プレビアス ライフ! ~源一家「いざ鎌倉へ」~

surisu

0.奇怪な初めまして

 それはある夏の日の出来事であった。空には三日月、昼の気温よりは多少ましになったが、まだ暑く生暖かい風が、俺たちの髪を揺らしていた。

 場所は鎌倉、鶴岡八幡宮。正面から境内へ入って真っ直ぐ進んだ先にある、大階段の真下に我々は皆、空を見上げて立ちすくしていた。月明かりだけが、辺りを照らしている。

 そして、場に居合わせるは俺を合わせ五人の男女。一般常識を持つ俺に、人生をこじらせた頭にピンク色の花畑を持つ女が一人。

 出会ったばかりの胸の大きなおっとり屋の女が一人。

 言葉すら交わした事がない、今しがたまで人智を超えた動きでもって、跳ねては妙な黒い棒を空から降らし戦っていた、尻がまるだしになっている巫女服の女が一人。

 同じく巫女服の女と戦っていた、レオタードのようなピッチリとし、背中がパックリと開いた服を身にまとった黒い蝶を操る女が一人。

 俺が以外は皆変人ばかりの奇怪な集まりであった。

 だが、そのおよそまともではない集団をもってして、我らが見上げるものは、よりいっそう奇妙で驚異的なものであった。


「アレは…何だ?」


 思わず俺は疑問と不安を口にしていた。だが、俺の言葉に答える者はいない。

 五人の若者は頭上を見て、皆慄いていたのだ。

 頭上には三日月そして、


「あの巨人は…幻かなにかなのか?」

 

 我らを見下ろすは、五十メートルは有に越す、巨大な男であった。ボロボロの着物を身にまとい、八幡宮の本宮から顔をのぞき我らを訝しげに見つめているのである

 巨人も含めた以上六名が、この後に待ち受ける、奇怪且つ異常で好奇心を揺さぶる冒険の主要人物であった。物語はこの瞬間から始まり、鎌倉を救うまで続くことになるのを、この時の俺は知る由もなかった。

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