エピローグ
『
映像は黒一色のまま、独白が始まる。
〈2022年、私は福岡空襲において司令部の許可を待たず独断で人命救助に向かったものの
〈2023年5月、私はミサキグループの傘下ミサキバイオニクス社が出資する屋久島生命工学研究所に、研究員として出向を命じられた。突然の処遇、畑違いの仕事に困惑する間も無く、私は同研究所で行われているある遺伝子治療の第二相試験と、その被験者として研究所に収容されている少女、
〈……それにしても、空自の警戒管制機としてつくられた私が、病気の子どもの世話なんてちゃんとできるのだろうか。確かに私には看護師資格ソフトも一応搭載されているし、子どもは好きだけど。初めてのことばかりで不安だ〉
〈聞いた話によると墜落した私の回収と修理は、私の能力を評価して下さった三崎会長の特別なご厚意で決まったことらしい。つくられた時からずっと、誰かの役に立つ仕事がしたいと願っていた。私にはもうそんな機会は訪れないと諦めていたけれど……。期待を裏切らないよう、精一杯私にできることをしよう。治験が上手くいきますように。被験者の子と、仲良くなれますように〉
しばらくして、真っ暗だった画面に初めて映像が映った。
〈君が天音波那君だね、初めまして〉
ビデオカメラで録画したような映像の中、病室のベッドで半身を起こした長い黒髪の少女が、こちらを見上げている。
少女の表情がカメラ目線のそれではないから、恐らく、これはビデオカメラで撮ったのではない。
蛍が自分の目と耳で記録した映像、ヒトならば記憶に相当するものだ。
〈私はMD-131、今日から君の看護を担当することになった。よろしくな、波那君〉
〈……MD-131? それが名前なの?〉
〈製造番号だ〉
〈名前は無いの?〉
〈すまないが、実験機だったから名前は無いんだ〉
〈なんだ、つまらない〉
〈つ、つま、つまらないだって? ……ごほん、失礼。それより波那君、テーブルの上の食事が手つかずに見えるが。早く食べないと冷めてしまうぞ?〉
〈食べたくないの。点滴だけで十分〉
〈それはいけない。食事はしっかりとらないと、治るものも治らないぞ〉
〈正しくは、治らないものは治らない、ね。そうなんでしょう、MD-131さん?〉
〈そんなことは……〉
〈でもね。私、死ぬのがとても楽しみなの。だって最近は、死ぬと異世界に転生できるんでしょう?〉
〈えっ? 何だそれは怖いぞ〉
〈最近は
〈その看護師達は単にネット小説の読み過ぎなんじゃ……〉
〈え、何か言った?〉
〈いや何も。ん、窓が開いているな……開けっ放しだと蚊が入ってくるから閉めようか〉
〈だめ〉
〈えっ?〉
〈窓を閉めたら、天使が入ってこられなくなっちゃうわ〉
〈て……天使、だと?〉
〈そう、いつかその大いなる翼で、私を異世界へ連れて行ってくれるの〉
〈……そ、そうか。それじゃあせめて、窓の下に蚊取り線香を置かせてもらおう〉
〈それもだめ。天使が煙たがって近付かなくなるじゃない〉
〈弱過ぎだろ、その天使!〉
画面が暗転し、再び蛍の独白が入る。
〈天音波那は、幼少期に
〈拡張型心筋症の原因は未だに特定されていないが、いくつかの仮説が新しい治療法とともに検証されている。日本の厚生労働省と京都大学の研究者達は、一部の患者の心筋細胞でコクサッキーB型と呼ばれるウイルスの活動が検出されたことからウイルス原因説を重視していた。またアメリカMITの研究グループは、遺伝子解析によって患者の変性した心筋細胞のミオキン重鎖、結合タンパク質に作用する遺伝子の変異を発見。マウスを用いた実験で、遺伝子治療が心機能の回復に一定の効果をもたらすことを実証していた〉
