第7話 一難去って、また一難

 そうして、なんとか紆余曲折を経て事情を話したところ、やや不満気味にも副リーダー閣下はコクりと頷いた。


「ふーん。アンタ曰く、『キバシシ』が保護 動物モンスターに指定されていることを知らずに、空腹の余り倒してしまった、ということね。つまり、不慮の事故であって、無実である。そう言いたいのね?」


「……は、はい。そうです」


 なんかこの人に睨まれると、萎縮しちゃう。今の返事だって、語尾が消えてるし。

 あれ? 違うな。初対面の人なら誰でもそうだわ。

 俺、人見知りなんだよ。心が汚れていない。つまり、ピュアなんだよ。清楚系キャラで売り出してるんだよ。うわ、価値高え。俺こそ、保護人間、または人間国宝として祀るべきだろ。いや、マジで。


「そんなこと、あるわけないでしょ」


 俺をジト目で一瞥しながらそう言うと、副リーダー閣下もといスズカはさらに興奮しながら続ける。


「馬鹿なこと言ってないで、謝罪とか弁明の言葉もないわけ? もういいわ。刑に服してもらうまでよ!」


「刑、といいますと……?」


「刑は刑。罰は罰。そうねえ……、規定によると、牢獄行きね。ハイ決定! 被告人は禁固3年。以上!」


「……えっ?」


 ちょっと待って。序盤から、俺、牢獄行きですか!?

 こんなMMO見たことない。確かに新感覚だわ! でも、こんなの望んでないし。

 ええと。まさか、これが属に言う冤罪でしょうか。

 ちょっと、弁護士! 弁護士呼んできて!




 しかし、ここは異世界。日本国憲法は通じないようで、弁護士も登場しない。

 つまり、決定事項。

 権力を持つ者こそが正義、というわけだ。理不尽極まりない。


「さあ、この者を早く牢獄へ連れて行きなさい」


 スズカがそう告げると、近くにいたガタイのよい男ふたりが俺の肩を掴み、連行しようとする。

 もはや、これまで、か。

 思えば、俺の人生って理不尽の塊だったな。

さらば、友よ。あ、よく考えたら、俺友達いねえわ。このセリフ、使えない。

 俺が半ば諦め、そのまま連れて行かれようとした刹那、救世主が。


「お待ちください、副リーダー閣下。この者は、密猟を目的としていたわけではありません。ならば、少しは情状酌量の余地があるのではないでしょうか」


 そう言って、スズカに意見を述べたのは先程の優男だった。

 あ、なんかごめん。敵とか言っちゃって……。ホントはいい奴だったんだな。


「解ったわ。言われてみれば、そうね。情状酌量の余地はあるわ――」


 優男の意見に耳を傾け、うんうんと納得したように頷くスズカ。

 じゃあ、無罪ってことですよね。俺、帰ってダラダラして過ごしたいんだけど。


「――罰金刑に処すわ! 10万ゴールドで手を打ちましょう」


 ゴールド? 何それ、美味しいの?

 まあ、多分この世界における通貨のことであろう。

 ゲームで、この手の通貨はよく見かけられるからな。


「アンタ、まさか持ってないとか言うんじゃないでしょうね?」


 なにいってんスカ。10万ゴールドですよね。ええ、と。10万、10万……


「……持ってない」 

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