第81話「ついに見つけた眼鏡」
「先程は御助力いただき、ありがとうございました。おかげでドラゴギラスを撤退させることが出来ました」
「いえ、お気になさらず。うちの子が暴走してしまったもので……」
現在、私達は戦闘機人達の基地内に案内されて感謝の言葉を貰っている。最初は余計な介入をしてしまい、怪しまれると思ったが、むしろ援護攻撃でドラゴギラスを撤退させたと捉えてもらえたようで、謎の援軍として取りあえず感謝されている。こちらの事情を噛み砕いて説明した。自分達は未知の力を持つ存在や物質を取り締まる組織で、危害が及ばない様に旅をして回っているとそれらしく説明した。
「うわあああぁぁぁぁぁぁバイラぁぁぁぁぁぁぁん!!」
私が説明している後ろで、モコが顔面を涙でぐちゃぐちゃにしながらバイラに抱き付く。抱き着くと言っても、アンチバレットコア化しているので両手で握るが正しいが……。
「バカバカバカバカ! いきなりあんな狂暴化じぢゃってお姉ちゃんじんばいじだんだがらぁぁぁぁぁ!!」
頬擦りしながら滝のような涙を流し……いや、撒き散らすモコ。果たしてバイラの届いているのか……。
「モコちゃん、バイラちゃんはしばらく興奮が冷めないと思いますわ」
「そうよ、痺れ効果が効いているうちに早く旦那のホルスターに収めないとまた暴走しちゃうわよ?」
「わ、わがっでるわよ~! はい、イートさん!」
「ありがとう」
鼻をすすりながら涙を振り払うモコがバイラを私に手渡す。ホルスターに収めてロックオンを掛ける。これで沈静化が働いて大人しくなればよいのだが、もし自力で変身できる術を会得していた場合は……我々の命は無いかもしれんな……。さて、バイラを収納したところで……。
「おい、オバカニア・フォー!!」
割と本気の怒りを込めて彼女らを呼ぶ。まったくこいつらは、探しに行ってみたらご丁寧に屋根の上に引っ掛かってあられもない醜態を晒しおってからに……。
「なんスか? おバカなんてひどいデース」
「イライラしてるのですかブーン?」
「もしかして、怒っていマス?」
「ダナ? 何故ご立腹何でしょうか?」
「君達に怒ってるんだよ私は!?」
「「「「マジスカ~!?」」」」
「マジだよ馬鹿ども!」
「お~う何故にホワーイ? アンチ様がどのようなギャグをかますのかは知りませんが~、助けられたからいいじゃないデスか?」
「バリバリに気合い入れて助けましたブーン!」
「私たち、全力全開で任務を成功させましたよ? 褒めてほしいです!」
「だな? 被害も出していませんし、バイラに怪我もさせておりません!」
「だから止めるまでのおバカな行動と回収してからの油断と醜態について怒ってるのお父さんは!!」
「「「「えぇ~!?」」」」
「えぇ~じゃない!!」
と、悪気や反省の色が全く見えないアラクニア・フォー。どうしてネアが4人に分裂するとこうなってしまうのか全く理解不能だ。優れた能力を獲得している代わりに性格面がおバカになっているのか? 元のネアはあれだけ健気に頑張ってくれて、突っ込みどころや怒りたくなるところなど見当たらないというのに。
「ちょっと旦那~? 4人に分裂した蜘蛛姉さんに説教しても仕方ないでしょ~? 結局元は1人なのよ? 逆に空しくなるわよ~?」
「フフフ、そうですわよ? むしろネアちゃんに説教しているのと変わりませんわよ? 記憶と意識の共有関係がどうなっているのかは存じませんが、戻って泣いたらどうするんですの?」
「はっ!」
そ、そうだ。コルラとピーコの言う通りだ。結局元は1人なのだから、彼女たちに説教していることはネアに返ってくるわけで……ん? でもネアの人格が4つに分かれて別々の人格になっていて、でもネアは記憶はあるが自覚は指定なかったし……。
「無かったことにしよう。思考回路がショートするから」
「切り替えはやっ!?」
「フフフ、思考の袋小路になるもの」
いかん、アラクニア・フォーの説教に移行してしまったから、戦闘機人の方々が困っている。話を戻さねば。
「さて、失礼致した。話を戻そう。突然ですが、貴方方の周りで何か最近未知の物質が発見されたという報告がありませんでしたか? なにか、危険な物を見つけたり、変わった事はありましたか?」
「未知の物質ですか……?」
「危険な物?」
「変わった事ですか……」
男女共に唸り声を上げながら考え込む戦闘機人達。しかし、悩んでいるところ申し訳ないが、さっきから視界が濃ゆい赤に切り替わっており、ここにチートアイテムがあると警告している。一応失礼のないように話を聞いているのだが……。まさか、この子達に関係のある事じゃない事を祈る。
「あ、最近ありまくりじゃねえか、変わった事」
「あ、確かにあるです」
「そういえば急ににおかしくなったわね」
突然、全員騒ぎ出した。何と全員心当たりがあるようで、何やら不穏な空気が漂い始めた。これは、相当やばい事か?
「えっと俺らのそっくりさん」
「え私?」
確かに私は半サイボーグだから君達に親近感を抱いてはいるが、そっくりさんと来たか。あとこの子俺っ子なんだな……。
「実はよ、俺らの長官が最近眼鏡を駆けだしたんだけどよ。それを掛けてから明らかに挙動不審になるときがあるんだよ。しかもやたらと覚えたり泣いたり、冷たい態度を取る時があってな。俺らの中でも行方が分からなくなったり、記憶が無くなってる奴が出てきてよ」
「何だと!? ではぜひその長官の下へ案内してくれないか? 君達の事も聞きたいが、もしかするとその長官はチートアイテムを図らずしてもっている可能性が高い!」
「え!? お、おうそりゃ大変だ! いいぜ。丁度長官もアンタにも礼が言いたいらしいからな。えっと」
「では、秘書のわたくしが案内しましょう!」
秘書と呼ばれる彼女に案内されて私達は長官室へと向かう。増々チート反応が強くなる。これはもはや当たりだ。さっきからチェイサーとサイダーが一言も喋らずに沈黙を保っているが、外れではないではないか。戦闘機人達が話してくれた不審な態度と挙動不審。そして行方不明者や記憶消失者の件でも、その長官が関っている事は確かだろう。
「失礼します、長官。お客様をお連れいたしました」
秘書の女性がドアをノックして、中から返事が返ってくる。彼女がドアノブに手を回してドアを開く。その瞬間、チート反応が急激に強くなる。目の前だ。目の前にいる。豪華な木作りの机に頬杖を着いて待っていた、白い軍服に身を包む長官。まだ若い顔立ちに毅然とした雰囲気。そして……目に掛けている眼鏡。
「ようこそ我が司令部へ。私はここの長官を務めさせております。先程は突然のご助力感謝致します」
「……見つけた」
「……はい?」
「……眼鏡か……」
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