第45話 私はヒーロー
世界が真っ暗に、そしてゆっくりと崩れ始めた。
全てが泡となって消えて行く。
まるで深海のような静けさに、みずきの意識はボヤけ、やがて考えることをやめた。
「みずき!!おい、しっかり!!しっかりろよぉ!!」
荒々しく声を上げながら、息吹は胸にポッカリと穴を開けたみずきの体を大きく揺すった。
血を撒き散らしながら倒れるみずきの元には、現状を受け入れられない魔法少女達が困惑した表情を浮かべながら次々と集まって来る。
気づけば、みずきを仕留めたニコラグーンは、何故かその場から姿を消していた。
だが、そんなことなどお構いなしに、息吹は目に涙を浮かべながら何度も何度も強くみずきの体を揺さぶり続けた。
「息吹、落ち着いてくださいまし……そんな乱暴に扱っては……」
「落ち着け……だって……?これが落ち着けるわけないじゃないかッ!!!目の前でみずきがこんな……みずきが……みずきがぁ……!!」
取り乱す息吹の肩にユリカはそっと手を置くと、彼女の耳元で小さく声をかけた。だが、それは却って息吹の感情を爆発させることとなった。
感情的に、息吹は行き場のないこの感情をユリカにぶつける。そしてしばらくすると、彼女の瞳からは大量の涙がボロボロと溢れ出した。
酷く混乱した様子の息吹を見て、ユリカはズキズキと胸を痛め言葉を失った。
「……ねえ、みずき……早く目を覚ましてよ……こんなの嘘だって言ってくれよ……ボクには、ボク達には、みすぎが必要なんだ……いつもみたいに馬鹿言ってさ、みんなを笑顔にしてくれよ……ねえ、返事してよ……ねえってば!!起きてくれよ……ッ!!!」
「息吹……」
一向に目を覚まそうとしないみずきに、息吹は震える声で必死に語りかけた。
そんな息吹の姿を前に、ユリカもまた胸を締め付けられるような思いで瞳が涙で一杯になった。
頭を抱え項垂れる沙耶、沈黙を続ける風菜……どんよりと沈む空気、肌を冷たく掠める湿った風、悲しみが悲しみを生むこの状況に、魔法少女達の士気は完全に停滞してしまっていた。
そんな淀んだ空気の中、息吹は諦めず自分の思いをみずきにぶつけ続けた。
「……ボクにとって、みずきは本物のヒーローだった……憧れだったんだ……!父さんと母さん、両親を失い荒みきってしまったボクの心に、みずきがそっと手を差し伸べてくれたあの日……とても、とても心が暖かくなったんだ……みずきと出会ってから、空が高く見えた……風が心地良くなった……何気ない日常が、一気に色付いて見えたんだよ……みずきと風菜、沙耶にユリカ、みんなといる時間が大好きなんだ……感じたことのない居心地の良さに、正直まだ戸惑ってるぐらい……だから、だから早く目を覚ましてよ……みずきが居なきゃ、ボクは一体どうすればいいんだよ……!!」
悔しさに唇の下をぐっと噛み締める。
息吹の零す涙の雫が、ポタポタとみずきの頬へと流れ落ちた。
すると、微かに光を放つ涙の輝きに、風菜は眉をひそめた。
と、同時に、みずきが倒れてからこれまで沈黙を守り続けていた風菜は、突然声を発した。
「……みずきは死んでおらん。まだ助かる。まだ、希望はある……!」
この言葉に、悲しみにふけていた魔法少女達が一斉に肩を揺らした。
「い、今なんて……?」
「みずきはまだ助かる。お主の涙がみずきの頰に触れた時、僅かではあるが魔力を感じた……此奴の中にある魔力は、まだ完全に消えてはおらぬ!!」
震える声で問いかける息吹に対して、風菜はきっぱりとみずきの生存を言い放った。
その言葉に一同はそっと目を閉じると、全神経を研ぎ澄ませ、みずきの中に流れる僅かな魔力を必死に探り始める。
しばらくして、一同はハッと目を見開き一斉に顔を見合わせた。
「確かに感じますわ……みずきの魔力を!!」
「みずき……私は……私は……!!」
「死んで、ない……はは、やっぱりそうだよ……流石だ……そうだって信じてたよ、みずき……」
微力ではあるが感じ取ることの出来るみずきの魔力に、暗く沈み返っていたこの場に大きな風が吹いた。
微かに見えた希望に、一同は瞳の奥の輝きを取り戻す。
