第46話 ★11★ 9月5日木曜日、放課後

 ――こう

 窓から紅が校内に戻るのを見る。それで抜折羅ばさらははっとした。スマートフォンで遊輝ゆうきを呼び出す。この時間、遊輝たちは二階の生徒会室にいるはずだ。

 コール音はほとんどしないままに電話が繋がった。

「悪い。紅を頼む、先輩。スティールハートですぐに場所の特定を」

「了解。……紅ちゃんは地学室に向かっているみたいだけど……他の魔性石の反応? 芸術棟に、どうして?」

 ――落下物は陽動かっ。おびき出されたっ!

 抜折羅は体育館方面に向けていた足を止めてUターンをする。芸術棟のある方向と真逆だからだ。

「わかった。芸術棟は俺が行く。先輩は早く紅と合流してくれ。嫌な感じがする」

「なんで離れ離れになっているのか知らないけど、任せておいて」

 通話が切れる。文化祭の準備でざわつく廊下を、抜折羅は駆けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る