〈ここ屋久島生命工学研究所ではウイルスと遺伝子の双方から原因と治療法を研究しており、心筋内でカルシウム濃度を調節しているSERCA2aと呼ばれるタンパク質遺伝子を患者の変性細胞に組み込む治療を行なっている。その治験の被験者となるのが、天音波那だった。彼女の両親は福岡空襲で死亡。他に身寄りも無くそれまでいた病院の入院費が払えなくなったところを、この研究所が引き取ったらしい〉
〈……正直、あの子はちょっと苦手だ。なんか可愛げが無いし、失礼だし、厨二のラノベ脳っぽいし、上手くやっていける自信がない……はっ何を考えているんだろう私、後ろ向きなことばかり〉
〈小さい頃から重い病で苦しみ続けて、ご両親まで亡くして、あの子が一番辛いはずなんだ。あの子がせめて毎日をもっと楽しく過ごせるよう、私があの子の力になってあげないと〉
蛍が、病院の厨房を借りて慣れない料理に悪戦苦闘している光景。
拡張型心筋症患者の食事は、血圧をコントロールするために塩分を抑えなければならないようだった。
減塩レシピ自体は病院にもあるが、どうしても味が薄く美味しいと感じられなくなってしまう。
そこで素材そのものの旨味を引き出す、レモンやユズ、スダチなどの柑橘類で酸味と香りをつける。昆布や
病院の厨房に無い材料は、蛍が自腹を切って買ってきていた。
再び天音波那の病室。
〈波那君、今日の夕食はハンバーグだ! 私が作ったんだぞ、ほら見てくれ、上に目玉焼きも乗せた。こういうのはハワイではロコモコって言って……〉
〈食べたくない〉
〈そんなこと言って、本当はお腹が空いてるんだろう?〉
〈しつこい〉
蛍がうなだれたのか、画面いっぱいが床になった。その映像が、不意に上に向く。
〈
波那が、あの歌をうたっていた。
〈凄い……〉
映像、つまり蛍の視界が小さく揺れている。
蛍が歌に驚いている様子が、映像を通して僕にも伝わってきた。
波那が歌い終える。蛍の拍手の音が響いた。
〈波那君、歌が上手なんだな! それだけ奇麗な歌声なら、きっと紅白歌合戦にだって出られるぞ!〉
〈……何それ?〉
〈ほら、大晦日にNHKでやってる……〉
〈ごめんなさい、私テレビは嫌いで見ないから。……この歌はね、お母さんがいつも私にうたってくれた歌なの。お母さん、空襲で死んじゃったけど〉
〈……そうか。寂しいな〉
〈いいえ、寂しくないわ。ほら、あれを見て。中庭で光ってる〉
〈あれ? ……ああ、ホタルか。そういえば、もうそんな季節か。九州には多いんだったな〉
〈綺麗でしょう。この部屋の窓からは月が見えないけれど、あの子がいるから寂しくないの。……私の天使よ〉
〈あれが波那君の天使か。はは、道理で蚊取り線香がだめなわけだ。まあ、ホタルの見頃は6月までだから、それが終わったら蚊取り線香を置くか窓を閉めるか……〉
〈その必要はないわ。だってあのホタルが死ぬ時、私も死ぬんですもの〉
〈そういう運命なのよ〉
そして、中庭でホタルが光らなくなった夜、本当に波那の発作が起きた。
ヒトの医師や看護師に交じって、懸命に応急処置にあたる蛍。
〈酸素吸入します、フェイスマスクを装着! ボスミン1、生食20! 急いで!〉
〈血圧70から61に低下! 脈拍120! 危険な状態です!〉
〈呼吸停止しました!〉
〈気管内挿管に切り替えろ! 挿管セットを……〉
翌朝。波那は奇跡的に
〈波那! 良かった……本当に死んでしまうかと思った……〉
〈……波那?〉
〈ああ……すまない、呼び捨てにしてしまった。……嫌か?〉
〈ううん。でも……私は貴女のこと、何て呼べばいいの?〉
〈……
〈え?〉
〈今日から私が蛍だ。君の天使、私が引き継ごう。私は死なない。波那も死なせない。一緒に、病気と闘おう〉
