■第一章■~始まりの日々~

追加話 少女グリーナ その1


 ―――彼の物語が始まる前に、その師となる少女の昔話をしよう。



 爽快な朝、美しい緑髪をポニーテールにしている少女が言った。


「お師匠様! 見てください。初級魔法を覚えました!」

「あらあら、中々飲み込みが早いわね」


 少女の名前はグリーナ。

 孤児となり彷徨っている所を、お師匠様と呼ばれた女性に拾われた少女だ。

 お師匠は赤髪の大魔女と呼ばれた女性、セドナ・マキシマ・ミディランダである。セドナは、ミディランダ公国大公家の一族であり、有名な魔法使いだった。


「貴方には才能があるわ。次の魔法を教えましょう」

「はい! ありがとうございます。お師匠様」

「フフフ……可愛い子ね」


 グリーナは神童だった。

 瞬く間に見習い魔法使いとなり、短期間で魔法の習得を進めていく。

 性格は優しく愛嬌があり、とても可愛く聡明な少女だった。


「お師匠様。この文字が分からないのですが、教えてください」

「この文字はね……」


 孤児の時には文字すら読めなかった少女は、勉学に励み努力を怠らずに急成長を遂げていく。しかし、身長の伸びが悪く本人は悩んでいた。


「お師匠様。お師匠様みたいに大きくなりたいです。どうすればいいですか」

「そうね~、わたくしの体を毎日マッサージすれば伸びるらしいわよ」

「ほ、本当ですか?」

「ええ、大魔女の魔力の影響らしいわ(大嘘)」

「わかりました! 毎日マッサージさせて頂きます」


 そして、彼女は純粋だった。

 聡明な少女であったが、人に騙されやすく天然な少女だった。


「お師匠様! 背が伸びません」

「大丈夫よ。継続が力となるわ」


 そんな少女を、セドナは我が子の様に可愛がり養子に迎えた。


「お師匠様! お師匠様みたいに胸が大きくなりません!」


 セドナは胸が豊かだった。

 豊満な胸を始めとして、男を誘惑する艶かしい肉体は芸術の領域にある。

 麗しい美貌と、美しく長い赤髪。近寄ると香る女性の魅力、彼女は魔性の女だ。

 グリーナは、そんなお師匠の胸に憧れており、自身の絶壁に悩んでいた。


「あらあら、胸は揉んでいると大きくなるらしいわよ」

「本当ですか? 今日から揉みます!」

「それはダメよ。好きな殿方に揉まれないとダメなのよ」

「……なっ!? は、破廉恥です!」

「そうね。いつか、好きになった人にしてもらいなさい」

「そ、そんな人できません……」

「あらそう? もったいないわね」



 少女はやがて大人になる。


 そして、自分の愛弟子に初恋をするのは、まだ先の話……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る