第5話 妹を溺愛する兄が夫に吠える
「だからリアムはあなたの子供です!」
「はぁーっ、ソフィア過去に『不倫していた』と正直に言ったらどうなんだ?」
声高に訴えるソフィアに、やれやれとため息をついてジャックが話し出す。君は自分以外に交際相手がいたんじゃないのか? 今は互いのご両親も来ているし過ちを認めて話してみろと言う。
「何度も申しあげますが神に誓ってそのような事はございません!」
「じゃあ検査を受けてくれよ」
「それでは、私もあなたに何かしら罰を与えますからね」
「どうしてそうなるんだ?」
「検査しないなら離婚に慰謝料だとおっしゃったのはあなたのほうでしょう?」
二人の激しい口論が始まった。夫婦ではなく今は憎い敵と思って焼け付くような視線を向けて、非難の調子で舌戦を展開し次第にエスカレートする。和気あいあいたる円満な部分しか見たことがない両親は少し面食らってしまった。
離婚に慰謝料? ソフィアから出てくる言葉に、考えていたよりも厄介な問題になっていると不安で胸の苦痛が増していく。双方の両親も確かに次男のリアムはジャックに似てないと思っていたが、そこまで揉める結果になってしまっているのかという思いもある。
「黙って聞いていれば勝手なことを言いやがる。チャーミングな清純派のソフィアが家庭を裏切るわけないだろう!」
ソフィアは自分の子供ではなく不倫相手の子供を育てているのではないか? きつい言葉を投げかけてくるジャックに、荒れ狂う獣のように叫んだのはソフィアの兄で家督を継いで現伯爵家当主のダニエルだった。
いまだに独身のダニエルはソフィアの事を幼少期から、宝物のように大切に扱い可愛がっている。その妹が不貞を働いた妻と言われれば、神経が張り裂けそうになるくらい怒りを爆発させるのは当然でした。
7歳年上のダニエルは基本は温厚で礼儀正しい青年で、ジャックにも引けを取らない見栄えがする顔立ちの魅力的な男性である。すれ違いざまにドキッとした女性が振り向いて熱い視線を送られることは日常的な光景。でもなぜか一生独身主義を貫くと宣言している変人でもあるのだ。
「お兄ちゃん!?」
「お前みたいな男と妹を結婚させた事は間違いだったようだ」
「相変わらず、頭のおかしい兄貴だな」
ダニエルが超シスコンの兄だという事はジャックは知っているので、呆れている気持ちがはっきりと出ている。とは言うもののダニエルの存在は、ソフィアには心強く感じられた。
目に入れても痛くないほど可愛がられ結婚前に実家に住んでいた時は、いつでもずっと付きまとわれて暑苦しいだけの兄でしたが、『自分の命より大事な妹を傷つける奴は誰であれ許さない!』と毎日うるさい程聞かされていたので、私のためにしっかり頑張って守れと妹は胸中で応援していた。
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