百々

ロータス 葉山

第1話 序章

 私はギャンブルが大好きです。私は女が大好きです。すべて白状します。

私は、隠していましたが、ギャンブルが大好きです。機会があれば、また、まとまったお金があればと、いつも狙っていました。実際、ギャンブルなら何でもいいのです。あのギリギリの駆け引きが、スリルと興奮がたまりません。一度やり始めたらずっとやっています。ゲームもそうです。一度やり始めたら攻略するまで、夜も寝ないでずっとやり続けます。私にお金を持たせたら、全部無くなるまで、遊び続けます。こんな人間だったので、しかたがなかったと思ってください。

 私は、隠していましたが、女が大好きです。機会があれば、あの女と何かしようと、いつも考えています。頭の中はそれだけです。

 だまして、悪かったと思います。最低な男と結婚して、あなたは、あなたの人生を後悔しても後悔しきれないと思います。ごめんなさい。

 やっと真実がわかって、気持ちがすっきりした。やはり、選んだことが正解だったし、ふんぎりがついて本当によかった。

 ということで、納得していただけましたか?

 私が、あなたの人生をめちゃくちゃにした。

 話は、これでいいのですね。

 あなたと結婚して、あなたとの結婚生活の中で、ゲームにのめり込んで、深夜まで夢中になっている私の姿を目にしたことがありますか? お小遣いを貰って、休日に、一目散にパチンコ店に出かけていく私の姿を目にしたことがありますか? クレーンゲームに何千円も注ぎ込んで、夢中でぬいぐるみをトライしている私の姿を目にしたことがありますか? 人目を盗んで、こそこそ馬券を買っている私の姿を目にしたことがありますか? すべて、ないと思います。すべて、興味がありません。宝くじだって、今までに数回しか買っていません。私に自由な時間を与えてくれるのであれば、第一にからだを鍛えることに費やします。第二に知識を得ることに費やします。まとまった時間ではなく余暇の時間であれば、お笑い番組をみるか、何かおいしいものでも作るでしょう。本当にまとまった時間が得られれば、絵を描くでしょう。


 女はきらいではありません。きらいだったら、あなたと結婚していません。男は、多かれ少なかれ、余分なことを考えます。でも、そこは単に理性の問題であると思います。結婚してから、一線を破ったことは一度もありません。


 ここで、少し、夢中になるということを客観的に論じておきます。また、次の第1章では、その心理について触れます。


 株に夢中になる。

 あなたとあなたの実家の人たちは、夢中になること自体がギャンブルだと定義しました。その定義が正しいのなら、それに従います。

 でも、クリエイティブなことをしている人は、すべてギャンブラーなのでしょうか? 夢中で絵を描く。夢中で楽器を演奏する。夢中でプログラミングする。クリエイティブな仕事はすべて、夢中を伴います。私も例外ではありません。一旦、画面上にボタンを配置して、文字の色とその背景の色の調整を気が済むまでやり続ける。文字の色=FF8FEF, 背景の色=5577DD, 変更後、実行して配色を確かめる。 文字の色=FF8FE0, 背景の色=5577EE, 変更後、実行して配色を確かめる。この動作を気の済むまで、納得のいくまで、延々とやり続けるのです。

 確かに、外から見て、株取引きを頻繁に繰り返している姿は、単純に株に夢中になっているということと捉えられるでしょう。でも、やっている本人はというと、プログラミングといっしょで、思考錯誤を繰り返しているだけなのです。このチャートを見て、この株は次にこういう動きをするだろうと予測し、売買を行う。しかし、予想と反した動きをしたため、次の手段、方法を考え、それに切り替える。うまくいったらうまくいったで次の行動。うまくいかなかったらうまくいかなかったで次の行動と、この繰返しなのです。基本的に偶然の数字を当てるために、次から次へとお金を注ぎ込むのとは意味が違います。

 クリエイティブな気質が故に、落ちた落とし穴だったのです。


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