枯れるほど流した涙に目元を真っ赤にさせながら、魔法少女達はゆっくりとみずきの元へと歩み寄っていった。
「ここまでやられてまだ生きてるなんて、流石みずきですわ。……本当によかった」
「じゃが、喜ぶのはまだ早い……この傷は明らかに致命傷。僅かに残ったみずきの魔力が潰えるのは時間の問題じゃ……このままにしておけば、今度こそ確実に死んでしまうじゃろう」
「”このままにしておけば”……その言い草、風菜のことだ、何か策があるんだろ……ボク達は一体、どうすればいい?」
ぐっしょりと目元を濡らす涙をふき取ると、息吹は真剣な眼差しで風菜に問いかけた。その様子に、みずきの周囲に集まった全員が風菜の方へ視線を集めた。
風菜はしばらく沈黙すると、ゆっくりとその場から立ち上がり、みずきの元へ近寄って行く。そして、そのまま膝をつき、彼女の体にそっと手をかざした。
と、次の瞬間、風菜の手のひらがボンヤリと輝き、みずきの体に美しい光を宿した。
「覚えておるか?ヒマラヤでの修行のことを……あの時、アッシらは必殺技を編み出すため、みずきに魔力を送る技術を身につけた。超回復が魔力による作用だというのなら……」
そこまで言うと、風菜の言葉に一同はハッと顔を見合わせた。
「ワタクシ達の魔力をみずきに分け与えれば、肉体の回復を促進させることができるかもしれない……!!」
「……考えたって始まらない。ボクも力を貸そう!」
「わ、私も……いつまでも落ち込んでるだけじゃいられないわよね……」
みずきが生死の境目を漂う、もはや一刻の猶予もない緊迫したこの状況。そうと決まれば早速、息吹達もまた風菜に続き、みずきに魔力を送り始めた。
みずきを囲むようにして寄り添う彼女達の手のひらはキラキラと光り輝き、みずきの胸を貫いた深い傷をじわじわと修復させていった。
「みずき……みずき……!!」
その場にいる全員が、みずきの名を小さく呟きながら懸命に魔力を送り続ける。その最中、皆の脳裏には、みずきと過ごした日々の記憶が鮮やかに思い出されていた。
祈るような思いと共に、自分の魔力を極限まで削る。
全ては、もっとみずきと、みんなと一緒にいたい……ただそれだけの、それだけの小さな願いのために……。
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みずきの肉体は完全な回復を遂げた。
だが、それでも一向に目を開けようとしないみずきの様子に、風菜達は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「……これでも目を覚まさんというのか、みずき……もはや、既にお主は……」
「そんな……やだよ、そんなの……みずき……みずきぃ……!!」
思わず涙目になりながら小さく語る風菜の姿に、またしても重苦しい空気が辺りに張り詰める。
表情に影を落とし、みずきの傍で項垂れる息吹。彼女の長い髪が、微かにみずきの顔を掠めた。
と、その時、顔を掠める息吹の髪に反応し、僅かだがみずきの鼻がピクピクと動いた。
「……はっ……はっ……ハックショーーーーッイ!!!!」
瞬間、重苦しい空気を一気に払拭するかのような大きなクシャミが、辺りに響き渡った。
勢いよくツバと鼻水を撒き散らすと、みずきはまるで何事もなかったかのようにむくりと体を起こした。
「ぬおぉ!ツバ顔にかかった汚なっ!!……って、みずき!お主、ようやく目覚めおったかッ!!」
「風菜……そうか、確か私は……」
周りをキョロキョロと見渡したのち、朦朧となっていた記憶を全てを思い出すと、みずきは少し暗い表情を見せながら小さく肩を震わせた。
どこか弱腰に構えるみずきにほんの僅かだが不安を覚える。
だが、それ以上に、みずきが復活したという事実に皆歓喜を受け、一同は笑顔と共に自然と涙を零した。
ただ一人を除いては……。
長い黒髪に隠れた目に影を落としながら、息吹は目を覚ませたみずきにゆっくりと近づいた。
「息吹……ごめんな、色々心配かけちまったみたいで……ありが……」
”パアァァァァンッ!!!!”
