第12話 隠蔽スキル
俺には目もくれず、一直線にスズカを狙ったハリームを、スズカは軽くあしらうようにひと振りで颯爽と切り込んだ。
ハリームのHPは一瞬にして、レッドゾーンを通り越してゼロとなり、やがて、身体は光の粒子になり消え去った。
そして、その刹那、呆然とその光景を見つめる俺の前にレベルアップとかかれたコマンドが出現した。
これで、俺のレベルは3から5に一気に上がった。
無論、これは俺が勝利したわけではないのだが、パーティである以上、スズカの獲得経験値が自動的に割り振られたのだ。
俺が呆気にとられていると、シルバも顎に手をやりながら考え込むような表情を浮かべる。
そして、驚きを隠せない表情で呟く。
「すみませんが、貴方のレベルはどのくらいだったのですか?」
「そりゃあ、実践ほぼ皆無なんだから、3に決まってるだろ。まあ、今ので5に上がったけどな」
「3、ですか。かなり弱いですね。いえ、弱すぎます」
いや、そんなもの解ってるんだから二度も言うなよ。喧嘩売ってんの?
「いえ、決してそのような言動ではありません。ただ単純に驚いているんですよ。先程の光景に」
そう言うと、すぐにシルバはまた考え込むように黙ってしまう。
だから、なんだよ。さっきの俺の空気状態を拡散したいの?
しばらくの沈黙の後、じっと考え込んでいたスズカが恐る恐るといった体で質問する。
「もしかして……。ねえ、アンタ、スキル見てみなさいよ」
「す、スキル……? この世界には、スキルがあんの?」
スキルってアレだろ。自分の能力だよな。
スキルって、俺、ぼっちスキルしか持ってないし。
俺は言われるがままに、自身のメニューコマンドを指で操作し、表示された項目を目で追う。
そして、そのなかから自身のステータス表示ボタンを押してみる。
ネーム:渡月向日
レベル:5
HP:120
スキル:剣術スキル10
隠蔽スキル800
探索スキル500
見たところ、スキル名が羅列されており、その横に二桁三桁の数字があるのみだ。
剣術は、剣による攻撃スキルだろうし、探索スキルって探す能力? で、隠蔽スキルってなに? さっぱり解らないんだけど。
しかも、隠蔽スキルだけ800もあるぞ。
「……なんか、スキル名と数字が並んでいるだけだぞ? この数字って、そのスキルの強さか何かなの?」
「そうよ。その数字はスキルの強さ、レベルを示しているわ。スキルは様々な種類があって、攻撃スキルだけでも、剣・弓・槍というように三種類。その他スキルは山ほどあるの。レベルは上限1000まで。まあ、そこまである人なんてこの世にいないけどね」
「上限1000レベ、ねえ……。ちょっと聞くけど、800レベってどんくらい強いの」
「800? この世界に数多あるギルドのうち、最大規模を誇る五大ギルドのギルドのトップでも、持っていて500から600ね。アタシの剣術スキルは、500ちょっとあるわ」
ふうん。って、強くて500から600なんですよね。俺の隠蔽スキル、800もあるんですが……。どゆこと?
「まあ、アンタみたいなレベル3程度のスキル値なんてふた桁程度よ。800なんてあるわけないわ」
いや、800あるんだけど。これ、見間違いかな……?
「それで、聞くけど、アンタの隠蔽スキルはどのくらいあるのよ。200ぐらい?」
「それが……、隠蔽スキル800ってあるんだけど」
恐る恐る呟く。
すると、スズカは少々戦慄した表情を浮かべる。それに続き、シルバも考え込むような表情を浮かべる。
「は、800!?」
「驚きですね。僕の知る限り、800ものレベルの数字を保持した人物とお目にかかったことがありませんね」
スズカの驚き声の後に、シルバも驚きながら呟く。
しかし、すぐにスズカはニヤリと不敵の笑みを浮かべ、シルバも事態を理解したかの如く、笑みを浮かべながら肩をすくめた。
「やっぱりね。これほどまでの高さだとは思わなかったけど、これでさっきの現象について合点がいったわ」
「ええ、驚くべきことに、ですね」
だから、なんなんだよ。ふたりとも解ったような顔しやがって、俺だけハブるなよ。
中三の時に友達できなくて、修学旅行の班決めでハブられて、結局ホームルームの時間中ずっとそのことに気づかれずに班が決定しちゃったときのことを思い出しちゃったじゃないか。
まあ、その後、気づいた教師が余っていたところに無理やり押し込んだんだがな。
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