5:バラクーダ戦、終結その2
「ソイツ等は、俺の
会議机の上にあぐらを掻いた、
「
ゲーム特区立学園
「そないな仕組み……やったんかいな? ……器用どすな」
体型が露わになった統括デザイナーを、値踏みする顔つきでみる
「いや、器用なのは、あなた方だろう。僕はまだ仕様説明もしとらんのだから。シラタキはその、ドヤ顔止めろ、―――あ、いや、止めて下さいませ」
ぱしぃぃぃん!
青年の横へ移動した女史が、彼の背中を叩いた。超、いい音。
「あ、あざーす! ……デザイン終わったら見てろこの野郎~……じゃあ、簡単に言う。どんなに強度が弱くても、壊れるそばから最速で、その境界を保持すれば理論上壊れない」
話がいつまでも進まないからだろう。青年の呪詛を、女史は
「アタシそれ、知ってる! 右足が沈む前に左足を出せば、太平洋も渡れちゃうヤツでしょう!?」
「うん、そう! 話早くていいね君達」
こうして、必要そうな情報は揃った。
小柄な少女は、ドヤ顔気味に、
少年がゲームパッドのボタンを押す。
ぼよよよよぉおおおん♪
ぷるんぷるんとした質感を想起させる効果音。
『カクトオ_プラグインのご利用、まことにありがとうございました。』
そして、次のキャラ選択画面が出ないまま、”カクトオ_プラグイン”は終了してしまった。
「うるせ! いらねっ!」
「けたけたっ……それ、
「そうなんですけど、この公式用の
公式プラグインアプリと化してしまった、”カクトオ_プラグイン”には、公式キャラたちのイラストが、自動的にインサートされるようだ。
先ほどの画面には、寝転がり、『ZZZ……』の文字を
「えー? こっちも、
「あてえは、ラクガキみてぇな、……このお顔、結構、……好きどすけどなあ」
なぜか、シラタキの平手打ちが再会される。
がしっ!
真剣白刃取りならぬ、真剣シラタキ取りが炸裂。
不敵に笑う統括デザイナー!
真っ赤になった女史が、違う手で
「おっふっ! やめ、苦しっ! やめて、……シラタキてめー! ……あぁぁ」
ぐっぐっぐっぐっ!
まるでこねられる挽き肉のように、指の間からはみ出す腹肉。
そこまで、きっちりと見てから、顔を”積層モニタ”へ戻す少年たち。
「そんなことよりよ、……もう格ゲー勝負は勝敗が付いたゼ? ってことは、さし当たって、バラクーダの分の
15度小首を傾げる筋骨隆々のイケメン。希にオーガの短髪な方なんて呼ばれたりもする。とうぜん、オーガのだらしない方なんて呼ばれているのはもう片方だ。
「そうどすなー。バラクーダはんは、……撤退の準備始めてますなあ」
とうとう最後の一体になった、バラクーダが操る、戦闘用ダミー。
その木目調の等身大デッサン人形そっくりなヤツ。
その胴体に、いつの間にか描かれていた円グラフ。
10%程度の少数派だったものが、急激に拡大する。
30%、50%、70%、90%……100%。
ピピピ、ビィーーーーーッ♪
―――ボガァァン!
NPC
その遅延信管と同じようなタイミングで、
円グラフではなく、自爆シーケンス
爆発の瞬間、
ドガン―――ごんっ、ごろろん。
なんか落ちたと、
草原に落ちた木製のタマゴ頭から、案内文がポップアップ表示された。
『こちらは、@■■VAL■■■AQU■DAです。
誠に勝手ながら、本日の業務を強制終了させていただきます。
・本日未完了の業務につきましては、再度お申し付けください。
本日は、バラクーダのご利用、まことにありがとうございました。
またのご利用をお待ちしております。』
「「「「「「「もう、いらん!」」」」」」」
その場の7名全員が声をそろえた。
「「「ふぅー!」」」
その直後、―――。
大きさ的には、
◇
―――
「「「「「「うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」
驚愕の光景に、一名以外後ずさる。
―――ガシャガシャ!
真っ白い壁から飛び出てきた、ボクセルタイプの
「「「わーーーっ!」」」
怖っわ! 気色悪っ! ギャァァァァァァァァ!
―――ガッシャラララーーーッ!
ギザギザした人型の輪郭は、足下から急激に崩れ落ちていく。
崩れ落ちながらも、会議机を避け、―――90°
―――ガシャララッ!
ドット絵は
ガッシャガッシャドガガシャララッ―――、パーーーンッ!
そして、
カランカランコロロロロン!
床に落ちるドット。
◇
「な、何よ!? いまのっ!? バラクーダの
「あはは、心配しなくていいよ。オカルトじゃないから。この隔絶されているはずの、
「……そういうことですか。仕掛けは判りました。それにしても、まさか、あんな”芸当”をするとは思いませんでしたが、さすがにバラクーダの名はダテじゃ無いですね」
何か判ったらしい女史が、
「この会議室、―――小型発令所の壁は戦闘フィールドと同じ、”構成ブロック”を使用しています。AR完全対応の”拡張”を実現するために、ブロックは随時補充されます。つまり―――」
「「「つまり?」」」
と息を呑む
「その補充経路を通って、物理的にアクセスして進入。そして、物理的に逃げていったというわけです」
「「「あー。そういう」」」
「結構、力業って言うか、スマートじゃないのね」
学生達は、納得したようだった。
「いいえ、
やはり、壁むこうの草原から、目を離さずに、
まーそうですねーと相槌を打ちながら女史が、
ゴココココン。カシンカシンカシカシン!
壁が会議室のサイズに戻っていく。
だが、
「あはは。これ、……なんかおもろいなあ」
カチャッ。
「けっこう、ハマるわね~」
ガチャッ。
「よっこらゼ」
カチャリ。
一つ一つ拾い上げ、開いた穴に置いていく。
「ここなら、シラタキにも見つからないと思ったのによっ!」
「いいから、……兄貴も手伝えよ」
スカーン。
「痛てーな!
振り向く顔の先には、巻き毛を揺らす、鬼神の顔。
その顔を目撃した少年の顔も、引きつろうというモノだ。
「―――よし、
「―――おう、兄貴。了解」
だだだだっ!
だだだだっ!
”
動作モーションが、そっくりで、失笑を買っているが、二人の息はぴったりで、程なく壁面は修復された。
「これですね。本日補充された”構成ブロック”は一個だけ」
「この
「はい。了解。ごめんなさい」
見るも無惨な兄の、意気消沈した姿。
◇
「はい、姉さん。紅茶」
それでも、まだ残っているハッシュドポテトをさがして、手が伸びる。手探りでつかんで、
「っふーーっ。よござんしたな、……泥棒猫―――やのうて、バラクーダはん……を追っ払うことができて」
「っふーーっ。そりゃどうも、っていうか、
さしあたっての、肩の荷が降りたと見える。
「
「バカ兄貴。そんなのどうでもいいから、アレどうにかしろよ」
バラクーダが走り去ったあとの、
まだ
「(ニャッ? ニャュユッ~?)」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチンッ!
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