みずきが息吹に礼を言おうとしたその時、突然、頰を叩く鋭い音が周囲に響き渡った。
振り下ろした息吹の手のこうが、チカチカとみずきの目に映る。
何が起こったのかわからないと言った表情で、みずきは赤く腫れた頰を手で抑えながら目の前で立ち尽くす息吹の目を見詰めた。
息吹のとったそのあまりに意外な行動に、風菜達もまた唖然とした様子で彼女達二人のやり取りを見守った。
「い、息吹……?」
「……なんで」
「えっ……?」
「何で……何で命と引き換えにボク達を助けてくれなんて言ったんだよ……!!」
「あっ……」
震える声で息吹はみずきを問い質した。
その複雑な心情を物語る彼女の瞳に、みずきは思わず言葉を詰まらせる。
「それは……みんなを守ろうと……」
「自分が死んでみんなが救われるとでも思ってたのかよッ!!みずきが死んで自分は助かりたいなんて……そんな結末、ここにいる誰もが望んでない!!」
「で、でも、あのままじゃ風菜が……全員殺されてたかもしれないんだぞ!!」
「殺されなかったかもしれない!!生きていれば……諦めなければ道は開かれる……何があっても最後まで足掻き続ける!!それが紅咲みずきじゃなかったのか!!それなのに可能性を捨ててわざわざ死ぬ方を選ぶなんて、そんなの……ボクが心惹かれたみずきじゃない……!!!!」
「……っ!」
興奮する息吹はみずきの胸ぐらを掴むと、大きな声で彼女に怒鳴り散らした。
その気迫に圧倒され、みずきは思わず腰を落とした。再び言葉を詰まらせながら、じりじりと熱くなる頰の痛みを噛み締める。
「……ごめん……私、怖くなって……逃げ出したくなったんだ……本当に、ごめん……」
弱々しく小さな声でそう呟くみずきを前に、息吹は目元を熱くさせながらゆっくりと彼女の体を抱き寄せた。
その温もりに、みずきの心は徐々に安らいで行く。心地よい感覚に、辺りは長い沈黙に包まれた。
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張り詰める不気味な気配に背筋をムズムズと痒くさせる。黒く淀んだ空を眺めて、風菜は険しい表情を見せた。
「空が歪んでおる……この禍々しい気配……アッシらの前から姿を消したものの、奴はまだこの地上のどこかにいる……じゃが……」
「果たして今のワタクシ達に、勝機はあるんですの……?」
重苦しい空気が、森の樹々のようにびっしりと辺りにたち込めた。
先程の戦いで、その圧倒的力差を魔法少女達に見せつけたニコラグーン。彼の強さを思い出すだけで、みずき達は無意識のうちに身を小さく竦ませていた。
と、そんな時だった。彼女が現れたのは……。
「……全く、呆れたもんよね……あんた達、そんなシケた面して本気で世界を救えると思ってるわけ?」
誰もが意気消沈するこの状況の中、聞き覚えのある声が、みずき達の耳に飛び込んで来た。
一同が一斉に声の方へと振り向くと、そこにはメイド服ではなく、見慣れたスーツ姿で仁王立ちする小坂の姿があった。
相変わらずの身体能力でヒールのままクレーターの崖を駆け降りると、すっかり気落ちしていた魔法少女達の前にずかずかと歩み寄って来た。
「こ、小坂……どうしてこんなところに……」
「こんなところにじゃない!あんた達が必死に戦ってるってのに、ただ見てるだけだなんて、そんなの我慢ならないじゃない……だから助けに来てやったのよ!!」
「助けにって……危ないから大人しくしといてくれよ……ここは私達で何とか……」
「何とか出来てないからこの有様なんでしょうよ!!何が魔法少女よ!何がヒーローよ!」
「……ッ!!頼むからもう帰ってくれよ!!あんた一人が加わったところで何とかなる相手じゃないんだよ!!!!」
思わず大声で怒鳴るみずき。
