第3話 第2章 回想と未来

 あなたの目に写っている私の人間像は、たぶん、すぐ逆上する気の短い男・物にあたったりイジワルをする陰湿な男・あなたやこどものことなど何も興味のない自分がやりたいことだけやっている男・隠されたギャンブル好きの男・多少変わった性癖を持つ男。みたいな感じだと思います。

 第1章では、真実と心理をお話しました。しかし、今から、ひとりの人間がそのときにどう思ったのか、そして、これから、どのように振る舞えるのかを述べておかなければなりません。そして、さらに、ひとりの人間が別の人間に変われるのかをお話しなければなりません。

 私は、急ぐことをやめました。あなたも、急ぐ必要はないと思います。この話の中にヒントと提案が含まれています。それを読み取ってください。

 第2ステージも、ヤンエグでいいじゃないですか。シニアに足を突っ込んだら、セレブなんて決まりはありません。世の中には、有形・無形の財産があります。有形の財産について、あなたは、誰もが認めるほどのものをすでに手に入れたと言っていいと思います。しかし、無形の財産、これが意味するものはいったい何なのか? そして、これを手に入れることこそが永遠のヤンエグだと思います。

 デパートに行くのが好きでしたね。覚えていますか? フロアを歩いているとき、あなたは、こう言いました。「私たちって、他の人から見たら、カッコよくて目立つよね。ヤングエグゼクティブ?」 ずっと、脳裏に焼き付いています。逆に、私を非難するとき、口癖のように、「ええカッコしいが!」と。

 世の中は、味方だと思っていたやつが、本当は敵であり、敵だと思っていたやつが、本当は味方であったというのは、よくあることです。この2年、私とあなたは、敵同士の存在であったため、社員は私に気を許し、私に対して、たぶん、言ってはいけない、秘密にしなければいけないことも口にしてきました。たいへん興味深く人間模様を観察させてもらいました。ただ、1つ言えることは、私は、あなたにとって、いつでも味方であるということです。

 最近のできごと。勝男が会社を辞めるに至った事件。このことに関し、あなたは、私を敵だと決めつけていますね。私は、その人間が悪(あく)なのか、そうでないのか、判断できます。勝男に関しては、最初から、悪だと私自身、発信してきたと思います。過去、極めつけの悪は、勝男、マキ、山名、芦沢など、詳しく挙げろといわれれば、いくらでも挙げることができます。アヤさんやミホさんは悪ではありません。アヤさんを採用するときに、この子は、まじめで、男に対してもちゃんとしているというのは、すぐわかったから、採用した初日に、本人に対して、「長く勤めたい?」 と聞いたら、「はい」 と答えたので、「それなら、沼田には気を付けろ。仕事の事務的な会話を越えた会話をしない方がいい。いずれ意味がわかるときがくると思う。」 「代表には、はっきりと、あいさつをしなさい。」 の2点だけ、忠告しました。ウソだと思うのなら、本人に聞いてもらってもいいです。ただ、ミホさんは年が非常に若いので、沼田のことは言いませんでした。そんなことを言ったら、若いがゆえに、この会社に疑問を抱き始めるからです。

 あなたが、沼田に、辞めて欲しいと思った理由は、たぶん、悪の部分が徐々に鼻に付き始めたからだと思います。基本的に、私があなたの味方であるというのは、私も最初から悪を感じていたという理由からです。ただ、ああいう状況では、誰かが事実の検証というか、ジャッジ的なポーズをしないと、アヤさんは、少し天然なところがあるし、ミホさんは若いし、という理由で負の連鎖を起こしかねないので、ちょっと口をはさんだだけです。「ええカッコしい」 ではありません。

 私は、この2年で、クリエイティブとイノベーションに関わるいろいろなことを積極的に学びました。あなたの考える経営哲学とは、少し、趣を異にしますが。 「復縁」のことを考え、気持ちがあせり、それがゆえに、ますます、対立を深めていったわけですが、それはまったく本望ではありません。今、日本と中国、日本と韓国は危険な対立関係に入ってしまいましたが、iPad関連の開発を始めたとき、とても印象的だったのは、みんなのiPadに対する捉え方でした。最初のころ、E社との関わりの中で、韓国がたいへん進んでいるから視察に行ったらどうかとか、布川くんに、こういう思想で開発を推し進めなければと、持ちかけたら、まるで、後ろ向きの答えが返ってきてビックリしました。お客さんがどういうものを望んでいるかわからないから、開発を進めるのは無駄ぐらいのニュアンスのことまで言ってきました。梨本くんもそうだった。いや、みんな、そうだった。

 スタッドから始まり、リンクロードへと、歴史は、クリエイティブとイノベーション(ベンチャー)の積み重ねだったはずが、みんな忘れてしまっている。

世の中にないものを創出して、世に送り出す。バックアップシステム・セキュリティシステム・画像転送システム・ポシェットの仕組み・Webシステムパックの仕組み・USBメモリ暗号化・・・  (唯一、学校業務支援システムだけがクリエイティブではなかった。)

