Ⅴ:無人タクシー
俺はバーを出ると、再び右の親指と人差し指、中指をくっつけた状態から左手でぐっとその三本の指の爪をつまんで圧迫し、脳内サイバーアクセスした。道幅はあるが、他に人が集まる目立った店舗のない殺風景な路地通りの風景に、半透明の脳内視覚ヴィジョンが重なる。そろそろ日没が近づこうという頃で、薄暗くなりかけた五月の空気に、サイバーアクセス案内の図やアイコンのヴィジョンが空中に重なって表示されるのは、初夏の心地よい空気を感じて内省する意識に新たに非実在感覚が加わることにより、自分の意識、感覚と世界が奇妙にふわふわと調和して一体化するかのような錯覚を起こさせた。表示されるアイコンや図の指標にしたがって思考を移ろわせ、目当てのサイトにアクセスする。サイバー意識操作すると、『ゴ依頼地点マデ1分デ到着』と円形の光が点滅しながら文字メッセージが流れた。再び意識を`振り’、脳内サイバーアクセスを切断する前にふと、右上に日付、時刻などとともに表示された気温表示を見る。華氏74.5度。ちょうどいい気候だ。
バーの前で立って待っていると、通り向かいの歩道の右に離れた所で上に合わせ襟の白装束、下には
「3番地4丁目のアパートまでやってくれ」
俺はふっくらした円座形ソファーに身を沈めながら言った。目的地まではさっきのタクシー呼び出しの際に脳内サーバーアクセスで指定することもできたが、
俺は今しがたバーで飲んできたウォッカで少し火照った頭を、清流のような音の流れと、これも滑らかに滑る車外の風景を眺める――やはり白装束と
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