょう)!!!」


「「「合技!風水幻衝華(ふうすいげんしょうか)」」」


「グガァァァァァァァァ!!!」

「ヒギャァァァァァァ!!!!」

「アアアアアアアアアアアアアア!!!!」

3体のクラムが叫び声を上げた。

「くっ…すまねぇ…」

俺はクラムになった3人に謝罪した。倒すことを、命を消し去ることを許してほしい…と

「ガァァァ……あ、りが………と」

「!!!」

3体のクラムが光の粒子となって、消えていった。


「…………」

他の生徒がいなくなったこのグラウンドで、俺はただ立ち続けていた。

「れい兄…」

「これは……多分…」

「ああ、間違いないだろう…あの頃と同じことが起きている。」

「ということは…奴らが……」

「ああ、多分…な?」

俺は空を見た。そして……


「絶対に許さねぇ……響也、てめーを潰す!」


今回の戦闘訓練は終わった。


◾️????視点

「????様、ご報告が…」

「何だ…」

「あの実験体が倒されたようです。」

「そうか…やはり使えなかったか…」

「奴らは生きている…ということでしょうか…」

「多分な…ふん!まあいい…おい!ヴォイドを呼べ!」

「はっ!」

男がヴォイドを呼びつけた。

「参上いたしました。????様」

「ヴォイドよ、お主、前に奴とやり合ったそうだな」

「はい……確かに一戦交えてきました。」

「うむ、ならば、奴のところに向かい、今度こそ奴を殺せ」

「………かしこまりました。」

ヴォイドは男から離れていった。


「ふぅ…偉そうな男だ…まあいい、また、お前とやり合えるのだからな!!待っていろ!!」


『黒夜叉!!』


※あとがき

まさか、人がクラムに変わってしまうなんて…

一体何が起こっているのでしょう…

そして、????とは一体誰なのか、響也とは?


次回、会議

お楽しみにー

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