このお作品のタイトル、『mourning right(モーニングライト)』──
「喪に服する権利」
「喪に服する朝」
「朝を迎える権利」
「朝の光」
これは作者さまの解説から引用させて頂きましたが、この物語の題には、深く重い四つの“光”が込められています。誰かの死に触れた者だけが立ち会うことを許される、曖昧で、痛みを孕んだ境界線。そのすべてを、ひとつの静かな語りが貫いておられます。
“死を掌握する”という能力が意味するのは、安易な蘇生でも、万能の力でもない。
それはむしろ、「死にゆく者に対して、どこまで祈ることが許されるのか」という、冷酷なまでの線引きです。
本作は、その線の上に座り込んでいる者たちの物語。
死を抱えて立ち止まったままの者、死を送ることでしか生きていけない者。
そして、死を選べなかった者たち——繋留者たち。
言葉の選び方に、研ぎ澄まされた静寂があり、説明ではなく“現象”として提示される出来事のひとつひとつが、感情のまえに“感覚”として迫ってきます。
霧の中を歩くような読書体験。ページをめくるたび、朝が近づいてくるのではなく、夜が深まっていくように感じます。
けれど、お作品の中で一つの死者のエピソードを読み終えた時、指先に光の余韻が残っているような、そんな感覚を覚えました。
朝は救いではない。
朝は与えられるものではない。
それでも、
「誰かが朝を迎える権利を持っていていい」
そう思わせてくれる物語でした。
まだ連載途中のこの物語が、生死のあわいの中でどう光を迎えるのか──続きがとても楽しみなお作品です。