〈……意地悪ね〉
〈……ああ、意地悪だ〉
こうして、蛍は波那の天使になった。二人が親密になっていく日常の様子が、ずっと続く。
しかし、何やら雲行きが怪しくなってきたところで、僕は早送りを止めて再生を押した。
〈……今日は、三崎会長に直談判をした。遺伝子治療による変性細胞の縮減よりもd-CM11投与による変性細胞の観測を優先するとの研究所の方針に対してだ。d-CM11は心筋の交換神経に集積する特徴のあるCT造影剤で、安全性に問題のある治験薬だ。それにMRIやドプラ―エコーで変性細胞のマッピングはもう十分やったはずなのに、治療を中断してまで変性細胞のより精密な観測を行う意味は何なのか。最近、この研究所の遺伝子治療では効果が出るまで波那の心臓がもたないのではないかと不安になってきた〉
〈バチスタ手術について調べてみた。変性して膨らんだ心筋を切り取って縫い縮める術式で、根治には至らないが、かなりの長期間症状を改善できる。実際にバチスタ手術のチームを率いる教授の論文を読んだが、予後も良好だという。しかし、波那にバチスタ手術を受けさせたいと言ったら、会長からは一蹴されてしまった。明日もまた変性細胞の観測だ〉
〈……どんなことがあっても、波那は私が守る。私が救ってみせる〉
その独白の翌日。
全身麻酔をかけられる直前、手術台の波那と言葉を交わす蛍。
〈大丈夫か、波那? 怖くないか?〉
〈うん。だって蛍がついていてくれるんでしょう?〉
波那が微笑んだ。
映像は、そこで途切れていた。
「夏休みの課題図書?」
「ええ、私は図書委員会が掲示した選択肢の中から、
「えーとな
「それで図書委員に文句を言ってやったの、そうしたら、その本だけは生徒会長から要請があって後から選択肢に加えたから、うちでは内容は関知しませんって言うのよ! こんな無責任な話がある?」
「図書委員の仕事も大変だな、こんなモンスター……いや、何でもない」
「そもそもどうしてこの学園は、一般生徒が自由に課題図書を決められないの? 私がこの夏読みたい本の上位ベスト5、『私の兄貴がこんなにハーレムなわけがない』『俺は男友達が少ない』『日本は衰退しました』『異世界で就職してみたら普通にブラック企業だった』『山本五十子の決断』が一つも選択肢に含まれてないのは一体どういうことなの? ねえ聞いてるの
「あー聞いてるよ、自由に選ばせるとお前みたいなのが出るからだろ…いてっ!」
うっかり本心をそのまま口に出して足を蹴られた。
僕達はいま海を正面に、朝日に照らされた水平線上の入道雲を眺めながら坂道を下っている。一緒に歩いている連れがさっきから延々と聞かせてくるこのどうしようもない愚痴さえなかったら、とてもすがすがしい朝なのだが。
「というか、さっきお前が挙げたのどれも推理小説じゃないよな、タイトルからして全部ラノベだよな。探偵団としての矜持はどこへやったんだよ」
僕がそう突っ込むと、どうしようもない愚痴の主、
「そう、探偵団の団員勧誘についてまた新たな作戦を練る必要があるわね。結局、
「朝菜さん、あんなに死の物狂いで論文間に合わせたのにな。まあ誰も来ない理由のほとんどはお前の悪評のせいだけどな。せめてサクラの役割ぐらい果たせよ、
「なんですってぇ! と、とにかく、幸村先生も容態が回復されて2学期から復帰されるそうだし、それまでの間は音楽の諏訪之瀬先生が暫定で顧問をなさってくれることになって顧問の件はひとまず安泰だから、これからは一般生徒への勧誘活動に総力をあげるわよ。まずは作戦会議も兼ねて団の合宿をしたいのだけど……」
