妹弟子に、セクハラされる! その2

「……こ、これは一体?」

「何でもありませんよ。ハリティと話していただけです」


ジークは冷静になり、真摯にそう答えた。下手に誤魔化すよりも、

本当の事を言ってしまう方が正しいと即断した。

しかし、グリーナの耳には届いていなかった。


「そ、そ、そういう関係だったのですか?」

「違います。ハリティさんも言ってあげてください」

「……え、えぇ。ただ、お話していただけですわ」


狼狽するグリーナ。ハリティは戸惑いながらも弁解した。

しかし、グリーナの顔からは血の気が引いており、

今にも倒れそうな程のショックを受けている。


「師匠、本当に何もありませんよ」

「で、では、何故、胸を開けた服で同じ部屋にいるのですか? もう夜ですよ」

「……ちょっと、暑くて」


苦しい言い訳だったが、押し通すしかない。ハリティは覚悟を決めた。

一方で混乱を隠せないグリーナは、視線を泳がせながらも質問を続ける。


「まさか……一緒に寝ようと?」

「ハリティさんが師匠やプリシャみたいにと……」


ハリティには悪いが、本当の事を言って師匠からも諌めてもらう事にしたジークは、グリーナに丁寧に説明を始めた。


「……そういう訳です」

「そ、そうでしたか」

「か、勘違いさせてしまい、申し訳ないですわ」


気まずい空気が流れる中、グリーナは決心したように呟いた。


「……3人で寝ますか? それなら問題はないでしょう」

「え」

「え」


グリーナは錯乱していた。

自身は冷静なつもりであったが、明らかに正常な判断を行えなくなっていた。

成人した男女が、3人で寝る事の意味と危険性を考える容量が残されていなかった。彼女の思考は、ハリティをいかにして納得させて不平不満を無くすか、

そして愛弟子を取られないようにするためで精一杯だった。


「俺は別に構いませんが……」

「わ、わたくしは……師匠が言うなら」

「で、では、決まりですね」

「3人一緒にはベッドが小さいですが、どうします?」

「で、では、布団を並べて敷きますか」

「そ、そうですわね」


全員がおかしな空気になっていた。正常な判断を下せる者がいなくなっていた。

ジークは美女二人と寝れる欲望から、グリーナは空回りした思考から。

そして、ハリティはこの場をやり過ごすために。

バラバラな意思が、3人で寝るという結論に至ってしまった。

最早これまで。


「……」

「…………」

「………………」


仰向けになり、布団の中央で寝るジーク。ジークの右手側にはグリーナが、

左手側にはハリティが横になっている。静寂の時間が流れる。

お互いが緊張からか息を殺し、自身の胸の鼓動を聞きながら期待していた。

これから起こりうる、初めての体験に……。


  モゾッ


「……ッ」


誰かが、布団の中で動くたびに緊張が走る。

それは不安と期待、そして背徳感の混じった緊張だった。


グリーナは息が荒くなっており、その甘い吐息はジークの耳にかかり欲望を強烈に刺激している。ハリティはジークの左腕を掴んでおり、自身の胸を無意識に押し当ててジークを見つめていた。そしてジークは、欲望の衝動に駆られる寸前まで来ており、ついに限界を迎え―――








―――ガチャ








「何してるんですの?」

「何してるの?」


嫉妬から殺気を放つプリシャ。

そして、欲望から自分も混ぜてもらいに来たセドナが押し入ってきた。

3人は慌てて飛び起きて弁解を始め、この日は5人一緒に寝る事となる。

その後、ジークはこっそりと抜け出して、トイレで一息ついたという。



                     

          「…………ふぅ。」

                           おわり







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