第43話 ★8★ 9月4日水曜日、放課後
――解決までに時間はかからないと踏んでいたが、甘かったみたいだな。
――単独犯ではないってこともあるのか。ファンの人間を疑っていたが、もう少し集団を束ねられる人間に目を向けたほうがいいか……。
掲示板も見る。人気のある生徒のチェックだ。そのあとで遊輝に電話を掛ける。
「はい? あんまり電話してこないで欲しいんだけど。男の声って色気がないから、仕事に差し支えるんだよね」
気持ちに少しは余裕があるようだ。冗談を言えれば心配はいらないだろう。
「仕事中にも拘わらず、電話に出てくれる
「今は緊急時だから、特別ね。――で?」
促されて、抜折羅は本題を切り出す。
「ロイヤルブルー以外で人気のある人物――できれば、ファンクラブと言われる程度になっている生徒っているのか?」
訊ねると、遊輝は電話の向こうでうーんと小さく唸った。
「僕のクラスにいる
「翠川皐月? 俺のクラスじゃないな」
抜折羅の反応を受けた遊輝は補足するために続ける。
「一年B組の、背のちっちゃい女の子だよ。幼児体型なのが物足りない感じだけど、将来性はあるね。入学当初は眼鏡をしていて、生徒手帳の写真も眼鏡だったはず。コンタクトにしたのか、眼鏡やめてから急に注目されるようになった気がするよ」
あまりにもさらさらと告げるので、抜折羅は思わず引いた。
「……訊いておいて何だが、詳しいな」
「絵の題材のために、学校の女の子はちゃんと覚えておくようにしているんだ」
「それは自慢することなのか?」
「えー、そういう反応で返すかい? ――そうそう。君にもファンはいるみたいだよ。僕たちのファンを疑っているみたいだけど、自分の周りもよく見たら? 災厄の申し子くん」
「ご忠告、傷み入ります。――お仕事中、お邪魔しました」
「いつでも掛けてきなよ。どうせこんなに気が立っていたら、まともな絵なんて描けないし。早く事件が収束するなら、協力させてもらうよ」
遊輝の台詞に礼を言い、通話を切った。頼りたくなる相手ができてしまったことに気付いて、抜折羅は少しだけむず痒く感じた。
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