5:バラクーダ戦、格ゲ少年の主張
「ちょっと! @仝〆VAL§ゞ⊇AQU∞DA! ボーナス査定に響きますよ!?」
特区運営管理者としての発令コードにも、応答しないのだ。
少しくらい脅かしたところで、言うことを聞くわけもない。
「興味を引かれないことには、……いっさい応答しまへんなあ」
「そもそも、命令系統の上位にいる
小柄な少女、
デッサン人形は、カタカタと打鍵音をさせて、次々と複雑なプログラム構文を記述していく。
「量子サーバー自体の保守管理は、彼女みたいな、
「
「
「彼女? さっきも言ってたけど、女の人なんだゼ?」
手元の操作へ意識を戻したのか、女史からの返答は無かった。
「なら、
「ばかか、俺様は努力した上で、
自慢か自虐か判らない事を、熱弁する
「は? 基本スペックからMAXな野郎が何言ってやがる?」
歯を剥き出しにして反論する、
「んだと? ヤケに突っかかってくれるゼ?」
ガタリ。パイプ椅子を近づける。
「やんのか!?」
ガタリ。パイプ椅子を近づけ、
「覚悟しろってんだゼ!」
ギシリ。掴みかからんと睨み合う、一触即発の空気。
「ちょっと、なに本気で喧嘩して……!?」
「5先!」
「いーや、10先だ!」
両手を突き返す、努力派イケメンらしい、
ちなみに、”~
「よし、コレ終わったら、速攻で、うちの下宿のトグルオーガ筐体セットアップするぞ?」
「オッケー! 朝までには終わらせるゼ!?」
「……アンタ達、明日は月曜よ?」
呆れ顔で、指摘する
なに!? めんどくせえ!
じゃあ、仕方ねえ、回線周りは俺がやるゼ。
おう、じゃあ、……水曜!
了解! 水曜に10先だゼ。
この、NPC達が撃破されかねない緊迫した状況にも関わらず、ゲーム勝負の心配をしている少年達。
ビビビビビュイッ♪
小鳥が、強く鳴きながら
「いでっ! 悪い悪かった! 真面目にやる!」
例によって痛くは無いのだが、特区習慣的に反応してしまうのだ。
「そうだな、コウベ達も俺たちの仲間だしな。……あの輪っか、一回転すると、一列分終わりみたいだゼ?」
ぱりん。割れるような音を立てる、デッサン人形を取り囲む光輪。その最下層の一列が光の粒子になって消えた。
「ほんと、消えたわね」
最上段は、デッサン人形が何かをプログラム中の、横に長い
その入力が済むと即座に実行され、プログラムは視覚化されるようだ。
デッサン人形を取り囲む輪になって、積み重なっていく。
新しい
全ての
キャラ選択画面の残り
ぱりんぱりんぱりんぱりんぱりん!
ぱりんぱりんぱりんぱりんぱりん!
一気に、処理が進み、舞い上がる光の粒子。
その煌めきは、デッサン人形の眼の前に収束する。
その蛍光グリーンの光は、六角形のパネルになった。
『入出力動作チェック用、アドオンプログラム
”プレイヤーサイド:チェックサム”』
ポップアップするダイアログ。
『●◎レギュレーションチェッカー』
六角形自体に描かれたロゴ。
「こっちにも、何か出たゼ?」
その実行中の格ゲー画面。
『
>Qsh:./regchk◍
「止まっちまった? ……なんか、先方様謹製の、怪しいプログラムが、
「あら、それ、
驚いている、
「公式ツールがぁ混ざってるとぉー、実行用のアドレスがぁ必要になりますねぇー」
笹木顧問の表情が、
「なら、あてえの……名刺代わりのストレージアドレス……がありますよって……
笹木顧問が大口を開けて、VR設計師の美少女を、見つめている。
「大丈夫ですか? こちらで、ご用意できますが?」
その口調には、
「いいええ、管理者サイドの……
「
女史の口ぶりから、”実行可能なストレージアドレス”というのは、それなりに高価なモノだと推測できる。
「はい、どうも」
「ちょっと、もったいない気もしますがぁー、収益を考えるとぉ……一理ありますねぇー」
「「「あざーす!」」」
美少女に向かって、礼をする部員トリオ。
再び、マネキンの周囲を取り囲む光の輪。
それが処理され、反時計回りに一回転。
光の粒子となった光輪。
収束し、それは三角形となる。
「アレ、なにしてるの?」
マネキンが、ロボットダンスを踊る度に、光の輪が現れ、三角形のパネルと化していく。
「プログラムコードの実装仕様の検証と、入力処理の正当性を、可視化しとるようどすな?」
しゅるしゅるしゅるっ! ぺたぺたぺたり。
