第27話 兄の後悔と反省の言葉に妹は許さない

ソフィアは子供が部屋に入って来たときから目で追って観察するように見ていた。リアムとトーマスが最初に兄に駆け寄って行った時は悲しかった。


いつも遊んでくれる兄の頬が赤く腫れて、悲しそうな気配を感じ取って可哀想に思えて兄に駆け寄ったのでしょうけど……母親として寂しく悔しい気持ちになる。


「お兄様はあの人と激しく愛し合っていたみたいですけど本当に大丈夫ですか?」

「さっき見てた通りマリアとは別れた。これからはする」


ダニエルはマリアと別れたようですが、ソフィアの怒りは依然として変わらなかった。兄と子供が泣きながら抱き合った。でもこれで全て解決して事態が収束するなんてあり得ない。


お涙頂戴といった感情で済むのか? いや、許せる問題じゃない。


「努力しないと忘れられないのですか?」


マリアの事を忘れるのに努力するだと? なんだそれは? ふざけるのもいい加減にしろ。兄の顔を見ていると二人は心で繋がっている気がする。


「ソフィア子供たちもいるんだぞ? 変なことを言うなよ」

「恥ずかしい事をしていたのはお兄様でしょう。もう怒りました! 完全にあの人の事を忘れるまで子供たちと会わせません!」


マリアという『未開の地を冒険』して、全身が快感を覚えたダニエルの身体はまだ未練があるように思える。その証拠に何となく寂しそうな様子で、兄とマリアを強引に別れさせた自分が悪いようにソフィアは感じた。


「それだけは許してくれ。正直に言うとマリアの事は一生忘れられない私のだ」

「まあ無理もないでしょう。お兄様の初体験の相手で新しい快感の喜びの世界を教えてくれた人ですからね」


夫の不倫相手と兄が付き合っていたなんて墓場まで持って行く話ですが、兄を繋ぎとめたいマリアが勢いあまって白日のもとに晒してしまった。おかげでこの兄と妹の関係は一生不幸な運命を背負わされる。


「もう嘘はつきたくないからソフィアに怒られることを覚悟で話した。でもソフィアとリアムとトーマスを捨ててまでマリアと続ける気はない」

「お兄様の言葉を返すようですが、あの人のことをお兄様が忘れられないのと同じで今は何度謝罪されても許せません!」


そう考えると追い詰められたマリアの最後の悪あがきは成功したと言えるかもしれない。本当か嘘かわからないけどダニエルは罪悪感があったと言った。


兄は仲直りしたいみたいだけど、自分が妹から嫌われてるってなぜ気がつかないのか?


「愛するソフィアをこんなに苦しめて神経が張り裂けそうだよ」

「それならもっと早く別れてくださいよ」


あまりの辛さに心が壊れてしまいそうだと兄は言うが、妹の心の傷が治ることはない。マリアと離ればなれになって被害者面をするような兄に妹は呆れたような表情になる。


「何度も思ったよ。だけどマリアの身体が目の前にあると反応して……私はどうしようもない男だよ」

「理解できません。精神が弱すぎですよ? お兄様は理性的な判断ができる人だと信じていたのに……」


マリアも無傷でスッキリしないし、どう考えたって反省してないような事を言う兄に妹は不愉快な気分になる。理性の欠落した猿はまたすぐ誰にでも発情しますから兄は駄目かもしれない。

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