第16話 ★6★ 6月20日木曜日、放課後

 放課後、抜折羅は調査のために私室として使っているエキセシオルビルの七階に帰ってきていた。

「やっぱり、地理的な部分以外に確実な共通点はなさそうだな」

 手配していた調査資料に目を通して得た結論である。怪盗オパールの被害者の共通点を洗い出そうと思ったのだが、所有者が同じ店や施設を利用していたという情報も特にはなく、持ち主の年齢や職業はバラバラだ。共通する知り合いがいたわけでもないらしい。

 わかったことといえば、犯行現場が宝杖学院の学区に集中していること、持ち主の知り合いには宝杖学院に通う生徒が含まれているということだ。中等部と高等部を合わせても一三〇〇人に満たない割には、いささか偏っているように映る。

 ――だとすると、魔性石の感知に秀でたタリスマントーカーの可能性はあるか。

 ホープでも魔性石を感知することはできるが、接触に近い距離にならないと確実なことは言えない。例外的に力の強い魔性石であるフレイムブラッドなら、ホープの力を解放している状態を前提として、ある程度離れていても感じ取れるようだ。惹かれ合うようにホープ同士が互いを認識するらしいことはこれまでの経験上わかっている抜折羅だったが、フレイムブラッドの例外は興味深く感じていた。

 ――怪盗オパール……確か、ヨーロッパでは昔、オパールは姿をくらませると信じられていて、盗賊が御守りにしていたって話があるんだよな。それにちなんだ名前かと思っていたが、それだけじゃないのか?

 そのとき、ふと瑠璃が言っていたことを思い出す。

 ――長い空白期間を置いて、青空先輩の持つ石をターゲットにした理由は何だ? それに、紅の靴箱に予告状を入れるタイミング……。犯人は学校にいるんじゃ……?

 そこまで考えて、抜折羅ははっとした。紅を宝杖学院に残したままなのだ。学校内に犯人がいる場合、彼女を襲う可能性は捨てられない。一度逃してしまったのだ、機会があれば狙うことはあり得る。

 ――美術部に顔を出すと言っていたな。学校に戻るか。

 抜折羅は浄化用のクラスターを入れたウエストポーチを身に付けると、青い傘を持って私室を出た。

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