第2話 桜川那子は江坂悠李に僅かな望みをかけると決めた (8)

 そのまま座っているわけにもいかず、那子は出入り口に向かう。レジに立っていた先ほどの女性スタッフに会釈して、那子はファミレスを後にした。

 いつもより足早に歩きながら、苛立ちが募る。バイトの面接に行ったはずが、何でこんな事に!?

 同じ学年のチャラ男に、秘密を知られ……訊いてもないのに、携帯番号を教えられ……もっともらしい理屈で、自分の携帯番号を登録されて……LINEまでも……。

 学校だけでも憂鬱なのに、その上バイトまでなんて、気の休まる時がない。

 このままバイトをばっくれる事も考えた。けれど……バイトに行かなければ、秘密はすぐにばらされてしまう。

 何もなかった事には、もう出来ない。残された道は、たったひとつだ。

 この日、桜川那子は、江坂悠李に、わずかな望みをかけると決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る