第1話 美食家殺人事件.11

「……かくして、美食家殺人事件は、何ともすっきりしないまま幕を閉じたのであった、と」


 呟いた言葉を日記に書き留め、書き間違いがないか二、三度確認した後に日記帳を閉じる。

大きくひとつ伸びをしてから、机に頬杖をついた。


 この二日間いろいろなことがあった。

初めての社交、未知の美食、殺人事件、謎の手紙、そして……。


 脳裏に帰路のアーロンさんの顔が浮かぶ。

あの時のアーロンさんは何かを思い出していた、と思う。


 でも、何を?


 アーロンさんが私を引き取ったのはほんのひと月前だ。

懐かしむほどの思い出など、二人の間にはない。


「ふぁ……」


 欠伸が漏れ出て、口元を手で抑える。

とにかく怒涛の二日間だったのだ。

それに今朝も早くに起こされたせいで、疲れが溜まっている。


「また明日考えようかな……」


 そう言って傍らのベッドに飛び込み、私は目を瞑ったのだった……。


✼••┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈••✼


美食家殺人事件 fin.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る