ルルドの国
流民
序章
ルルドの国 ~序章~
その国の国土は広い。しかし、それ程肥沃な土地ではなかった。国土の半分くらいは人が住める土地ではあったが、もう半分は標高の高い山や森林に覆われた土地だった。その国は殆ど資源が無く、その国の人間が金を稼ごうとする時は、他国に我が身を売る。そう、傭兵として国外に行く事で金を稼ぎ、その国の経済を成り立たせていた。その国の傭兵は強く、各国ではその国の傭兵を雇えばどんなに劣勢でも勝負を互角以上に持ち込むことが出来る。それ程、その国の傭兵は強かった。その強さの秘密の一つは、その国の傭兵たちが身に着けている武器や防具にあった。白銀に輝く金属『ミスリル』と呼ばれる金属で出来た装備で、それは魔法の金属とも言われ、あらゆる魔術を防ぎ、少しくらいの攻撃なら跳ね返してしまうほどの頑強さがあった。また、ミスリルの装備で身を整えた傭兵達は、その練度、各々の技量、そのどれもが素晴らしい物であった。そして、もう一つの理由。それはその屈強な傭兵達を率いた将達によってその名前を世に知らしめることになる。
しかし、ある事件を切っ掛けに、イーリスは傭兵を国外に送る事を止め、自国を守る軍を持つようになる。今まで傭兵として国外に出ていた、傭兵達はそのままイーリスを守る国軍となり、その体制が整った時点で、イーリスは永世中立国となる。最初の頃こそ、イーリスに戦争を仕掛けてくる国も有ったが、それでも、イーリスの国軍の強さに敗退し、いずれイーリスに戦争を挑む国も無くなった。それに、イーリスにはミスリルは有るが、その産出量は多くなく、更に、それを加工する事は難しく、イーリスの王家がその技術を独占し、王国直轄の鍛冶工達にしかその製法は知られていなかった。イーリスが永世中立国として成り立ったもう一つの理由。それは、イーリス自体が程肥沃な土地ではなく、各国はイーリスにそれ程魅力を感じなかったのも有るのだろう。
傭兵達が活躍した時代から時は流れ、その国『イーリス王国』は、周りの国々の状況を別にすればイーリス自体は平和だった。
かつては、傭兵を率いて様々な国の戦争や紛争に参加していたイーリスだったが、今でも国軍は精強で、永世中立国として世に名前を知られ、ほぼ戦乱とは無関係な立場となっていた。また、永世中立国として成った頃とは違い、今ではイーリスに戦争を仕掛ける国も無く、永世中立国を国是にした、この一五年ほどはイーリスは平和が続いていた。
しかし、イーリス以外の国はどうだろうか? 決してそこは平和とは言えないような状態が続いていた。各国は入り乱れ戦い、裏切り裏切られ、大国は小国を飲み込み、様々な国が生まれては消える。そんな状態がもう二〇年以上も続いていた。
しかし、一五年続いたイーリスの平和も今終わりを告げようとしていた。
それはほかでもない、イーリス王国自体が、そのバランスを崩したのだ。そう、永世中立国として成っていたイーリスがなぜ、戦乱の舞台に乗り出したのか?
その決断を下した若き国王「リーゼロッテ・イーリス・オーフェンフィールド」その少女の物語……
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