そんな荒れた態度を取るみずきの脳裏には、多くの尊い命が失われていったあの悲劇の光景が鮮明に思い出されていた。
小坂にもしものことがあれば……考えただけで、みずきは心を強く痛めた。
明らかに取り乱すみずきの姿を見て、小坂は呆れたようにため息を吐く。と、ゆっくりと口を開き、ある言葉を彼女に突きつけた。
「……”ヒーローは守るものが多いなぁ……その守るものの中には、他でもない自分自身も含まれているんだ……だから……俺は死なない!絶対に負けない!何故なら、俺は……ヒーローだからだ!!”」
突如拳を上げて語り出す小坂に、風菜達はざわざわと騒つくと、一歩彼女から体を引いた。
だが、その言葉にみずきだけが大きく反応を見せた。ガタリッと肩を大きく揺らし、虚ろになっていた目つきが一気に晴れ澄んだ。
「それって……パンチマンが第35話で言ったセリフ!!どうして小坂が……?」
みずきの質問に対し、少し頰を赤らめながら小坂はポリポリと顔を掻いて答えた。
「いや……その……た、たまたま見てたのよ、小さい頃……べ、別に、パンチマンみたいな正義の味方に憧れて警察やってたとか、そんなんじゃないから!!」
「あっ、これパンチマンに憧れて警察やってたヤツですわね……全部自分で言っちゃってますし……」
わかり易すぎるリアクションに思わずツッコミを入れるユリカに、小坂はさらに顔を真っ赤に染めた。
大きく咳払いをして場を誤魔化しながら、再び話を続ける。
「……オホンッ!と、とにかく!あんたが私のことを心配してくれたように、ここにいる誰もがあんたに死んで欲しくないと思ってるわけよ。だから、もう簡単に命を捨てるような真似はしないことね……」
「なっ……そこまで知ってたのかよ……」
「私の地獄耳を甘く見ないことね。それに、あんた達の戦いっぷりは随時衛星カメラでLDM本部内に筒抜けになってるから」
「ぬかりねぇなぁ……」
「当然でしょ。あんた達を守るのは、私達大人の役目なんだから……」
小坂の登場により、淀み鉛のように重くなっていた魔法少女達の心は少し軽くなったように感じた。
つかの間の暖かさに、皆心を寄り添わせる。
だが、いつまでもそうしてはいられないのもまた事実。表情を緩めるみずき達の顔を見渡すと、小坂はふっと笑みを溢し、そのまま彼女達に背を向けた。
「……でも、このまま奴を野放しにしておけば、何もかもが終わってしまう……なら、戦うしかないでしょ……!!」
小坂の言葉は、みずき、風菜、息吹、沙耶、ユリカ、全員の心にビリビリと伝わり響いた。
そしてそう告げると、小坂は背を向けたままダッシュで降りて来た崖をよじ登って行った。
「お、おい!待てよ、小坂!!あんた、どこ行くんだ!?」
崖を登りきると、小坂はみずきの声に僅かだが後ろを振り返った。
大きく息を吸い込み、崖の下から見上げる魔法少女達に言い放つ。
「ニコラグーン……奴のいる場所は既に調べ済みよ……”横浜スカイデッキ”、そこの頂上で奴は下界を見下すようにふんぞり返ってるわ……全く、気に入らないわよね。人を見下し、この世界をめちゃくちゃにしたあいつを私は許せない……例えあんた達が来なくても、私は一人でも奴のところに行く……このまま世界の終わりが来るのを、指を加えて見てるなんて真っ平御免だわ!!」
「なっ……馬鹿なことはやめろッ!!勝てるわけがないだろ!!さっき命を大切にしろみたいに説教たれてた癖に、自分はハナから死ぬ気なのかよッ!!?」
「なら……私を助けに来てよ、ヒーロー」
「……っ!!」
強気で逞しい、その癖どこか悲しげな小坂の後ろ姿に、みずきは戸惑いながら又しても言葉を詰まらせた。
小坂は風を切り降下してくるヘリに勢いよく飛び乗ると、そのままニコラグーンの元へと一直線に飛び立っていってしまった。
無論、誰もがこの小坂のとんでもない行動を止めようとはした。
