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「へ?」
「メイドちゃんどこいくのぉ? メイドちゃんはご主人様の傍に常にいるものでしょう~?」
へらへらと笑っているが、その目は獲物をとらえる蛇の目のように鋭い。
「え、えっと、でも、りょ、料理を運ばないといけませんし……」
必死に嘘を紡ぐ幸助だが、その目は泳ぎまくっている。
「え~、そんなのいいから、傍にいてよぉ。おれ、寂しいと死んじゃう系なんだよねぇ」
「いえ、あの、でも……」
あれで逃げ切れると踏んでいたのだろう、まさかの予想外の展開に幸助は戸惑っていた。
するとそこでタイミング良く、いやタイミング悪く、注文していた料理が運ばれてきた。
「お待たせ致しました、ご主人様! 『テラカワユスwwうさたんパフェ』と『起こしちゃだめ!おひるね中のふたごのくまたんオムライス』でございます」
みかりんがお盆いっぱいにのった料理をテーブルにどんどん並べていった。
「わぁ、おいしそう~! 一緒に食べよう~」
そう言って、桜季は幸助が座っていた席に腰をおろした。
「あら、新しいご主人様もご一緒ですか? 椅子をひとつお持ち致しましょうか?」
みかりんがすかさず気をつかって申し出たが、桜季は首を横に振った。
「いいよ、いいよぉ~。この子にはここがあるからぁ」
そう言うと桜季は幸助の手を引っ張って、自分の膝の上に座らせた。
この行動にさすがのみかりんも目を見張った
が、すぐに全て察したような満面の笑みを浮かべ頷いた。
「うふふ、それならよかったです」
「え!? 何もよくないですよ! みかりんさんよく見てください!」
助けを求めるように幸助がみかりんの方を見るが、彼女は笑顔でスルーした。
「この子、しばらく借りてていい~?」
桜季はまるでぬいぐるみを抱くようにぎゅっと幸助のお腹に腕を巻いて、上目遣いでみかりんを見た。
「もちろんです! それではこの席専属のメイドということで」
「みかりんさん!?」
まるで売りに出される子牛のような絶望的な顔をして幸助は叫んだ。
大げさにも思えるが、この店のメイドと名乗った手前、店側の人間が了承してしまえば、この席から動くことが叶わないのだから当然といえば当然だろう。
「それじゃあ、ご奉仕がんばってね! あおりん!」
至極楽しそうにそう言い置いて、みかりんはその場を去っていった。
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