 お客さんが求めているものが見えないから? お客さんは何も求めていないよ。なぜなら、お客さんは何も知らないから、ノーアイディアだから。だから、まさに、必要なのはクリエイティブとイノベーションなのだ。その時、私は、みんなに言った。戦う前から、中国や韓国に負けるつもりでいるのか? と。

 今は、少しずつ、みんな理解し始めてくれています。

 あなたが、代表者として君臨するのなら、全体会議のような場で、これからの 「リンクロードのビジョン」 なりを語らなければなりません。オンリーワン企業のカリスマにならなければなりません。ブルドーザの小松の経営に見られるように、時代は多角経営を要求していません。オンリーワンを要求しています。ナンバーワンでもありません。私は、あなたのパートナーとしてお役に立ちたいと節に思っています。2年で身に付けたものは、ドラッガーの経営理論(顧客の捉え方)であり、スティーブジョブズ(4年分のガジェット)の思想であり、知的財産戦略であります。語れといわれれば、1時間でも2時間でも語ります。「リンクロードのビジョン」イコール、まさに、クリエイティブとイノベーション なのです。その精神に沿った製品を世に出すことを考え続ければ、他の追随を許さないでしょう。アップル社は、次のように言っています。他の会社の追随を許さないほどのガジェットを手にしたうえで、新製品を投入せよと。みんなの発想では、教育ソフト イコール 教材? ツール? と短絡的にしか答えを出してきません。会議の中で、教材ソフトを作っても勝てないじゃないですか? とかいう意見が出ることがあります。教材ソフトを作るつもりは毛頭ありません。かといって、業務ソフトを作るつもりも毛頭ありません。我々がつくるのは、システムです。仕組みです。と言いきらなければなりません。「リンクロードのビジョン」について、分割して、あなたに提供していきます。もちろん、全体像も。それを重要な機会にアナウンスしてください。メディアへの露出をあなたは好まないのも知っています。が、堂々と語れるほどのものを提供します。あなたが、ほんとうのカリスマになることはやぶさかではありません。スタッドという会社の名前の意味は何だったでしょうか? 私が馬年だから、付けました。ある意味正解です。しかし、ほんとは種馬です。ただし、俗語では、精力絶倫男、転じて、男優などと恥ずかしい意味もあります。が、種馬は実に的を得ています。 「他人が考えもつかないことを次から次へと創造すること(クリエイティブとイノベーション)」 まさに、そのとおりです。私が死んだら、スタッドの称号を与えてください。それだけで、他には何もいりません。リンクロードはあなたにピッタリです。

 「リンクロードのビジョン」に合わせて、具体的な製品(システム)のキーワードを徐々に語り始めてください。 キーワードは、「バーチャルキッザニア」 「Eシチュエーション」 「Eネーミング」など、・・・  それに関連するキーワードは 「サンリオ」 「知的財産」「OEM」 など、・・・


 前にも述べましたが、マオにも、リサにも、活躍してもらえるものを十分過ぎるほど用意しています。私たちのこどもたちなら、クリエイティブとイノベーションを実践できると思います。

 1% あるかもしれない? 1%でいいです。血管の1%を流れる状態にしてくれるだけでかまいません。負のスパイラルをプラスのスパイラルに変えてみせます。酸化されていないフレッシュな血液を絶えず流通させることにより。

 そして、ひとりの人間が別の人間に。

 私は、元来、ロマンチストです。余裕があれば。

 いろんなエピソードがありましたね。

 食事のあとのあと片づけ。心理面から見て、一般の家庭では、まず、起こり得ないことでした。まさに、トラウマの塗り重ね。食器が乾かないうちに洗いましょう。疲れてやる気がなくなる前に洗いましょう。ところが、寝ていることに気がつかず、音を立てて大喧嘩。という結末。一種の学習障害でした。

でも、今は、学習されています。

 前にも述べましたが、普通の常識的な行動が飛ぶ現象が、私にはありました。H高校の入試の面接のとき、面接官のいる部屋にノックして入る場面で、私は先頭で入りました。ドアを開けてから、お辞儀をせずに歩いていき、面接官の前まできて、イスに座る場面で、やっと、お辞儀をしました。私に続き、4人がそのあと入ってきましたが、みんなドアを開けた時点で丁寧にお辞儀をしました。そのとき、はっとしました。ひょっとして、これが原因で落ちるのではないかと。結果的には受かりましたが、もう1つ、同じようなことが。法事で、お坊さんの前で、みんなお辞儀をするのに、私は、お辞儀をせずに、故人の位牌に対してのみ、お辞儀をして済ませてしまいました。さらに、何かのおりに、普通にあいさつをする場面でもうまくいかないことがあります。ごく普通のことができないのは、学習障害の一種なのかなあ?

