第27話 界壁
果てが、淡い黄緑の光明に煌めいた。
闇と闇の地平線の果てが、淡い緑の線になると――
果てより、緑の大海嘯がどどどどっ!と迫りくる。
突如、発現した謎の大津波。押し寄せる緑の大海嘯は聖の白光を放出し、きらきらと輝き、神秘的で、不動とも思える力強さがあった。
荒々しさがあり、見るものを愛念で包むような、暖かい高次元のエネルギーの津波。
シュラン達の頭上が、破竹の勢いで、緑の大海嘯によって塗られた。
上空から迫った
宇宙レベルの天災と天災の超激突。空間が、世界すらもが激震した。空間すらも裂くほどの大音響が、全方位、全空間、全世界にうねり響く。
大激震の波動が、シュラン達の全身、全知覚を駆け抜ける。その狂乱の振動は魂魄の根源まで届いたほどだ。
暗黒の大壁と大海嘯の激突線で――
ぱららららっ!
とオレンジ色の光球が咲き乱れた。波動の激しさ、凄まじさは次元を超越して、亜空間に点在する小さな世界を圧縮し、爆発させている。
《界壁!》
巨獣アンリが緑の大海嘯に対して憎らしげな波動を発散させた。
緑の大海嘯は完全なる界壁。膨張する大宇宙に合わせ、自己進化する究極の空間障壁、最強の壁。
それに聖波動を加味した【大聖界壁】なり!
《今だ! アンリを――――!》
ユミルの大波動があった。杖に縋り立つ、腹に大穴のある傷だらけのユミルがいた。あの大量の怪物達を撃退しつつ、界壁を創造したのだ。
シュランはユミルの波動に頷いた。シュランの右手が陽炎に歪み、妖しい燐光が立ち昇らせる。
シュランは右手をより山吹色に発熱させ、脚に絡まるフォルネウスの触手をなんとか削ぐと、時流速で疾走――
数本の触手が追跡してきた。
《行かせないよぉ!》
それらはミャウとゲオルグ達が連携攻撃し阻止する。
《ルオ!》
「はい!」
シュランの胸元に添えられたルオンの手が薄紅色に発光した。
ルオンから力を受け取ると、シュランは紫の瘴気を吐きだし、まずは右手にマイトエネルギーを集約させる。
暴走しかねぬ宿敵アンリを破壊したいという衝動。それをぎりぎりまで高め、右手に破壊の弾丸を込めるように強く意識。
さらにシュランは沸々とわき上がる濃密なマイトエネルギーを全身に行き渡らせる。その巡回させた力を、圧縮し、引き締められたバネのように、シュランは全身の隅々まで蓄積させ練り上げていく。
そして――
《――滅する!》
シュランは巨獣アンリの前方に布陣し、
いや巨獣アンリの後背で、シュランは膝を折り、赤い残光の尾をひく右手を水平に伸ばして構えていた。左手で抱き留められていたルオンが目をぱちくりした。前にいたはずのシュランがアンリの後ろにいる。
誰も何が起こったのか、判らなかった。
一条の光が閃いたなどの表現は稚拙。
光など鈍重。
刹那は皮肉。
一瞬は無意味。
シュランは時と同じ速度で、動いていたから。
すでに終わっていたのだ。凝縮した力を一気に解放した結果が、遅れて、現れる。
与えたのは、二撃。
漂っていた次元泡のてかりが、鏡のように、シュラン達をうつす。
アンリがにやっと笑った。
シュランの亀裂の闇も、にやっと笑った。
シュランは笑わなかった。笑わないのだ。ただ静かに、その結果を待った。
一拍の間あり。
天空より、黒い円形が飛来し、地面に鋭く突き刺さった。巨獣アンリの足元にあった円盤形の影界が切断されていた。
それが合図であったのか。
巨獣アンリは身体正中線より、上下に、ぐにゃとずれた。
刹那、アンリ右半身は閃光を放つが如く、豪快に、吹っ飛んだ。
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