6:コウベ 対 MΘNΘCERΘS その8
青い獣の肩が沈み込む。
曲がる前足の放電が、複雑なパターンを描く。
背後のツノを
獣の尻が沈み込み、背骨がバネのようにギギギとたわむ。
重複した
持ち上げられた首は狙いを付け、”ツノ”は水平になった。
それは、
ポポポポポッ。
少女の胸元に咲く、
ズドンンンンンンンンンン!
青い雷が、大気を熱し、膨張させ、身の
ヴァリヴァリヴァリッ!
荒れ狂う極太の
その先端、青黒い
なにもない空中へ、
ドガドガドガガ! ヴァリヴァリヴァリリッ!
ジグザグの軌道を描いて、到達する矢の先端。
高速で接近する右前足。
少女は、左
左肩を反らせる動きのまま、極至近距離の右ショートアッパーを放つ。
チィーーーーーーーッ、炸薬は炸裂しない。遅延信管の作動を
それでも、出かりの右前足をショートアッパーで迎撃できた。
ジジジッヴァリバリッ、ズドン!
そして、即座に、右
飛び退くと同時に、振り上げていた右手を、裏拳気味に、打ち下ろし―――ピピッ♪
シュドドドドドドドドドッ!
オレンジ色の
青黒く輝く、ツノを突き出し、その大電流で、
お互いに有効打は無いが、
このまま下がり続ければ、背後の木々に挟まれ、身動きがとれなくなる所だ。
胸元に、花のように張り付く、5つの
「ザザッ―――コウベ、”小鳥”が何か言っとるぞー」
「ザザザッ―――ピッピピピュイッピュイチッ♪」
右側空中、すり寄ってくる、
「なんだと!? ピッピチうるさ―――!」
青黒い稲妻が速度を変えずに、軌道を変えて追撃してくる。
コウベは、背後へ飛び退く動作の、最頂点で、まずバレエダンサーの動きで、上体だけ回転させた。
「ザザッ―――なんだっけ? あれ、あの、足だけで戦うの」
「ザッ―――カポエイラだろ。つか、今の動きはアレじゃね? ……えっと、アレだぜアレ。地面で踊るダンス」
「ザザッ―――ダンス? ブレイクダンス?」
そうそれ。あーそうね、ソッチの方が近いかしらね。
やや距離が詰まったが、獣に背を向け、縮こまる、着地姿勢は、
ドッン!
加速。
スタート地点から、およそ5メートル。
”重力補正”スキルによる、自重改変。スムーズな重心移動が可能になる。
決戦場の外周に沿って、加速していくコウベ。
速度をもてあまし、直進しない矢が、確実に距離を
ドッドン! ジ、ジジッ。
加速。加速。
スタート地点から、目測で65メートル。
”電磁加速”による、
バリバリバリバリ!
距離は縮まり、不規則な雷状の軌道先端は、既に
ドドンドドンドドン!
加速。加速。加速。
スタート地点から、推定200メートル。
”重力補正”スキルによる、歩幅に合わせた重心の射出。
継ぎ目のない推進力は、
トップスピードはどれくらいか。
コウベの背後、乗用車2台分くらい、距離を空けた映像空間の中から
マガリが、指輪型デバイスから測定アプリを取り出し、測定結果を告げた。
「ザザッ―――時速……230Kmだって」
「ザザザッ―――”
「ザッ―――うひー。しかも、あいつら、曲がっても、あんまり速度が落ちねーから、もうなんか」
「「「ザザザッ―――眼で追えねー」」ないわー」
奴らの
「ザザザッ―――おーい。ちょっと見づらいんだけど、さー」
「ザッ―――そうだわね、あの娘の表情も、ワイプで欲しいじゃなーい」
広場から、そんな声が届く。
「ザザッ―――ふむ、……そうですねー。ちょっと
◇
「音声入力、
親指を”イェーイ♪”と突き出し、NPC
ボゥワァン♪
周囲の
カメラアイの周囲を時計回りに回る光点が3周半した後、”
「3・2・1・キュー!」
両手の指を立て、体重を掛け、”
”
屋根付きの休憩所は、各種の観測装置であふれかえる、大会設営本部に。
光の粒子に包まれた観客たちは、気がつけば、整頓された応援席に座らされていて、ざわつき出す。
その正面に浮かぶ、何とか状況を拾い上げようと奮戦していた
カラフルな煙が晴れ、ソコに現れたのは、決戦場を立体的に表示するグリッドに囲まれたプロユースの巨大な映像空間。元々低くは無かった解像度も跳ね上がり、遅延演出も全くない。
「こりゃ、一体!?」
「ひゃわぁぁ?」
「いいじゃねーか! やるもんだぜ、
「そうね、見やすくて助かるわ」
部員一同、揃ってペコリとお辞儀する。
「まあ、この面白いカードを、見逃す運営がいたら、バカってことですよ」
ここからの映像、運営で預からせていただいてもよろしいでしょうか?
今後、金銭など発生する利用に関しては、規定の料金をお支払いいたしますので。
付きましては、と赤く分厚い厚紙をカーディガンの小さなポケットから取り出した。
「みんないいかしら?」と、確認を取る
コウベちゃんのー姿もー含まれるけどー大丈夫かしらぁー?
「
などという、特区では見慣れた、やり取りが終わり、それぞれ、設置されているブースに付いてる名札の席に着席した。
「レディース アンド ジェントルマン!」
あれ、プロトたんじゃね? あ、ホントだ。初めて見た。カワイー。そうでもなくね?
など、レアな案内役の
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