バレンタインデーの朝、幼馴染が
天石蓮
コレ、あげる
冷たい風が吹く朝、俺が玄関から出るとちょうど、向かいの家の玄関の扉も開き、ぐるぐるとマフラーを巻いた少女が出てきた。
その少女は俺の幼馴染だ。ちなみに同じ高校に通っている。
「おー、おはよ」
俺が挨拶すると、「おはよ」と小さな声で返してくれた。
小学生の頃は一緒に仲良く登校していたが、中学の頃に「恥ずかしいし、色々言われるからヤダ」と言われ、一緒に登校しなくなった。
なので、ササッと行こうとすると「ちょっと待って」と呼び止められる。
「なんだよ」
「コレ、あげる」
幼馴染はカバンから手のひらサイズの長方形の物を出して、俺に渡してきた。
それは、赤チェック柄の包装用紙に包まれたなにか。
俺は今日がバレンタインだと気づく。
「え……ま、まさか」
「じゃあね」
幼馴染はニヤリと笑うと、さっさと歩いて行ってしまう。
俺はしばらく、ほわほわした気分で手の中の物を見つめていた。
教室に入ると、俺の前の席の男子が俺の顔をじっと見てきた。
「どうしたんだよ、お前。めっちゃ嬉しそうじゃん」
「ふっふっふ……幼馴染から、バレンタインチョコをもらったんだ!」
「え、すげー! どんなチョコ? 見せろよ〜」
俺はニマニマしながらカバンから取り出し、包装用紙を丁寧に剥いでいく。
そこから出てきたのは……。
「……ようかん?」
チョコレートではなく、和菓子の羊羹が顔を出していた。
前の席の男子が「ブハッ」と吹き出して、大笑いする。
「た、たしかに茶色くて甘いお菓子だけど……フハハッ! 羊羹かよ! お前の幼馴染、超面白いな!」
俺はプルプル震えていた。
「アイツ……俺のことからかったなぁ!!」
バレンタインデーの朝、幼馴染が 天石蓮 @56komatuna
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