三角形が、回転しながら高速で、六角形にくっついていく。
「つまり、何だゼ?」
「あの、3角形の一つ一つが、実際の行動に対応した、正当性を表しとるようどすなあ」
六角形のパネルに、角度を付けてくっついた三角形。
繋がるように、もう一枚の三角形がくっついたことで、完成系がイメージできる。
「それが集まってぇー、球になったらぁ”OK”ってぇ事みたいねぇー」
「コレは、
「おい、
「遅かれ早かれ、”
「―――じゃあ、
「
「
素っ気ない返事に、
「ああ、違います違います。公式ツールをプログラムの一部に採用して、実行できる、……つまり、
最後に、ぎこちない笑みまで浮かべて居る。
女史は、
実際、
大虎、
「なんだ。よかった」
「マジで、願ったり叶ったりだったようだゼ?」
「おう、儲けたな!」
顔を寄せヒソヒソと、少年達は、悪巧みに忙しい。
「それはそうと、先生? この
「―――
「はい、俺はぜんぜんオッケーです。後は、トグルオーガたちとミミコフとコウベが良けりゃ―――」
ビビビッ♪
再びの、小指。
「痛って! 小鳥はイヤなのか?」
壁の向こうから返答が届く。
「小鳥は、自分の出番がなくて、ムカつくってさ!」
遠くから、イヒヒヒッと
気絶中で確認できないが、ミミコフに至っては、
「命がけの勝負に観客が居ないのも、寂しいかもな―――よし、ラージケルタ、どうだ? この勝負、配信してもいいか?」
■エー? ドウ言ウ事ー?_
「簡単に言うと、ゲーム画面を町中のモニタに映して、その分だけインカムが増えるって事だゼ?」
■インカム大事。了承セリ_
「音声入力、
「もー、こーなったらぁー、伝説のーバラクーダさんとのぉ勝負に勝ってー、
「あてえも、コウベの命がけの宣伝に、賭けますえ」
ゴツくて白い、開発者用の腕時計型デバイス。
その表示面から、会議机の上に、指先で摘まれた光を落とす。
ゴトンゴトンゴトトトン!
「さっき、先生と一緒に……コンビニで
AR対応の会議机の上に、ノイズ混じりで出現した、NPC達のおやつ。
これは
美少女NPCが壁面奥から、駆け寄ってくる。
「ほんとか!? おやつ食べ放題って!?」
小振りな額を
設計者に対し、随分な生意気さだが、その、外から見ても分かる”適当なサジ加減”は、微笑ましくもあり、既に人気要素の一つとなっていた。
「コウベ! ……気張って生き残……りなはれやー!」
その様子は、
拳聖:にゃんばるくいなの一定数のファンが同時に拡散したことによって、
既に、NPC
壁に面した
天井にも、巨大な文字チャット画面が開かれ、流れたコメントをログしていく。
盛り上がっていく会議室。
蛍光グリーンのパネルが組み上がり、球状になった
”プレイヤーサイド:
『●◎レギュレーションチェッカー』が起動した。
停止していた”カクトオ_プラグイン”が動き出す。
チャキーン♪
公式ツールマークが光って消える。
『なんだこれ?』『こんな公式ツールの配信予定無かったわよね?』
にわかに沸き立つ、観客達のコメント。
『どこから落とすんだよ?』『スタバのオープンソース用ストレージに来てるってよ!』『急げ!』『回線パンクしたら消されかねん』『落とした!』『俺も!』
再開されたキャラ選択画面のカウントダウン。
デッサン人形は、足の長い戦闘用ダミーを選択した。
「そういや、
「まあ、そうだな?」
「そん時、俺たちの体の扱いってどうなるんだぜ? コントローラーとかアケコンで操作するのは俺たちだろ?」
「まあ、そうだな?」
「じゃ、俺たちに操作されるのは?
「最初が、たまたま、コントロールをとりやすかったコウベが居たから、うまくいったけど、どういう扱いになるかは、実際まだよく……分からねえ」
「たぶん、
「要するに、それって、コミュニケーションツールの役割を果たす訳よね? そしたら、対戦用のパネルを挟んで、VR空間の中で、ふつうにゲームをヤったらいいんじゃないの?」
「そりゃ、一理あるゼ? だけどよ―――ガシーン!」
「そうだな、一理あるな。けど―――ガシーン!」
少年達は腕をクロスさせ、―――。
「「―――格ゲーはコミュニケーションツールなんかじゃ無えー! 知識と実践と意地の
少年たちの暑苦しい主張が、会議室に反響した。
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