脇役として原作主人公をサポートしていたら依存された。

かませ犬S

プロローグ

 ありきたりな物語の導入を話そう。


 何の特徴もない平凡な男がある日、事故にあって死亡した。


 その死に方がなかなかに愉快だった事で、神に気に入られた男は異世界へと転生する運びになった。


 その世界は生前、男が読んでいた剣と魔法の異世界ファンタジーの世界。


 勇者である主人公が世界を滅ぼそうとする魔王軍と戦うよくある物語。


 創作の世界だからこそ、男はこの世界の主人公が誰か知っていた。


 主人公の半生を男は知っていた。


 知っているからこそ、助けたかった。


 主人公のこれからの人生が、困難の連続である事を男は知っていた。


 せめて少しでも主人公の冒険が楽になるように支えよう。


 主人公にはなれない。


 けど、主人公を支える脇役にはなれる。


 そんな思いで主人公を支えていたら、主人公に依存された。


 本来仲間になる筈の魔法使いも、戦士も、僧侶も、男がいれば必要ないと加わらず。


 本来の流れから大きくズレた物語に焦る、そんな俺のお話だ。
















 ───目が覚めると、知らない天井が目に入った。


 有名なセリフを口にしたい気分ではあったが、腹部に走る痛みに思わず断念。


「いててて」


 服を捲って痛みの箇所を確認すると、丁寧に巻かれた包帯に僅かではあるが血が滲んでいた。


 痛みはあるが命に関わるほど大きな傷ではない。素人判断ではあるが、これくらいの傷なら動いても問題ないだろう。


 俺には今、動かないといけない理由がある。


 痛みを我慢してでも、一歩一歩足を動かして動かないといけない重要な理由がある。


「やべ、漏れる」


 意識を下半身のある部分に集中し、まだだ、今じゃない!耐えるんだと!自身を励ましながら一歩一歩目的地へと進めていると、バンっと音を立てて扉が開いた。


「え?」

「え?」


 扉を開けて入ってきた者と目が合った。


 知らない人間ではない。むしろ知りすぎて困るくらい親密な関係だと言える。


 現れた人物の名前はシャーリー・リュミエール。聖剣に選ばれた勇者にして、この世界の主人公。彼女を中心に物語は動いていると言っても過言ではない。


「ノワール?」

「俺だな」


 俺と目が合ったシャーリーの青空のように澄んだ碧眼に涙が溜まっていく。


 震えた声で俺の名前を呼び、自身の頬をつねって夢じゃないか確認している姿に胸が痛んだ。彼女の様子から、心配させてしまったのだと察したからだ。


「ノワール!!!!」


 飛び込んできたシャーリーを優しく抱きしめる。腹部に痛みが走ったとか、尿意が限界を迎えそうとか、色々な問題はあるが今の場面では我慢するべきだ。


 今、漏れそうとか言ったらいい雰囲気が台無しである。男の意地で堪えろ俺。


「良かった!良かったよ!本当に良かった⋯⋯。ちゃんと生きてるよね?」

「生きているから安心してくれ」


 俺の背中に手を回し、シャーリーが俺を抱きしめる。それはまるで、俺を逃がさないように拘束しているようで⋯⋯。


「ボクを庇ってノワールが剣を受けた時は生きた心地がしなかったんだよ!もう同じような真似はしないで!ボクはノワールがいないと生きている意味がないんだ!ずっとボクの傍にいてよ!ノワール!」



 ───どうして、こうなったんだろうな。 

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