 ほんとは、犬の散歩の時間が夕食の直前じゃなかったら、そして、余裕を持って生活していたら、いっしょに買い物に行って、別にこれといって買わなければいけないものがなくても、無駄な時間と思えても、余裕を持って、お店に行ってみて、欲しいものを買い、いいものがあったら、生マッシュルーム・トマト・イタリアンパセリ・すずきの切り身・生ハム・チーズ など買って、今日は、イタリアンにしましょう。が、普通の幸せな暮らしのイメージです。

 マオにカレーを作って、食べさせてあげて。が、最後のカレーだったのですね。もう1度、作らせてください。レパートリーは増えました。ペペロンチーノ・カルボナーラ・クレームブリュレ  ピザやカレーは前からです。

 達弥から、「世界1周でも行ったらどうですか?」と聞かれて、私が、めんどうくさいと答えたとか。しょせん、いい加減に交わした会話です。相手は、達弥です。それこそ、今でも、悪の匂いはします。あなたは、彼に対して、この文面の中では表せない表現で評価しました。覚えていますか? たしかに、しょせんその程度だと思います。でも、少し、許せるのは、「可愛がられるキャラ」だから、ということでした。でも、あなたに喜んでもらうためにやっているというのが、私も達弥も同じだね。と思ったら大間違いです。達弥のそれは、悪の匂いのする目的を含んでいるからです。会社のプリウスを日曜日に家に乗って行ったことを、その日のうちに通報したら、即、電話がかかってきました。GPSがばれたらまずいなと思いましたが、日曜日だったので、「日曜日は、私の他にも会社にきている人がいるよね。掃除する人とか・・・」 と言って、回避しました。たしかに、絶えず監視していないと危ない存在です、彼は。

 H社とO市の関連の件もそうです。保身のために、重要なことを隠しているので、判断を間違うことがたびたびあります。学習履歴の記録システムだって、H社がS社と縁を切って、リンクロードで行くという、さもほんとうらしい情報があったから、学習履歴の記録システムを格安で引き受けることによって、学習支援システムも参入できる可能性があるのだと思い、開発を引き受けたわけですが、H社の態度が日に日に変化し、T市に至っては、次もリンクロードでいくと言っていた矢先に、S社に変えられ、さらに、その情報が得られてない状態で、iPad関連の開発の紹介に行くなど、完全にすべてハマったと言ってもいいでしょう。達弥の話は、話半分ではなくて、1割か2割で聞いておかないと危険すぎます。そういった意味では、悪でしょう。

 といった背景がありますが、もし、世界1周があり得るなら、ぜひ、いっしょに行きたい。ベトナムのニャチャンやダナンのプライベートプール付のホテルでのんびりしたい。モルディブの水上コテージでゆっくりしたい。

 あなたが、あげまんであることは間違いありません。あなたが捉えているあげまんは、私を社長にしたこと。でも、私には、社長の役割はできませんでした。あなたは、私を職人とも表現しました。でも、私は職人でもありません。唯一、言えるのはイノベーターなのでしょう。

 夫婦のあるべき姿として、あなたは、「私を、手のひらの中で、泳がしてちょうだい。」 言い換えれば、愛をいっぱい、いっぱい与えてね。ということです、が。サラリーマン家庭においては、それでいいのでしょう。でも、私たちが置かれた環境は、世間一般とかけ離れたものだったと思います。私が、あなたの手のひらの中で泳がしてもらっていました。わかっています。感謝しています。でも、結果的に、そのあと、さらに、大きな手のひらの中で、あなたに泳いでもらえればと。そうなれば、きっとわかってもらえる。と思い、がんばってきました。本当にそういう気持ちで、あなたに喜んでもらえればという気持ちだけでがんばってきました。

 達弥が、普通の感覚で他人を心地よくする能力をもっているのは、私も、あなたも認めています。でも、彼には、悪の要素があることも間違いありません。

 彼が、あなたに喜んでもらう行為は、私のそれとまったく逆のものであることは、あなたも十分わかっているはずです。保身のため、面白おかしく話を作れば、聞いている人は、心地よくなり、結果的に、話の内容の1割も真実が含まれていないのに、魔術にかかってしまうのです。

 私は、不器用です。あなたは、違うというかもしれませんが、私の行動は、マック(愛犬)の行動といっしょなのです。そばにいるのに、わざわざうしろ向きに座って、さも何もないように平常心を保ったふりをする。実際は、いつでも、あなたに喜んでもらいたいという気持ちでいっぱいなのに。2、3日、日をあけて、久しぶりに会えば、このうえない嬉しさを表現し、喜んでもらえることを知っているマック。私も、1つのイノベーションが成功することで、このうえない嬉しさを表現し、喜んでもらいたいのです。

 とりとめもない話の方向に、行ってしまいそうですが、基本的には、経営方針として、ブレない1本の筋は通していますし、相変わらず、ノーテンキなところもあります。

 まだまだ、書き足りません。

 続きは、またあとで。

 

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