on the planet

トロワル

ヒマツリサワギ

 アルとメラは手を繋ぎながら次の惑星へと降り立った。ここは灼熱の惑星。熱をもつ大地に支配された世界だった。


「ねぇアル、ここはどんな惑星?」

「地面がとても熱いんだ。だから大抵のものはすぐに燃えてなくなってしまう」


 メラは周囲を見渡してみた。あちらこちらで噴き出す水蒸気と転がる岩。時折思い出したように火の手があがることを除けば何もない、荒廃した大地が広がっている。

 なんだか退屈なところだな、とメラは思った。


「こんなところでもニンゲンは生きていけるの?」

「うん、ちゃんと生きているよ。ほら、あそこを見てごらん」


 そう言ってアルは、メラと繋いでない方の手を使ってある一点を指差す。その先には、ピョンピョンと飛び跳ねる赤黒い物体があった。焼け爛れた皮膚、苦悶の表情を浮かべながら飛び跳ねる生物。これがこの惑星のニンゲンだった。


「わ、本当だ」

「あっちにももう一人いるよ」


 そこにニンゲンがもう一人。同じく苦悶の表情を浮かべながらピョンピョンと飛び跳ねている。どうやら大地の熱のせいで、一回一回飛び跳ねるたびに激痛が走っているらしい。アルとメラが見守る中、新しくやってきたニンゲンは突如そこにいたニンゲンを殴りつけた。


「!?」


 殴られたニンゲンは潰れた悲鳴をあげ、そのまま地面へと倒れこむ。マウントを取るように殴打を続けるニンゲン。メラはアルの手をぎゅっと握りしめる。そしてとうとう、殴られたニンゲンはそのまま動かなくなってしまった。残されたニンゲンはそこで初めて安堵の表情を浮かべると、ニンゲンだった物体を踏みつけ、そしてゆっくりと溜息をついた。


「何してるの?」

「あぁすると熱くなくなるんだよ」

「・・・・・・」

「少しの間だけだけどね」


 肉と脂肪の焼ける臭いが漂い始める。程なくしてヒトだった物体は炎を纏い燃え始めた。慌てて飛び退くヒト。そしてまた、苦しそうにピョンピョンと飛び跳ね始める。


「ほらね」


 そしてニンゲンは、そのまま何処かへと消えていってしまった。


「あのニンゲンは、また誰かを殺しに行くの?」

「うん。誰だって熱いのはイヤだからね」

「ふーん・・・・・・」


 うつむくメラ。アルにはなんとなく、メラの考えていることがわかるような気がした。それから少しして、ふとメラが顔をあげた時アルは優しく声をかけた。


「メラ、あそこを見てごらん」

「?」


 言われた通りにするメラ。その先には二人のニンゲンがいた。焼け爛れた赤黒いニンゲン。そのニンゲンは同じく焼け爛れた赤黒いニンゲンを肩に乗せて、焦げ付いた臭いと共に一歩ずつ歩を進めていた。


「こういうニンゲンもいるんだ」

「そうだね」

「でも、このままだと下のニンゲンは結局死んじゃうんじゃない?」

「・・・・・・そうだね」


 二人分の体重がかかっているせいで飛び跳ねることも難しく、その足取りは重い。激痛に耐えながらも進もうとするが、次第に前に進むことができなくなり、とうとう立ち止まってしまった。足元から火が付き燃え始めるニンゲン。最後の力を振り絞って肩に乗せていたニンゲンをそっと優しく降ろすと、そのまま炎に包まれていった。


「ねぇアル」

「なんだいメラ」


「あのニンゲン、最後に笑ってたね」

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