だが、その先に待つニコラグーンの顔を思い出すだけで、途端に彼女達の足は竦み、まるで金縛りの如くピクリとも動かなくなってしまっていたのだ。
空が歪む。今度こそ本当に殺されてしまうかもしれない……どっしりと重くのしかかるトラウマに、みずきは押し潰されそうなった。
みずきだけではない。ニコラグーンによって、魔法少女達に植え付けられた精神的負担は計り知れないものであり、誰もがこの状況に消沈せざるを得なくなってしまっていた。
だが、しかし、震える体を必死に押し殺しながら、一人の魔法少女が声を上げた。
「……”戦いでは強い者が勝つ。辛抱の強い者が。”……家康の言葉……諦めず、前へ進み続ける……息吹の言ったように、そんなみずきに私も惹かれたの……!!」
沙耶だ。
皆の目線を集めた先、そこには先程まで泣き崩れていたはずの沙耶の姿があった。
魔法少女の中で、最も精神的に追い詰められていたはずの沙耶が真っ先に立ち上がった。目を真っ赤にしながらも浮かべる生真面目な一点の曇りもないその表情に、他の魔法少女達の心は強く揺れ動いた。
と、立ち上がった矢先、足をフラつかせる沙耶。そんな彼女に、咄嗟にユリカが飛び出し肩を貸した。
「ユリカ……!」
「……今、ワタクシ達に出来る事全てをやり切るのが、一番ワタクシ達らしいと思いましてよ……!!」
互いに支えあいながら決意を固める二人。そんなに二人に続き、今度は風菜と息吹が立ち上がった。
「ボクはみずきに救われた……あの時のことは心から感謝してる。みずきを思う気持ちはみんなも同じはず……だから、今度はボク達がみずきを支える番だ……!!」
「……じゃとさ。これだけ心強い仲間に恵まれたんじゃ……さぁて、どうする相棒?」
「”相棒”……?」
「おいおい息吹、今そこに食いつくか……」
横から迫る嫉妬の目を気にしつつ、風菜はみずきに問いかけた。
みずきに惹かれ、集った仲間達は、みずきの知らぬ間にこれほどまで強く、そして大きく成長していた。風菜、息吹、沙耶、ユリカ、目の前に並ぶ頼もしい友の姿が、涙で薄っすらとボヤけて見えた。
ゆっくりと目を瞑り、自分自身の心の奥を覗き込む。決意を決めると、みずきはカッと目を見開き声を上げた。
「どうするか……だって?そんなの決まってるだろ……前へ、前へ、ひたすら突き進む!!例え倒れたとしても前のめりだ!!何故なら……私はヒーローだからだッ!!!!」
声を張り上げ叫ぶみずき、今まさに完全復活を遂げた彼女の姿に、皆が歓喜の声を上げた。
と、そんな中、みずきの目に、何やらふわふわとした白い物体が視界の隅にチラついた。
「……いやいや、だからヒーローじゃなくて魔法少女だって……でもまあ、それが、それでこそが、みずきの有るべき姿なんだろう……」
「ニュ、ニューン!?無事だったのか!!」
意を決して語るみずきの揚げ足をとるように、突然、ニューンがひょっこりと魔法少女達の前に姿を現した。
少し呆れ気味になりながらも、その表情はどこか嬉しげなものだった。
「ニコラグーンの攻撃を回避するため、やむを得なくユリカ邸地下まで避難していたんだ。僕の魔力不足によって瞬間移動が出来なくなった今、小坂の乗ってきたヘリにこっそりと乗り込んで君達に会いにきた……結果として君達を見捨てしまったことは謝る。本当にすまなかった……」
「いや、あんたが無事で何よりだ。……さて、これでようやく役者が揃ったわけか……じゃあ、ちょっくら世界救いに行きますか!!あと、ついでに小坂の馬鹿も助けにな!!」
みずきの言葉に全員が声を上げた。
意を決したみずきのその面持ちは清々しく、もはやその思いに一点の曇りもなかった。
悍ましい狂人との死闘が再び幕を開ける。
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