有限世界と耐性少女―encroachment―

加賀山かがり

1-0 introduction.


 ある日世界は唐突に終わりを迎えました。

 原因ははっきりとしています。

 世界に一人の男が現れたからです。

 その男はたったの一人で全世界と戦争をして見事に勝利をもぎ取りました。

 失われたのは全人口のおおよそ九割程度と、国家の主要都市群のほぼ全権で世界からは秩序と文明の大半が消失したのでした。

 その後も男は生き延び続け、新たに国を作るでもなく、世界のすべてを掌握するでもなく、一人北の地で人の減った世界を眺め続けていました。

 幾年も、幾年も、幾年もです。

 なぜそんなことをしているのか、それは偏に『人の歴史が完全に途絶えたわけではない』からにほかなりません。

 もともとの総人口の一割未満の人間は、それでも懸命にあがき、苦心し、努力して何とか命を繋ぎ止めることに成功したのです。

 文明が滅びた世界を男はそれ以上壊そうとはしませんでした。

 だから生き残った人々は今もなお、世界に点々と居を構えて暮らしていけるのです。

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