第24話 組変わる世界

「もうすぐ精鋭部隊の到着よォ…チェックメイトかしらァ…」


制御塔の前で戦闘中のディーナが勝ち誇った顔でそう宣言していた。


「さて、それはどうかな?」


ライアンは最後の最後まで諦めてはいなかった。


そんなギリギリの攻防の中で僕らは帰って来た。タイムリミットギリギリだ!


「帰って来たのかよ!」


「早く!」


「準備はとっくに出来てる!」


「…」


相変わらずの4人の姿を見て僕は戻って来た事を実感した。

そして見えないちゃんは龍から預かった宝玉をすぐに装置にセットした。


ブゥゥゥゥン!


宝玉のセットと共にすぐに起動する最終兵器!じゃなかった制御装置。

僕にはよく分からないけどこれで全部うまく行くんだよね?

世界に平和が訪れるんだよね?


装置が起動した事でシャンバラの空気が変わっていく。

その気配を敏感に察知したのは外で戦っている二人だった。


「…やったな!」


ライアンは制御塔を見上げながら勝利を確信した。


「う、嘘よォ…ここまで…何百年もかかって積み上げてきたのよォ…こんな事でェ…後もうちょっとだったのにィ…」


そう言ってディーナは崩れ落ちる。

それは彼女が企てていた長年の野望が潰えた瞬間だった。

空間の組成が組み替えられて開いていたゲートが閉じたのだ。

これでもう精鋭部隊はここには来られない。間一髪だった。


この変化はこれだけでは済まず、更に次々と変化し続けて行く。

最早誰にも止められない。やがては世界はまるごと作り変えられて行く。


ライアンは塔を見上げながらつぶやいていた。


「トッシー、ありがとう…そしてさよならだ…」



制御室内では制御システムが順調に稼働した事により4人はそれぞれ専門の作業に移るために制御塔を離れて行った。

あれだけ賑やかだった空間が次々と静かになって行く。

制御室内にはいつの間にか僕と見えないちゃんの2人だけになっていた。


「あれ?見えないちゃんは行かないの?」


「うん、最後に言わなくちゃいけない事があって…」


見えないちゃんは改まって僕に向かい合って話を始める。

な、何だろう…ここまで真面目な見えないちゃんは初めてだ…。


「これでエネルギーの歪みも時空の変動も正しく直される事になる…あなたのおかげよ…」


「あ…うん」


何だかこの先の展開…段々と読めて来た…。

つまりこれって悪い知らせだ…物語終盤にありがちな…。


「これでイルミナティが過去に関わった全てがなかった事になる…私の一族の存在も…」


「…消えちゃうの?」


「ううん…守り人はこれからもこの星を守り続ける…それは変わらない…」


そっか…干渉した部分だけ修正されるんだ…仕組みはよく分からないけど…。

しかし見えないちゃんの答えは微妙に僕の質問をはぐらかしていた。

その理由も分からなくはないけど…。


「ただね…君の中の私の記憶も消えてしまうの…」


「やっぱり…」


「本来出会うべきでない二人が出会っていたんだから当然よね…」


伏し目がちに淋しそうにそう話す見えないちゃん。

僕も覚悟していたとはいえ、実際に耳にするとかなりショックだった。

あの濃い時間が…成長出来た経験が…目覚めた能力すらみんななくなってしまう…。

世界が平和になる代わりにまたあの抜け殻の日々が戻るのかよ…。


「どうにも…ならないんだよね…?」


「うん…ごめん…」


見えないちゃんの目から一筋の涙が…見えた気がした。

僕はそれが見間違いでないと…そう思った。


「何謝ってんだよ…笑おうよ…仕事がうまく行ったんだから笑わなきゃ!」


「…そうね…君も言うようになったじゃない!」


見えないちゃんはそう言って僕の額を軽く小突いた。

ああ…いいな…こう言うの…。

こう言うほのぼの感こそ僕が求めていたものだったんだよ…。


ぐにゃあ…


…あれ?おかしいな…視界がぼやけていくぞ…。

ちょ、ちょっと!まだこっちはこの事態を認めてもいないしお別れだって言ってない!

待って!こんなので終了なんてありえないよ!

まだまだ聞きたい事もあったし、話したい事もあった!

こんな最後だなんて聞いてないよ!

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