テツ君の口から勢いよく出てきた言葉は、店中に響き渡った。

店内にはどよめきが広がり、あまたの視線が僕らの元に集まった。

しかし、テツ君はそのことに気付いていないようで、声の大きさは変わらず、むしろさっきよりも熱の入った声で言い募った。

「求職中となるとやっぱり一人暮らしは金銭的にもきついでしょうし、それに、心細いかな、なんて思ったり。あ、もちろん、下心とかは全然ありませんよ！　ひ、ひとつ屋根の下とか、ど、同棲だとか全然ひとつも考えてません！　ただ純粋に幸助さんを支えたいんです！」

身を乗り出して、熱心に言ってくれるテツ君に圧倒されて少し背中がのけぞったけれど、彼の善意にようやく気付いて僕は頬を綻ばせた。

「ありがとう、心配してくれて。テツ君は優しいなぁ」

不謹慎だけれど、こんな情けない僕を心配してくれる人が晴仁以外にもいたことが少し嬉しい。

僕の言葉にテツ君は顔を赤くして、肩を窄める様にして大人しく腰を下ろした。

「いや、優しいとかそんなんじゃないんで、その、お世話になった恩返しというか……」

褒められたのが恥ずかしいのか、落ち着かない様子でお冷のグラスを口に運んだ。

「でも、大丈夫だよ。実は今、晴仁の家に住まわせてもらってるんだ」

だから大丈夫、と彼を安心させようとしたが、ガラスの割れる音に遮られた。

見るとテツ君側のテーブルが水浸しになっている。

今まで手にしていたグラスは、床で砕け散っていた。

しかし、それよりもすごかったのは彼の顔色だった。

「ど、どうしたの！　顔が真っ青だよ！」

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