妹弟子と、一緒に寝たい! その2

いつからだろうか、彼女がジークと一緒にいると胸が高鳴る様になったのは。

いつからだろうか、彼女がジークを男として意識し始めたのは……。


彼女にとって、ジークはラーナの街に来て初めての友達だった。話し方が不自然に丁寧な子供で、魔法が使える友達。それが彼女の認識だった。孤児院からグリーナに引き取られ、ジークと同じく弟子になってからも暫く認識は変わらなかった。


しかし、同じように魔法の勉強を始めてみると、いかにジークが優秀な魔法使いであるか理解できた。上達速度や魔力量、魔法力に至っても開きがあった。それは、いつしか尊敬へと変わり憧れとなった。


ジークと一緒に掃除をして、ジークと一緒に買い物へ行き、ジークと一緒に勉強をして過ごす。そんな兄弟の様な関係だった二人に転機が訪れる。3番目の弟子、ハリティの入門だった。


プリシャには、ハリティがジークに色目を使っている様に見えていた。ずっと一緒だった彼が取られてしまう。プリシャは激しく嫉妬した。そして気づく事になる。ジークの事が好きなのだと……。


―――そして、深夜……。

             ――ドクンッ


胸の鼓動が分かる。何時いつもより明らかに激しく脈を刻んでいる。


「……ジークってさ、寂しがり屋だよね」

「そうかもしれない」

「ジークは……私のことどう思う?」

「可愛い妹分」

「ふーん」


彼女は少しムッとした。妹としてではなく女性として見て欲しかった。

一緒の布団に入り、温もりを感じる距離にいる。それでも心の距離は遠くに感じた。


「ねぇ……ジークは独り立ちするの?」

「何時かはしないとね」

「そうだね。でも皆と一緒がいいな……ずっと」

「そうだね」

「うん」


将来の事を考えると怖くなる。プリシャは寂寥感せきりょうかんを覚え、布団の中で手を探した。一人きりで生きていく不安から彼の手を探した。そして手を繋いだ。温かい。心が温かくなる……。彼と触れ合うだけで不安は薄れていった。


「おやすみ。ジーク」

「おやすみ。プリシャ」


温もりを心と体に感じながら、二人は手を繋いだまま眠りについた。

その夜、彼女は彼と結ばれて温かい家庭を持つ夢を見た……。

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