2:バックヤード2
「どぞ、乗ってください」
ウリュリュリューリュリュリュー。
通路を進んでいくコミューター。
見たことのない連結タイプで、一つ一つも、長さがあってユッタリしてる。配車的には、通路に入ってきた順番そのまま、以下の様になった。
1:シラタキ
2:ササキ(ワ)
3:ササキ(マ)
4:―――
5:スキヤキ
6:カタナカゼ
「
「ふにゃはゅ! ……コホン……先生、あんまりグリグリしないでくださはひっ!」
3台連結した状態なので、幾分、動きが
「ちょっとお待ちください。今、扉をお開けしますので」
真っ白い壁。なぜか定間隔で描かれている、目盛りによれば幅1.5メートル。高さは3メートルと窮屈な感じはしない。
「倉庫の位置を解らなくするための、迷路みてえだ」と
「ふふふふふ。この通路は、自動識別ナビの類も、一切、機能しませんよ? この動く目盛りが
勝ち誇る
「ほんとだぁ、この目盛りぃー、ゆっーくり流れてぇるぅー!」
「うひゃっ!? キモッ! 何なのこれっ!?」
ドアの両隣の目盛りを触って、確かめてる笹木姉妹。
「今居るとこ、自販機のトコよりは、ちょっと
「えー?
片手を付いたまま、振り向く
「バカ、
「私はぁ、
ビクリ!? と肩を震わせ、ぎこちない笑顔を張り付かせた、白焚女史(セクシー魔法美女)が、笹木姉妹と同じポーズで振り返る。
「や、やだなぁ、ジオフロントへの無断進入なんて、生身で出来るわけ無いじゃないですかぁ! ヤ、ヤダなぁもう! アファファファハァッ!? ……ケホケホッ!」
それまでの、ピシッとした所作が、ギコちないモノに変わる。
彼女の、今の格好は、メインヒロインの装備一式を模した、体のラインがそのまま出るセクシーなモノなので、なおさら、無防備というか締まらない。
昨日のビジネスライクなスーツ姿と、”暴走屋台”を止めた手腕(及び足技)を見てなかったら、とても、特区の優秀な管理者サイドの人間には見えない。逆に、昨日の印象と比べて、親しみやすさは大幅にアップしている。
「……おい、
「……そうだな、策略とか性格が問題ってんじゃなくて、なんつうか単純に用心しとこう……ヒソヒソ」
「……ちょっと、またなんか、悪巧みしてんじゃないでしょうね……ヒソヒソ」
「よっこらっせっと!」
ガチギャリガリギャリカチカチカッシャン!
今時、珍しい、多重回転シリンダー錠だ。
ただし、内部機構はパワーアシストで継続する。古来の
一見普通のドアの、内部構造すべてが、
右か左か解らないが、連続して5回転させたと思ったら、ドア内部で、カタンカタンカタンと何かが断続的に落ちる音。
タイミングを合わせて、カチンカチンカチンと3回逆方向に回転。
歯車が噛み合う音が1つ、2つ、3つ。コン、ゴコン、ガガガン!
次第に大きな歯車へと動力が伝わっていく。
30秒ほど、ドア内部で作動音が継続した後、ピピピッ♪ と作動音が鳴った。
ドアノブを同心円に取り囲むように、10センチ程の
そのリングにはそれぞれバラバラの箇所に
ガッコン! カチャン!
「開きましたー。開け方忘れてなかったー」
袖で額を拭う
ギッギギギギギギ。
重厚な音とともに、ゆっくりと押し開ける
お前はどうして、そう、イケメンなんだ。用心するんじゃなかったのか?
と言う顔で、片目を細める
「音声入力」「照明・空調・換気オン」「あれ?」「照明オン」「あれ?」
慌てる
一瞬で、白色光で満たされる室内。
「あ、ごめんごめん。この辺は、”音声リモコン”対応前の区画だったっけ」
赤・青・黄・緑・紫・ピンク・白・黒、とカラフルな段ボール箱がギッシリと積められた棚が現れる。天井が低くとても窮屈だが、脚立が無くても一番上にある箱まで手が届くのは便利そうだ。
「この中の赤と黒
「結構沢山あるわねぇー!」
「棚ごとにリストが張ってあるので、それを最初に見てもらえれば、それほどは掛からないと思います」
「なんか、ちょっと、楽しくなってきたぜ!」「まじめにやんなさいよ!」
「いや、でもたしかにドキドキするかも」
「じゃあ、私、ついでに検品だけ初めてますんで、解らないこととかいつでも聞いてください」
奥へ入っていく女史へ礼を言う一同。
「はぁい! ありがとうございますぅー!」
「ありがとうございます」「「どもっす」」
「赤黒以外って事は、この『持ち出し厳禁』シールが無いヤツを見ていけば良さそうだな」
制服の上着を脱いで、
「んーっと……そうみたいだぜ」
上着を脱ぎ、
「じゃとりあえずぅー、こっちの端からぁー見て行くわよぉー!」
「「「「了解ー」」」」
顧問講師の号令に返答する生徒達。何故かその中に、
「やっぱり、寂しいのかしら?」「やっぱ、
ヒソヒソヒソ。
生徒達の会話をスルーして、顧問講師は、最初の段ボール箱に手を掛けた。
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