「却下、お前が遊びたいだけだろ。金もないし」
「ふふふっ、それがあるのよ、そう、園芸部に交付された部費が! というわけで海に行くわよ」
「朝菜さんに殴られるぞお前……大体、わざわざ合宿なんかで行かなくても海ならこの島の周りにたっぷりあるから見飽きてるだろ」
「じゃあ山!」
「山もこの島に沢山あるな」
「うー……」
「そうだな、部室に泊まるとかでいいんじゃないか? あ、部室棟は夏休みいっぱい修繕工事か。あちこち壊れたままだからな」
「もう、ムードもへったくれもないわね! 一生に一度のモラトリアム期間の、貴重な夏休みなのよ? 海で泳いだり山でキャンプしたりしたいのよ!」
桜が地団駄を踏む。DOLLが泳げるというのは初耳だがさておき、僕は不意に以前、誰かがこうアドバイスしてくれたのを思い出した。
『せっかくのモラトリアム期間なんだからもっと自由に、良い意味で遊んで、友達と楽しい思い出をつくった方がいい。損得抜きで親しくなった友達は、一生の宝物になるぞ』
「……ま、たまにはそういうのも悪くないかもしれないな」
「でしょう!
「ただし。園芸部の部費を使わせてもらうなら、必ず事前にみんなと相談だ。間違ってもお前の独断で勝手に決めたりするなよ」
「夏休みが終われば、今度は大学でやる秋の
こいつ、人の話を本当に聞かないな……。
「探偵部らしく、アガサ・クリスティ作品の演劇や自主制作映画はどうかしら? ああでも、お化け屋敷も捨て難いわね、客より朝菜を怖がらせるのが楽しみだわ。他にはそうね、軽音楽部に対抗して私達もライブをやるというのはどう?」
桜の思いつきのマシンガントークを適当に聞き流しながら、サッカーグラウンドのある公園にさしかかる。
公園の木々からは、屋久島に夏の訪れを告げるヒメハルゼミの大合唱が響いている。
そういえば、この公園は……。
「すみませーん、ボールとってくださーい」
サッカーボールが僕の足元に転がって、それを追いかけてきた子どもが僕の顔を見て驚く。
「あっ、ルリお姉ちゃんと一緒にいたおじさんだ!」
え……おじ、さん? 唖然とする僕の周りにたちまち子ども達がみんな集まってきた。
「おじさん、久しぶりー!」
「おじさんもサッカーしようよー」
お願いします、そんな純真無垢な笑顔でおじさん連呼しないで下さい。悪気がない分余計心にぐさっときます。あと桜、にやにやするのやめろ。
口元を引き攣らせている僕に、見覚えのある女の子が恐る恐る話しかけてきた。
「あのね、おじさん……最近ルリお姉ちゃんが遊びに来てくれないんだけど、お姉ちゃんどうしたのかな? ひょっとして……こないだあたしがボールぶつけちゃったから、怒っちゃったのかな……」
他の子ども達も、一転して心配そうな顔になる。
「ルリお姉ちゃんは、そんなことで怒ったりなんかしないさ。ルリお姉ちゃんはみんなのこと大好きなんだから。ただちょっと今、仕事や勉強が忙しいだけだよ」
僕はかがんで、質問してくれた女の子の目を見て答えた。
あの時どちらが義眼かまでは聞かなかったが、少なくとも僕にはどちらも本物の目と全く見分けがつかない。
瑠璃さん、貴女はこんなことをしても根本的な解決にはならないと言っていましたが、貴女の優しさはここでちゃんと育っていますよ。
「そっかー、良かった! お姉ちゃんに会ったら、みんなからよろしくって伝えてね、おじさん!」
「ああ、わかったよ」
おじさんじゃないけどなと、僕が文句を心の中にとどめて立ち上がろうとした時だった。
「……もう、おじさんじゃなくて、お兄さんだよ」
「ルリお姉ちゃん!」
女の子が、僕の背後に現れた人物の名を叫んだ。他の子ども達もそっちへ駆け寄っていく。
