第28話 ★8★ 7月27日土曜日、夕方
そのやり取りまでを遠くから見守ってきた
「家に入っちゃったし、どうする?
これまで見ていたところ、とりわけ触れることなどなく、昼食、買い物をこなしているようだった。それは兄妹のように仲むつましく感じられるほどだ。
――
抜折羅は本当の姉のように接してきた沙織のことをふと思い出す。そう言えばこの任務についてから連絡していなかったな――などと
「なんかおかしい」
腕組みをして、屋敷を見つめている。
「こ洒落たレストランで優雅にランチして、宝石店を物色。靴と鞄も見ていたな。しまいにはドレスの試着と購入だ。舞踏会にでも出るのか? どこの貴族だ、ここは日本だぞ!! ブルジョワがっ!」
月に数百万を稼ぐ白浪家の人間がよく言うな、と思いつつ抜折羅は返すことにする。
「まぁ、そうだな。パーティーに行く準備には見える。各企業のトップが集うような会に出たとき、義母さんがそんな感じだったし」
さらりと告げられた抜折羅の過去を
「――君、何者?」
「想像にお任せしますよ、先輩」
自分語りは好きじゃない。過去の不幸を同情されることも、現在の優遇された立場を
抜折羅はふっと笑うと続ける。
「で、ここで張り込むつもりですか? 俺、そこまで暇じゃないんですが」
「ふぅん。――僕一人なら中に入るのは容易いんだけど、予告状も出しちゃったことだし、様子見かな。抜折羅くんは帰ってもいいよ。お疲れさん」
「では、俺はこれで」
遊輝と別れると抜折羅は辺りを警戒する。スマートフォンを取り出して、まずは電話をかけたのだった。
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