「みんな、ごめんね。長いこと来てあげられなくて」
振り返ると、そこには子ども達の輪の中で、一人一人の頭を撫でているDOLLがいた。
「来てくれたんですね、
僕に向いたラピスラズリの右目が、何度も瞬いた。
「糸川さん。私は……」
何かを言いかけた瑠璃に、僕は小さく、首を横に振った。
話すべきことが沢山あるのかもしれない。
けれど今は、こうして再び会えたことを喜びたかった。
「お帰り、お姉ちゃん!」
瑠璃の手を、女の子が握る。
瑠璃は瞳を震わせて、しかし最後には微笑んだ。
「……うん、ただいま!」
「生徒会長、子ども達と遊ぶのは後にして頂戴。朝菜達を待たせると悪いわ」
珍しく桜がまともなことを言う。時間が押しているのに気付き、僕達は子ども達に手を振って、待ち合わせの場所に急ぐ。
潮風が香り、波の音が次第に大きくなる。海岸が近い。
「あ、来た来た! こらぁ遅いぞ!」
「ボク達が早く着いちゃっただけだよ朝菜……おはよう糸川君、桜さんと瑠璃も」
髪の長さを除いて顔が瓜二つの姉妹が、花束を用意して待っていてくれた。こうして、僕達5名は合流した。
灯台もと暗しというのか。少女は、僕の姉と同じ墓地に眠っていた。
『天音波那』と刻まれた墓石に花を手向け、僕達は全員で黙祷した。波濤が砕ける音だけが響いていた。
去り際に僕は、ポケットから灰色の羽根を取り出し、風で飛ばされないよう石を重しにして、少女の墓に供えた。
僕が持っていたい気持ちがないといえば、嘘になるけれど。
故郷が無いと言った僕に、故郷が場所とは限らないと蛍は答えた。
もしも彼女の想う『故郷』が、絆や出会いだとするならば、空にのぼった彼女がこの地上に残していった形見の中で最も彼女らしいこの羽根は、彼女にとって一番大切な人のもとにあるべきだと思った。あの『故郷』の歌をうたった、少女のもとに。
天音波那に全てを捧げ、最後に自らの身を処して幕を引いた彼女が最後の瞬間、5年前のXP-N-001にかえってくれた。それだけで、僕には十分過ぎる形見だった。
墓地を出たところで、桜が携帯を取り出してワンセグをつけた。『名探偵ポアロ』の時間ではないはずだったが、墓参りの後の会話が途切れがちになる空気を、桜なりに切り替えようとしたのかもしれない。
若い女性の声で、民放の天気予報と思しき軽いノリのアナウンスが流れてくる。
〈今朝もお
桜のワンセグを、何の気なしに覗く。
画面の中には東京のテレビ局前中継で本当にビキニ姿をして肌の大部分を露出させ身体を張って視聴率をとらされているお天気お姉さん、その後ろからカメラに向かってピースしたり手を振ったりして公共の電波でのタダ乗り自己PRに余念のない通行人達、お天気お姉さんの肢体を特定の角度から撮影しようと試みてスタッフに追い払われる一部の通行人、そしてお天気お姉さんが解説に使用している、沖縄県の無くなった日本列島地図。
きっとワンセグに映るこの都会では、誰も違和感を覚えることなくこの国土の欠けた日本列島地図を見過ごし、そんなことよりもお天気お姉さんの水着姿に夢中なのだ。
いつからだろう、この国の人間が失ったものを悔やむことを止めたのは。
誰かが言うように、この国は確実に滅びへと向かっているのかもしれない。
確かに、僕達はあまりに無力で脆弱だ。過去も、そして今も。直視するのは辛過ぎて、
おまけに何が正しいかはばらばらで、矛盾だらけだ。問題は山積している。
それでも、僕は、僕達は、歩み続ける。
大切なもの、信じるものを背負って、一歩ずつ。
《
〈完〉
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